エスターク家の使命と国家
「私もエスターク家の一員です。自分の使命は分かっているつもりです」
「考え直せ、コンラッド。私は君を処罰しなければならなくなる」
殿下の言葉に表情を強張らせたコンラッドだったが、私達の後ろからは理事長が迫ってきていた。
「君達にはあの部屋で眠ってもらおうか。部屋に忘れ草を敷き詰めれば、数時間後には全てを忘れ、廃人になっているだろう」
「させるか!」
「フィルンミスト!」
殿下が結界を張る前に上からミストが降りそそぎ、急に眠気が襲ってくる。私が魔術を発動しようとした時、目の前には既に白い霧状の液体が降り注いでいた。
「レイラこっちだ」
殿下に手を引かれて、彼の身体の下へ滑り込んだ。
「これで少しは、マシになるだろう?」
「でも、殿下が……」
「レディトリア!」
試しに聖魔術を放ってみたが、ただの睡眠薬には効かないようだった。
「大丈夫、レイラ。目が覚めたら君が先に私のことを思い出して」
「そうはさせん!」
コンラッドの後ろから現れたのは、陛下と騎士団長と魔術師団長だった。陛下は迷うことなくコンラッドを殴り倒していた。そのすぐ側では、後から来た魔術師団員が呪文を唱えている。
「ウインド・ジェッター!」
呪文が唱えられると、ミストは吹き飛んだ。吹き飛んだしぶきが理事長に顔に吹きかかる。
「うおっ……」
理事長はむせながら、その場に倒れ込んだ。
「陛下! ありがとうございます」
「レイラ嬢、久しぶりだな。大丈夫か?」
「はい。何とか生きています」
殿下は私を庇ったせいで眠っていた。かろうじて意識のあったリトッシュが、魔術師に駆け寄り、「父上、ありがとうございます」と言っていたが、その後すぐに眠っていた。ベイルも地面に突っ伏して眠っている。
「レイラ様、お初にお目にかかります、魔術時団長のカリュ・オリベールと申します」
「もしかしてリトッシュ様の――」
「はい。リトッシュ・オリベールは私の愚息にございます。息子がいつもお世話になっております」
「お世話だなんてとんでもない。いつも、お世話になっているのは私の方なんです」
私が首を横に振っていると、隣にいた男性が頭を下げて言った。
「お初にお目にかかります、レイラ様。騎士団長のリシュモン・カルロスと申します。以後お見知りおきを」
「もしかしてフィリップ様の――」
「父です」
「フィリップ様には、いつも――」
「あいつは半人前です。今日も、井戸の前で眠りこけていた」
「は、はぁ……」
「さて、警備隊を呼ぼうか」
陛下が笛を吹くと、それを合図に洞窟の中へ王宮警備隊の人達が入って来た。
「彼らを保健室へ――それから、そこにいる理事長とここにいる理事長の息子を捕縛せよ。罪名は『国家反逆罪』だ。城の牢屋へ連れていけ」
「はっ!」
王宮警備隊の人達は殿下を担ぐと、本棚のある部屋を通って外へ運び出していた。
「付き添っても?」
「構いません」
「ありがとうございます」
私は警備隊の人と一緒に、保健室へ向かったのだった。




