第一話 ~空想ファンファーレ~
というように・・・。
うわああああああ!!
恥ずっ!何を言っているんだ俺は!
頭の中は、すでにファンファーレが響いていた。
最初からクライマックスかよっ!
「うぅ・・集中、集中・・!」
「・・・変なの。」
す・・好きだとか、なにもそこまで思ってなんかないしな・・。
ちょっと待て。なんだったんだ。
「αを置き換えて・・χを代入して・・」
話を置き換えて・・思考回路を代入して・・
解をだす。
結果、今の俺には無理だ。よし。
「ねぇ、そろそろ流星群が見れる時期じゃない?」
「あぁ・・えっと、ペルセウス座流星群だっけ?」
「そうそう。来週あたりだったけな~・・調べてくるね。見てみようよ。」
「そうだな。天文学部らしい活動をしなくちゃな。」
言われてみれば、去年の春から部活入ってから
全く、天文学部らしい活動をしていない。
そもそも、去年は俺一人だったし。
菖蒲が入ってきたのは・・去年の冬くらいだっけかな・・。
その時、菖蒲は冬の星座を見るために。って言って入ってきたんだった。
この部室には一応、星空観察するための道具は揃っている。
峯岸菖蒲
俺、赤菊 誠と同じ、松院高校2年2組。
俺と違って、明るい性格でクラスのムードメーカー的存在。
「んじゃ、私は先帰るね。ちょっと、用事あるんだ。」
「わかった。じゃぁな。」
本をしまって、椅子をしまう。
ドアを開けて、姿が消えるまで。
つい、目で追ってしまった。
「はぁ・・・。」
別に一目惚れとか、最初からあなたにラブラブでした!とか
全くそういうわけではない。
でも確かに、どこか惹かれてるとそんな感じ。
だから自分でも悩んでいるんだ。これは伝えるべき事項なのだろうか。
「というか・・・!」
部活で女子と二人きりとか、気にならない他ないだろ!
コンコンッ
ドアがノックされる。
「・・・どうぞ~」
「よっ!相変わらずなんもしてねぇな!」
「陽か・・。」
桜井陽中学からの友達。
サッカー部だが、この天文学部に一応兼部している。
ほぼ、名前だけ借りている感じだ。
部活は4人以内と成立しないとかいう規律のもと、入ってもらっている。
「なんだよ、なんだよ~。珍しく部活早く終わったから来てやったんだぜ?」
「なんできたんだよ」
「え?そりゃお前、天文学部でもあるからだろ?」
「その自覚がお前にあったとは。」
「あぁ・・まぁ、さっき思い出したけどな。」
コイツがここにきたのは、創部したときと今この時。それだけだ。
それまでの期間は、一年弱はある。
それぐらいの期間があれば、余裕で忘れられるだろうな。
陽だったらな。
「んで?菖蒲ちゃんとはどうよ。うまくいってる?」
「ばっ・・お前!何言ってんだよ!」
「お?お?図星かな?いい加減、素直になれよ~」
こいつは・・人の苦労も知らないで・・お気楽と・・。
「ま、どうでもいいけどな。どうせお前のことだから、頭の中でぐるぐるしてんだろ。」
お見通しだったか。
「お前はモテるからいいよな~・・相手の方から来るもんな」
「あ?んなわけねぇだろ。俺だって苦労してるんだ~よっ」
俺の肩を、軽々しく叩く。
こいつはサッカー部でのエースだ。顔もそれなりだし。
そんな要素があったら、ひとりやふたりは惚れるだろ。
そう思うのは俺だけなのか?
「そういえば、後輩が入ったんだったっけ?篠原先輩の妹だろ?」
「あ・・そういえば、昨日な。今日は来てないけど。」
「そっかそっか・・これで、篠原先輩の名前は借りなくていいわけだ。」
「っていうか、もう卒業している生徒の名前を使ってでもこの部活を継続させる意味あるのか?」
篠原胡桃先輩。
今は大学一年生。俺が高校一年の時に、篠原先輩とはいろんな縁で知り合いだったことから
俺に天文学部が潰れないように入部して欲しいと言ってきたのだ。
だけど、その時に集まった人数は陽と菖蒲だけ。
といっても、菖蒲は冬から入ってきたから、それまでは二人しかいなかった。
それがなぜか、篠原先輩が「私の名前を入れておいて」って言ったから
篠原先輩の名前を部活継続書ならぬ契約書に入れてみた途端。
校長からの許可が降りた。
篠原先輩は一体どんな存在なのか。謎である。
生徒二人分の権力ならびに、顧問もつけなくていいとの校長からの言葉。
篠原先輩と知り合いでよかったと少し思った。
「さぁ。篠原先輩はこの天文学部を大事にしてたらしからな。」
「へぇ・・」
どんな思い入れがあるか知らないけど、その熱意は十分伝わってるよ先輩。
部員に伝わってるかどうかは別だけど。
「・・で?篠原先輩の妹だろ?可愛いか?なぁ!」
「うーん・・可愛かった・・かな?」
「まじか!やべぇ、部室来たら教えろよ!部活抜け出してみてくっからよ!」
「そこまでするほどでもないと思うけど。」
「だよな~・・お前は、菖蒲ちゃんしか眼中にないもんな~!」
「んなことねぇよ!あの子も可愛かったよ。」
「なんて名前だっけ?篠原・・・」
「篠原花梨・・だったな。たしか。」
「あ・・あのぉ・・。」
気づいたら、ドアは開かれていた。
そこには、先程まで話題に出ていた後輩の姿が。
俺らの思考は一瞬止まったが、陽は歓喜の顔になる。
「おぉ!!もしかして、噂の花梨ちゃん!?」
「え、あ、はい。篠原花梨です。えと・・」
「俺は、桜井陽!サッカー部兼天文学部ね。へぇ~、そうか~、篠原先輩の妹だな。似てる。」
「あ、その・・姉がお世話になりました・・。」
篠原花梨は律儀にお辞儀する。
「いやいや、お世話になったのはこちらのほうでって・・可愛いね!しかも律儀!」
篠原花梨の両肩を掴んで、目を輝かせる。
ちょっと待て、この実況危ないな。
「えぇ!いや、あの・・!」
明らかにオドオドしている。
「おい、陽。篠原さんが困ってるだろ、やめろ」
「はいはい。ごめんごめん。んじゃ、俺はそろそろ帰るわ。ごゆっくり~」
「おい、ちゃんと反省しろよ・・!はぁ・・」
「あ、あの・・誠先輩と菖蒲先輩以外にいたんですね・・。」
「一応ね。今日一年ぶりにきたんだよ。この部室に。」
「そうなんですか・・」
やっと落ち着いてきた様子。顔色が戻った。
さっきまで少し赤くなっていて、可愛いかったけど。
「どうしたの?なんのよう?」
「あ、そうでした!えと、今日部活に来なくてすみません!」
「いいよいいよ。うちは無断欠席なんて日常茶飯事だから。」
陽がな。
「あの・・それでですね・・」
下を向いて、なかなか言えない雰囲気。
やめたい・・とかかな。
「一年間だけ、美術部と兼部することになって・・だから・・」
なるほど。
「そういうことか。別にいいよ。暇なときに立ち寄ってくれれば。」
篠原花梨は姉の篠原先輩に言われて無理やり入ってもらった感じだし。
ほかの部活に入りたいのも無理もない。
「す、すみません・・なんか・・」
「いいって、いいって。篠原さんって絵うまいもんね」
「あ、ありがとうございます!・・なんで知ってるんですか?」
「去年の文化祭のポスター。あれ、篠原さんが書いたんでしょ?」
去年の文化祭は篠原先輩がポスター絵担当だった。
すごい綺麗な絵だったから、篠原先輩に絵がうまいんですねって言ったけど。
篠原先輩が言うには、妹が書いたものらしい。
「あぁ・・そっか。そうです。姉に言われて・・。」
「篠原先輩の妹も大変だね。」
「あ・・あはは・・そうかもしれません・・」
顔と今の反応から察するに、相当疲れてそうだ。
いろんな意味で破天荒な人だしな・・何しでかすかわからない。
「さて。俺も帰るかな。」
「あ、お疲れ様です。・・・一緒に帰ってもいいですか?」
篠原先輩の家は、自分の家に近い。
帰り道は全く一緒だった気がするな。
「いいよ。篠原さんがいいなら。」




