緊急照明弾
「それは、分かりませんが……」
「殿下。私と殿下とオリバ先生が、この家で待機。レイラ様とリトッシュ様とベイルが、教会へ潜入でよろしいでしょうか?」
フィリップの言葉に、オリバ先生が手を挙げた。
「待ってください。それなら、私も教会へ行きます。学園の先生であることはバレてしまうかもしれませんが、入会希望と言えば上手くごまかせるかもしれません」
「分かりました。それでは、オリバ先生も教会の方へお願いします」
「承知しました」
「おそらく教会側は、ミサの裏で儀式を行うのだろう。それが、どんな内容なのか分かりかねるが、作戦には万全を期したい――実は、魔術陣の調査のために教会へ間者を送り込んでいる」
「間者? 諜報機関があるというのは、初めて聞きましたわ」
私が驚いていると、殿下が言った。
「秘匿されているからね。知る人間が少ないに越したことはない。それに、今は兵役義務の発生した者に行ってもらっている」
カルス国では魔術が使える者に兵役義務が生じる。その間に潜入捜査をするとは、よほど優秀な人間に違いない。
「明日は、少女についてるシスターに腹を下してもらう予定だ」
「ラインハルト様、女の子の名前はケリーというらしいですわ」
「ケリーか……。ケリーに接触するようにと彼女には言ってある。上手くいけば、ケリーに指名してもらうことも可能だろう」
「潜入した時に、シスターを味方につけることが出来れば、こちら側も対処しやすいです」
「そうだ。それと、これを……」
そう言った殿下は、懐からラムネ菓子のような物を取り出した。それは、小さな白い紙に包まれていた。
「ラインハルト様、これは?」
「緊急照明弾だ。何かあれば、これを空へ投げてしらせて欲しい。魔力をほんの少し込めれば、発動するようになっている」
「発動する場所は、屋外の場所の方がいいですよね?」
私の質問に、殿下は苦笑しながら言った。
「そうだね。屋内で上げられたら、私達には見えないだろう」
「分かりました」
「照明を確認したら、私達もすぐにその場所へ向かうよ」
「はい」
「何か質問のある者はいるか? なければ城へ帰って休もう」
小屋に残って張り込みをするというオリバ先生を残して、私達は城へ戻ったのだった。




