生け贄の時間
「レイラ様、お待ちしておりました」
「キヌア、いるの?」
「はい、ここに」
どこに潜んでいたのか、キヌアは目の前に現れると頭を垂れていた。
「護衛ご苦労様。殿下が大広間の方へ行っているわ。少し様子を見て来てくれる?」
「御意」
キヌアは一言だけそう言うと、音を立てずに去っていった。女の子に向き直ると、私は目の高さを合わせて言った。
「無事でよかったわ」
「私は明日、神様の生贄になるそうです」
「生贄って――どうするの?」
「分かりません。ただ、明日で人生が終わるから、神様によくお祈りしておくようにと言われました」
「安心して。私とラインハルト様が来たからには、絶対にそんなことにはさせない」
「分かりました。私には、神様になんていりません。レイラ様を信じます」
「ありがとう。私も頑張るわ」
「長くここにいて気づかれると困るから、私達は外に出るわね」
「はい。レイラ様、これを……」
女の子は首からぶら下げていたペンダントを外すと、私に手渡した。
「これは、父と母が私にくれた物です。もし、何かあって上手く行かなくても気に病まないでください。このペンダントを、私の代わりとして、父と母のお墓に埋めてください」
「分かったわ――でも大丈夫。必ず助けるわ。あなた、お名前は?」
「ケリーです」
「ケリー、もう行くわね」
私は女の子を抱きしめると、立ち上がった。
「明日の朝10時が生贄の時間らしいです」
「分かったわ。明日、10時に」
私達は部屋を出ると、急いで建物の外へ出たのだった。




