第29話 仔細な情報源?
小坂部が呟く。
「その端くれが政治資金パーティーで得たカネだが、そんなちっぽけな構図じゃない、奴の政治基盤は」
「仰るとおり。緒沢には不正とわかっていながら各所からさまざまな手段で献金に似せた裏金が集まってくる。ご聡明な検事さまならその訳、わかりますよね?」
曽我の人を食ったような態度に小坂部は顔を顰めた。
「そりゃあ電波を牛耳ってるからな。彼に気に入られれば成功が約束されている。逆に嫌われればメディアの世界では生きていけぬ。単純なことだ」
「ご名答。ですから緒沢に裏金を上納した者は、金額に応じて世の光を浴びていく。最たる者はカウボーイ事務所。そしてそのカウボーイを支える夢藤雅樹と飛柳拓海」
その名が出たところで小坂部はプレイバックした。
「さっきの話だが・・・」
「すべて本当ですよ」
「アイドルが本気で政治家になるつもりか?」
「はい。次の参院選間違いなく出ます」
「あれほど売れているのに」
「だからです」
「芸能界を辞めるのか?」
「一旦はね」
「わからん」
「つまり、緒沢とカウボーイは人気者の夢藤と飛柳を媒介に一挙両得を狙っているってことです。彼らももう不惑の歳を超えている。芸能界だけでこの先ずっと食っていくにはリスクもある。そこで政界でひと働きして、翳りが見えたらまた芸能界に戻ればいい、とまあこんなことを彼らに持ちかけているのでしょう、カウボーイは」
「バイトだと思ってるな、国政を」
「言っても彼らは国民的アイドルです。タレント議員に厳しい目が向けられているとはいえ、二人が選挙に出れば自由民新党は確実に2議席獲得できる。謂わば、夢藤と飛柳は道具です、カウボーイ事務所と自由民新党の」
小坂部と和田は小刻みに頷く。曽我はパナマゲイシャを飲み干してから言った。
「しかし、芸能界復帰した時にはカウボーイはもう彼らに見向きもしません。何故だかわかりますよね?」
「議席目当てだけのタレント議員だ。役目を終えて戻ってきた時には人気薄、すでに商品価値がない。しかし、君はどうしてそこまでの仔細な情報を得ている?」
曽我の口端が上がる。
「芸能界も政界も弱いんですよ、色には」
「色? まさか・・・」
曽我はとぼけた顔で呟く。
「ご想像にお任せしますよ」
水無月はたち
1964年大阪下町生まれ。同志社大学経済学部卒。現在、大阪の某大学勤務。
優しい奥様と独立独歩した我が子たちだけが自慢。
-筆歴-
2023年4月 『戦力外からのリアル三刀流』(つむぎ書房)発刊
2024年3月 『空飛ぶクルマのその先へ 〜沈む自動車業界盟主と捨てられた町工場の対決〜』(つむぎ書房)発刊
2024年7月 『ガチの親子ゲンカやさかい』(つむぎ書房)発刊
2025年7月 『いまじゃ 殺れ 信長を』(つむぎ書房)発刊
2026年3月16日 『神より選ばれし偶像たち』(つむぎ書房)発刊
※当作品は100%作者の手で作り上げた不完全なヒューマンドラマです。AIの力は全く借りておりません。つづきはこちら↓




