潜入
教会へ着くと、私達は裏庭の転移陣の横に馬車を停めた。転移陣を使うと見せかけて、教会を探る手筈になっていた。
いつものように門番の人に挨拶をすると、転移陣のすぐ側にあるお手洗いを借りるふりをして、建物の中へ入った。
「異常ありません」
少しすると、フィリップと殿下、それからベイルも建物の中へ入って来た。門番が気がついて、こちらへやって来ると御者に何があったのか尋ねていた。
「お手洗いに行かれました」
「そうか、早くしてくれよ。この後にも、他の予定が入っている」
「戻り次第、出発します」
御者の演技力は、たいしたものだった。実際には、まだ転移陣を使用することが出来なかったが、殿下が今回のために、偽の身分証を発行してくれたのだ。御者の人にも、今回のことを話しておいて良かったと思った。
「誰もいません。殿下、どうなさいますか?」
フィリップが殿下へ尋ねると、殿下は思案顔で言った。
「手分けして探そう。私とフィリップは大聖堂を。レイラとベイルは、この奥にある部屋を見てきてくれ。何があるか分からない。くれぐれも注意しながら行動するように。5分後、馬車の前で落ち合おう」
「承知しました」
私達は、大聖堂と反対方向にある部屋を見て回った。話に聞いたことがあるだけだが、1階の奥にはお客様用の個室があると聞いていた。
信者が使える教会の施設は、2階より上にあるという。つまり、信者でない人は2階より上に上がれない。
私は1階の部屋に女の子がいることを祈りながら、部屋の外から中の様子を伺っていた。
「明日は早いんでしょう? もう寝ますので、あなたも下がってください」
「承知しました。それでは、明日の朝4時に伺います。それまでに、身を清めておいてください」
「分かったわ」
「それでは、失礼いたします」
部屋からシスターの恰好をした女性が出てきたので、私達は慌てて柱の陰に身を潜めた。彼女が通り過ぎるのを見計らって、私は部屋のドアをノックした。
「わたしです。レイラです」
ドア越しに中へ声を掛けると、内鍵の開く音が聞こえてドアが開いた。




