忘れないで
次の日は学校を休んで、ベッドの側で殿下が目覚めるのを見守っていた。ミストは、ただの睡眠薬を霧状にしたものと聞いていたので、大丈夫だと思ったが、もし私を忘れてしまったらと思うと、いてもたってもいられなかった。
「殿下……」
「レイラ」
さっきから、うわ言で何度も私の名前を呼んでいた。恥ずかしかったが、目が覚めたら一番に顔を見せて安心させてあげたかった。手を握ると握り返して、再び私の名前を呼んでいた。
「レイラ……」
(待って、何回呼ぶの? さすがに恥ずかしくなってきし、早く起きてよ)
私の心の声が聞こえたのか、殿下はその数分後に目を覚ました。
「レイラ?」
「おはようございます、殿下」
「……あれ?」
「陛下が助けてくれたんですよ」
「父上が?」
「よかった。レイラを忘れてない」
「はい」
殿下が私を抱きしめた後、キスをしようとしたので顔面を押し返した。
「痛い。レイラ、なんで……」
「殿下、周りをみてください」
保健室にはリトッシュやフィリップ、ベイルもいた。みんな顔を背けていたが、殿下の変貌ぶりに引いているようであった。
「うん」
「みんな呆れているでしょう?」
「そうなのか? いや、そうかもしれない。みな、すまなかっった」
保健室には微妙な空気が流れていた。
「殿下が目を覚ましたって、警備隊の人達に言ってきますね。陛下は帰ってしまわれたので」
「レイラ様、私も行きます!」
「ベイルは休んでて」
「キヌア! いるか?」
「御意」
「レイラを護衛してくれ」
「承知いたしました」
「キヌア、よろしくね」
「御意」
私は保健室を出ると、足取りも軽く、警備隊のいる教会へ向かったのだった。




