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隠れ里

 女の子の後をついて行くと、そこには集落があった。まさしく隠れ里である。女の子が家に入ると、家の中にいた母親らしき女性は、私達を見て目を丸くしていた。


「あの、あなた方は……」


「ただの通りすがりの者です」


 殿下の言葉に、家にいた女性は安心したのか、ため息をつくと女の子を叱った。


「駄目じゃないの。余所(よそ)の人を、勝手にここへ連れて来ちゃ駄目だと言っていたでしょう?」


「ごめんなさい」


 女の子は母親に叱られて項垂れると、奥の部屋へ行ってしまった。


「旅の方でしょうか? 娘が申し訳ありません――といっても、本当の娘ではないのですが……」


「どういうことでしょうか?」


 殿下が質問をすると、女性は少し躊躇いながらも話してくれた。


「ここだけの話にしていただきたいのですが、あの子は昨年の冬に教会から預かった子なんです。身寄りがなくて、引き取り手がいないから半年の間でいいから預かって欲しいと……」


「半年? あの、彼女は生贄と言っていましたが……」


「何でもお役目があるみたいで、『生贄』と子供にはふざけてそう話したみたいなんです。教会に尋ねたところ、高貴なお方にお仕えすることになると聞いて安心していたのですが……」


「ここは、教会の関係者が住んでいる場所なんでしょうか?」


「いいえ。でも、教会の方に支援していただいております。ここは、普通の街や村で暮らしていくことが難しくなった人が住むシェルターなんです」


「シェルター?」


「様々な事情で、ここで暮らしていることを隠している方もいらっしゃいます。ですから、どうかこの場所は内密にしていただけると……」


「それは、構いませんが……」


「ありがとうございます。助かります」


「それにしても、生贄ですか――気になりますね」


「ええ」


「こちらでも調べてみましょう。何かあれば、連絡しますが構いませんか?」


「ええ。ですが、この村に手紙などは届きません」


「それなら、騎士を派遣しましょう。申し遅れました、私はカルス国第一王子のラインハルトと申します」


「……」


 その女性は、まさか自分が話している相手が王太子だったとは思っていなかったようで、絶句していた。


「た、大変失礼いたしました!」


「この件、お預かりしても?」


「よろしくお願いします!」


 私達は女の子に挨拶をすると、馬車に乗って城へ戻ったのだった。




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