プロローグ ~清楚な恋~
あーあ。
またタイミング逃しちゃったな。
すぐ手が届く距離にいるのに。
いつも、“タイミング”が邪魔をする。
この部室で二人きり。二人横に並んで座ってる。
椅子の感覚は、拳5つぶんくらい。
君は、変わらず本を読んでいる。
俺は、今日出された課題をやっている。
いつもの景色。何一つ変わらない。
くだらない話をしながら、笑い合ったり。
そんなことをして、今日も過ぎていく。
過ぎていってしまう。
そして、帰り道。割と早い段階で、分かれる道に入る。
東と西の分かれ道。君と分かれる。
だから。
この空間、この時間。このタイミングしかないんだ。
それでも、過ぎていく。
流れ星のように、気づかないうちに流れていく。
願いがかなわない流れ星が流れたところで、ただの星でしかないじゃんか。
だから流れ星は嫌いなんだ。
「なんで、誠は天文学部入ったの?」
そう聞かれたことがあったかな。
星を見るのが好きなわけでもない。ただ嫌いなわけでもない。
あぁ、なんなのだろう。
興味もなかった。
知り合いの先輩が引退する時、後輩がいなくて存続の危機だから入っただけ。
君が来るまで、俺は一人だった。
「じゃぁ、聞くけどさ。なんで菖蒲は天文学部に入ったのさ」
君の答えはひとつだけだった。
「星が好きだからかな。」
「実にシンプルな答えだな。」
「何かを好きになるのに、理由なんていらないでしょ。よく言うじゃない。」
すごく笑えてきた気がしたんだ。
「ねぇ。」
はぁ・・。
「誠?ねぇ、誠?大丈夫?」
「えっ?」
「どうしたの?ぼーっとして。あ、わからないところでもあった?教えてあげよっか。」
「あ、いや。大丈夫、大丈夫。」
俺が君を好きな理由なんて・・・いらないのかも。




