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忘却の魔術

「掟を破り、全てを話そうとすると、忘れてしまうという魔術だ。禁術とされている『忘却の魔術』にあたる。そう言えば、理事長とコンラッドは自分の身体に魔術刻印を刻んでいたな」


「魔術刻印?」


「身体に直接魔術を刻むことだよ。一度刻むと、その魔術は一生その人物に作用する」


「そんな魔術が……」


「それから教会で見つかった遺体だが、やはりこの世に存在しない人物だった」


「この世に存在しない人物?」


 アイラの質問に殿下は眉をひそめたが、首を横に振ると言った。


「国が把握していない人物ということだ。わが国では、行方不明者が年間で数百名出る。その内のほとんどが、家出か内輪揉めとかで村や街を出て行った者だ。捜索願が出され、国にも登録されている。でも、その行方不明者にも該当しない者のことだ」


「隠れ里……」


「隠れ里?」


 私が呟くと、それを聞きつけたリトッシュが聞き返していた。


「……」


 そうだ。隠れ里には国が把握していない人間が大勢住んでいた。しかも、私達が会った女の子は自分のことを『生贄』と言っていた。


「まさか、教会へ連れていかれた後は、記憶を消されて洗脳されてしまうとかでしょうか?」


「どうだろう? それなら生贄って言わないんじゃないかな? 奴隷とか……」


「それはそれで問題ですね」


「石も捜さなくてはならないが、こちらの問題も深刻だ。陛下には既に報告してあるが、教会が女の子を迎えに行く日に、陰の護衛をつけようと思う」


「分かりました。その女の子の護衛に私がつくのですね」


 アイラが、分かりきったような顔をして言ったので、周りの人達は引いていた。


「いや、つかない。アイラ嬢には、石の捜索をお願いしたい」


「分かりました――って、え?」


「その件は、私とレイラで対応する。石も急いで探さなければならないが、人命救助が最優先だ。何かあってから動いては間に合わないだろう。今回は、運よく私達が居合わせることが出来たが、こんなことが街や村で頻繁に起きているのだとしたら、問題だろう?」


「私は、どちらでも構いませんわ。石を探せばよろしくて?」


「今回は、フィリップと一緒に探して欲しい」


「え?」


「そして――もう無理かもしれないが、仲直りして欲しい」


「……」


「……」


「すまない、これが私の出来る精一杯だ」


(殿下、この間のことを気にして……)


 私は殿下が職場見学の時に、二人を仲直りさせることが出来なかったことを気に病んでいたことを思い出していた。


「しかも……」


「しかも?」


「私は探し物が苦手だ」


 殿下の言葉に、二人は固まっていた。


「もともとは、友達だったろう? 元には戻れないのか?」


 さらに食いつく殿下を止めなければと思った私は、別の話をした。


「そう言えば、庭師が珍しい石を集めるという話を聞いたことがあります。城の庭師に聞いてみてはいかがでしょうか?」


「いいね。そうだ、この会議が終わったら、さっそく聞きに言ってくれ」


「……殿下」


「承知いたしました」


 フィリップは何かを言いたそうにしていたが、アイラは諦めたのか、さっさと了承してしまっていた。




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