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第四話 ~碧空アンサンブル~

時々、真っ白になる時ってあるだろ?

視界は鮮明なのに、頭の中に入らないような


今日は珍しく、学校に早く着いた。朝のHR(ホームルーム)に菖蒲は言った。

転校といっても、まだそこまで遠くもない距離の町。

町名を聞いたところ、思い出した。

たしか、四季の兄がいるところだ。バスで2時間、電車で1時間くらいの距離かな。


なんだ・・心配しすぎか。


てっきり、県も違うところに行くのかと思った。そこまで遠くもない。


あの町は、ここより都会の街並みだ。

といっても、ここがそこまで田舎町ってわけでもないけど・・。

田舎町といえば、都会町の隣の町は。住宅街が広がるけど、あんまり人がいないんだよな・・。

だけど、毎年夏に2日間開催される祭りがその町にある。

元々、人が少ないのに、祭りにほとんどの人が行くから、その祭りの期間は人気がなくなるらしい。


面白いのが、その祭りは雨でも開催するところ。


その祭りは8月末か・・その、祭りに誘うっていう手もあるな・・。

いやでも。タイミングはいまここにいるときだと思う。


なぜだか、嫌な予感がするんだ。

このタイミングを逃すと、何かを失ってしまう気がして。


なんだろう。引っかかるんだよな。

昨日、「転校するんだ」って言った時の君の顔。

なんで、あんなに暗かったんだ?

別にまた会えるような距離だし・・・少しくらいならまだしも。


一瞬、ほんの一瞬。君の顔は、歪んでた。


・・・心配しすぎかな。


HR終わりには、菖蒲のところにみんなが寄った。

それを横目に見ながら、窓に映る空を見る。


今日は快晴だ・・いや、今日も快晴だ。


空の奥に何かが見える気がした。


俺には、ずっと見たかったものがある。

昼の星。皮脂は夜に見えるけど、星は夜にだけあるわけじゃない。

一日中、ずっとそこにいる。この広大な空の向こうに。

もちろん肉眼では見えないけど・・でも、見える気がした。


そのまま、ほとんどの時間。空を眺め、授業などまともに聞かなかった。


部活の時間になって、部室で二人になる。


そういえば、聞いてないことがあった。


「転校っていつなんだ?」


すると、菖蒲は呆れた顔をしていた。

やっていた課題から、目を離し、こちらを向いた。


「聞いてなかったの~?」


「あ・・あぁ、ぼーっとしてた。」


「そういえば、今日調子悪そうだったね。・・・いつもか。」


「そんなことねぇよ。・・で?」


「明日」


視線を課題に戻して、ペンを回す。


「は!?」


「わっ、びっくりした~・・いったじゃんか。朝のHRで。」


明日・・・!?それだと、祭りはまだしも。

流星群・・お前が楽しみにしてた流星群を一緒に見れないじゃんか・・。


「まぁまぁ、少し動けばいつでも会える距離だし?そこまでびっくりしなくても・・」


あくまで気楽にしゃべる。


「そ・・そうだよな・・。」


違うんだ。


「あ~、やっぱさみしいんだね!?大丈夫だって、定期的に会いに行ってあげるよ。」


「さみしくねぇよっ!」


「・・・・・そっか」


「って、会いに来るってなんだよ。」


「え?ん~・・やっぱ気になるじゃない?ずっとここで隣にいるとそうでもないけどさ。

 離れるとあれだよ、ほら。誠が変わった姿見れないし。」


「なんだ、変わった姿って。」


「・・・面白いことに、誠っていつも変わってるんだよね。今日も髪型がいつもと違うし。」


別に同じだと思うけど、そこまで気にしてないな。

もしかしたら、菖蒲は日々の変化を楽しんでるのかもしれないな。

俺の・・っていうのが嫌だけど。


「そうだな・・男らしくしゃきっとしてる姿になるまで、見守らないとね。」


「なんだよそれ・・親みたいだな。」


「長年の付き合いじゃん。」


「たしかにクラスで2学年一緒だけど、部活では一年もないんだぞ?」


「そうだっけ?なんか、もっと長い感じがするな~」


後ろに大きく伸びをして、天井を眺める菖蒲。


「・・・それに関しては俺も同意見だけど。」


「この部室とも・・・お別れかぁ~・・」


菖蒲がつぶやいた。

まただ、一瞬だけ、昨日と同じ顔をした。


「なぁ・・菖・・」


「誠ってさぁ、優しいよね。」


「え?」


俺の言葉が遮られたあとに出た菖蒲の言葉は、意表をついた。


「なんだよ、いきなり。」


「なんとなく。」


少し、静寂が訪れた。でも、菖蒲が突き破った。


「・・・なんてね!ちょっと、シリアスチックにしてみた。」


「お前らしくねぇよ、なんとなく。」


「・・そうだよね~。でもまぁ、誠は優しいかわり、おっとりとしすぎだけどね。」


「別にいいだろ。困ることないし。」


「頼りがないんだよな~・・大丈夫かなー、天文学部。」


「なにがだ?」


「こんな先輩一人で、花梨ちゃんかわいそう。」


「・・・大丈夫だろ。」


「やっぱ私がいないと・・あぁ。誠はどうなってしまうのかしら。」


わざとらしく、悲しむ仕草をする。


「お前なんて、元からいなくてもやっていけるさ。」


菖蒲はきょとんとしていた。・・・言いすぎたか?


「・・・・冗談だって~。マジなるなって。」


だよな。・・・こんな、つまらない冗談話も。今日が最後・・・か。


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