第二話 ~天空ロンギング~
帰り道。
菖蒲との東西分かれ道を過ぎ、篠原と共に西へ。
「そういえば、篠原先輩って今どうしてる?」
春までは、卒業したのにも関わらず
一週間に一回のペースで学校に顔を出していた。
最近見なくなったが・・まぁ、見なくなるのも当たり前なんだけど。
「姉は、一人暮らし始めて・・隣町に行きました。」
「え、一人暮らし!?」
まさか、そんなに早く一人暮らしをするとは。
気は強いが何かと誰かに頼る先輩で、一人暮らしする感じではないと思ったけど。
「私もびっくりしたんです。いきなり言い出して・・あんな姉でも少し寂しくなりますね。」
「だ、大丈夫なのか?篠原先輩って、結構・・・」
「今年になってから少し変わっていたんですよ?性格も大人らしくなったし。」
大学一年生ともなれば、少しは大人になってなければ問題だが。
「そういえば・・友達が亡くなったって聞きました。それがきっかけかもしれませんね」
「へぇ・・やっぱ、そういう大きなショックでも与えてやらないと変わらないよな。」
「先輩・・少し失礼ですよ。亡くなった方に。」
苦笑いをしながら答える篠原。
「あ、ごめんごめん。」
こちらも、苦笑いを浮かべる。
「篠原はお姉さんのこと、どう思ってるの?」
「えっ?」
不意を突かれたような顔をしながらこちらを見る。
「俺、兄弟とかいないからさ。少し羨ましく思ってるんだけど、ああいう姉だとねぇ・・・」
正直、嫌かもしれない・・。
「でも、なんだかんだ言って、仲が良いのが兄弟なんじゃないですか?」
少し遠くを見ながら、笑顔で応える。
「いなくなったらいなくなったで、寂しいですもん。」
「そっか・・どっちにしたって家族が一人いなくなるんだもんな。」
話しているうちに、家に着く。篠原の家は、もう少し先の曲がったところか。
「じゃぁ、えっと・・また部室で逢えたらで・・」
「そ、そうですね。っていっても、登校で合いそうですけど。」
「そうだね、でも俺はいつも遅いし。」
遅刻まではいかないが、ギリギリに到着する。
二度寝のせいだけど。
「あぁ、それで合わないんですね。では・・また。」
篠原がお辞儀をして、帰路につく。
本当に律儀な子だ。姉と違ってしっかりしている。
やっぱり、姉妹や兄弟ってどちらかが悪い方を補っている感じになるもんなのかな。
そう考えながら、玄関のドアを開けようとしたとき
「あ、先輩!」
篠原が少し離れたところで、こちらに向き、足を止めていた。
「篠原じゃなくて、花梨でいいですよ。」
「えっ、あっ・・そ、そうだね・・。」
後輩なんだし、下の名前で呼ぶのはいいが。
やっぱり、女子を下の名前で呼ぶのは恥ずかしい。
菖蒲は半強制的に「下の名前にしろ」と言われて、菖蒲と呼んでいるけど。
まぁ、これも致し方ない。同じ部活の後輩なんだし。
「わ、わかった。か、花梨。」
やっぱり、恥ずかしい。
「ありがとうございます、誠先輩!」
すると花梨は、足早に去っていった。
・・・・俺は下の名前でいいとは言ってないけど。でも、俺の苗字は言いにくいしな。
交換条件ってとこだろう。
「あ~れ~?誠さん、彼女かな~?」
この声は・・!
「ばっ・・おまっ・・!四季!?なんでここにいるんだよっ!」
「なんでって、私ご近所さんですし?誠さんとはよく合うじゃないですか。」
「タイミング悪すぎるだろ・・」
八重咲四季
たしか、14年前くらいに向かいの家に引き取られてきて、近所付きあいが長い仲。
子供の時から知っている。年の差はあるが、ほぼ幼馴染みたいな関係。
親を小さい時に亡くして、向かいの家に引き取られたんだったかな・・。
「で?で?どうなんですか!彼女さんですか~?」
中学2年生だったかな四季は。・・中学生の女子は恋愛関係うるさい時期だしなぁ~・・。
「違うよ。部活の後輩。」
きっぱり言っといたほうがいいけど、逆に疑われるとめんどうだな・・。
「あ、そうなんですか。なんだ残念。」
意外とすんなりいけた。ふぅ・・花梨にも失礼だしな。
「どこか出かけるのか?」
四季の手には、出掛けるときにはいつも持ち歩くバック。
3年ほど前から、気に入ってるらしくずっと使っている。
「お兄ちゃんのところに。少し遅れちゃったけど、就職祝いに行こうかな~って。」
たしか四季には、別の町に住んでいる兄がいる。
小さい時に違う親戚に引き取られては、移り住み、今は一人暮らししているらしい。
「就職祝いね・・なんの職業?」
「えっと・・運送業?」
「それバイトじゃなくてか?」
「たぶん。まぁ、いいじゃん!今年は一回もあってなかったからね。」
実家に帰るような感覚で、年に何回かは会いに行っているらしい。
「こんな時間から行ったら、夜にならないか?」
「いいのいいの。泊まりだから。あとね、今回は流星群見に行くんだ~!」
「流星群って・・あぁ、近々見れるやつか。」
「そう。お兄ちゃんに頼んで、見に行くの。だからそれまで泊まり。」
「そっか。」
「っていっても、お兄ちゃん仕事で、泊まっていても起きてる時間帯に会えないかもしれないんだけどね。」
随分ときつそうな仕事だな。
というかやっぱそれ、バイトを多くかけ持ってるんじゃないか?
「それでも、流星群の日は休みの日らしいから見に行くの。」
「へぇ~・・あ、そうだ。ちなみに流星群っていつだ?」
菖蒲が調べてくるって言ったけど、四季から聞けば早いな。
「一週間後の8月12日だったかな。」
一週間後か・・。
「そっか、ありがと。じゃ、いってらっしゃい。」
「はいは~い」
「本当、お兄ちゃんがすきなんだな。」
それを言った瞬間、少し表情が曇ったが、笑って応える。
「お兄ちゃんは・・私が支えないといけないからね!世話焼けるんだから~」
そう言うと、スキップをしながら、駅の方向へ。
「・・・やっぱ、大切な家族だもんね~!」
なんか今日は、家族の話題によく触れるな。
それにしても、俺の周りには姉妹や兄弟やら多いな・・・。
余計に羨ましく思うよ。




