第33話 本を選ぶ
銀行を出て、しばらく歩く。
アマネは、時々こちらを見ながら歩いていた。
どこか落ち着かない様子だった。
「どうした?」
「……いえ」
アマネは前を向く。
「本屋、楽しみだなと思って」
「そうか」
「はい」
少し歩く。
「カナタさん」
「なんだ?」
「本屋には、どんな本があるんでしょう?」
「絵本だったり、小説だったり、薬草の図鑑だったり色々だ。俺が知っているのは、それくらいだ」
「そうなんですね」
「だから、実際に見てみればいい」
「はい」
アマネが頷く。
俺はそのまま歩き続ける。
ふと、後ろに違和感を覚えた。
人通りはそれなりにある。
周囲からは、いくつもの足音や話し声が聞こえてくる。
けれど、その中に一つだけ、妙に意識へ残るものがあった。
一定の距離から聞こえてくる足音。
俺は何気なく歩く速度を落とす。
すると――。
後ろの足音も、少しだけ遅くなった。
(偶然ではない……か)
俺は振り返らない。
そのまま、しばらく歩く。
後ろの足音も、一定の距離を保ったままついてくる。
やはり、おかしい。
俺は前を向いたまま歩き続けた。
アマネは、まだ気づいていない。
俺は何も言わなかった。
もう少しだけ様子を見る。
やがて、背後との距離がなくなっていく。
足音が止まる。
背中に、硬く冷たいものが押し当てられる。
「そのまま歩け」
低い声だった。
俺は足を止めない。
アマネも、後ろの存在に気づいたようだった。
「お前も騒ぐなよ」
フードから覗く鋭い視線が、アマネを捉える。
アマネは俺に寄り添った。
男は俺の背後についたまま、進む方向を少しずつ変えていく。
通りの脇にある細い路地へ入った。
俺も抵抗せず、そのまま進む。
角を曲がる。
大通りから、こちらの様子が見えなくなった。
そこで男が足を止めた。
「壁際へ行け」
俺は言われた通りにする。
アマネも俺のすぐ後ろからついてくる。
男が一歩離れた。
そこで初めて、手にしていたものが見えた。
短いナイフだった。
「大人しくしてれば、痛い目には遭わないからよ」
ナイフの男が低い声で言う。
そのとき、路地の入口から別の足音が聞こえた。
角から、さらに三人が入ってくる。
そいつらもフードを被り、顔を隠している。
腰に剣を下げている者。
短い棍棒のような武器を持っている者。
魔術師らしき杖を持つ者。
冒険者と言われても不思議ではない格好をしている。
重装備ではない。
街中を歩いていても、それほど目立たない身なりだった。
アマネの手が、俺のローブをもう一度強く掴む。
俺はその手に気づく。
少し震えている。
こういうことは、アマネにとって久しぶりなのだろう。
俺と出会った、あの日以来だ。
俺は何も言わず、前を見る。
三人が近づいてくる。
先ほどの男が、仲間たちへ顔を向ける。
「今回の獲物はこいつだ」
「こいつ?」
剣を下げた男が、俺を見る。
「銀行で長時間、奥の部屋で金を預けていた。かなり期待できそうだ」
「上物ってわけか」
男が笑った。
周りの男たちが動いた。
剣を下げていた男が、ゆっくりと剣を抜く。
金属が擦れる音が、狭い路地に響いた。
棍棒を持った男も、俺へ向かって構える。
一方、魔術師は俺ではなく、アマネへ杖を向けていた。
淡い茶色の光が、杖の先に集まっていく。
魔術式がいくつも重なり、その中心に土の塊が生まれる。
圧縮された土は、次第に鋭く尖っていった。
飛び道具。
俺が動けば、アマネを狙うつもりなのだろう。
そして、最初に俺をここへ連れてきた男は、ナイフを手にしたまま動かなかった。
ただ、その刃を見せるようにしている。
逃げ道を塞ぐ。
直接の攻撃を警戒させる。
そして、アマネを狙う。
それぞれが役割を持っている。
「だから、余計な抵抗はするなよ。金を引き出せれば、それで終わりだからよ」
「俺たちはただ、お前の善意で金を分けてもらいたいだけなんだけどな」
ナイフの男が笑う。
「……そういうことか」
俺は男を見る。
「何がだ?」
「通帳だけじゃ金は下ろせねぇ。身分証も必要だ。本人確認もある」
銀行で言われたことを思い出す。
確かに、通帳と冒険者カードの両方を使った。
「だから、俺を利用したいわけか」
「話が早いじゃないか。本人がいなきゃ、金を動かせない」
男はナイフを軽く振った。
「だったら、本人に命令すればいい」
アマネの身体が強張った。
俺のローブを掴む手に、さらに力が入る。
俺は動かなかった。
目の前には剣。
その隣には棍棒。
背後には壁。
そして、アマネには魔術が向けられている。
抵抗すれば、アマネが傷つく。
逃げ道はない。
そういう状況を作ったつもりなのだろう。
ナイフを持った男が、俺の前へ一歩出る。
「分かっただろ?」
ナイフを軽く見せる。
「お前が大人しくしてれば、誰も傷つかねぇ」
男は笑った。
「銀行まで行って、金を引き出してこい」
「……」
「それだけだ」
随分と慣れている。
脅し方も、役割分担も。
最初から、金を奪うために俺を狙っていたわけか。
銀行の仕組みを知ったうえで、本人を連れて行く。
随分と回りくどい方法だ。
だが、大金を狙うなら確実なのだろう。
俺は男たちを見る。
こいつらは、本気で俺が従うと思っている。
当然だ。
アマネを傷つけたくないと思う人間なら、こんな状況で抵抗することは難しい。
脅しとしては正しい。
けれど――。
俺には、従う理由がなかった。
男がアマネへ手を伸ばす。
その手がアマネに触れるより先に、俺は足を動かした。
男の手を蹴り上げる。
「ぐっ……!」
男がよろめいた。
「撃て!」
剣を持った男が叫ぶ。
魔術師が起動していた土の礫をアマネへ放つ。
俺はアマネを抱き上げた。
飛んできた礫が、俺たちのいた場所を掠める。
「少し我慢しろ」
「はい……!」
そのまま地面を蹴る。
一気に屋根の高さまで跳び上がった。
「なっ――!」
男たちの声が下から聞こえる。
屋根へ着地する。
石造りの建物が並ぶこの街では、屋根も平らなものが多い。
俺は周囲を確認し、アマネを屋根の上へ下ろす。
「……あまり、こういうのは柄じゃないんだがな」
そう思ったところで、アマネを見る。
「少しここで待てるか?」
「……はい」
俺は屋根の縁から下を見る。
屋根が遮り、男たちの姿は、見えない。
魔術の射線も切れている。
俺はアマネを残し、再び地上へ飛び降りた。
「なんだよ! ノコノコと戻ってきやがって!」
男が叫ぶ。
俺は答えない。
落下しながら、ナイフの男へ狙いを定める。
男が俺を見上げ、ナイフを振り上げた。
「この野郎!」
刃が上を向いた瞬間。
俺は落下の勢いを乗せ、男の腕を押さえながら、その身体へ自分の身体を叩き込んだ。
「ぐっ……!」
男の身体が地面へ叩きつけられる。
ナイフが手から離れた。
俺はそれを拾う。
男は地面に倒れたまま、身体を起こそうとしていた。
「な、何を――」
俺は男へ手を向ける。
借りている火炎の魔術式を展開する。
小さな火球が一つ。
それだけだった。
「なっ――」
火球が、男の目の前で弾けた。
「ぎゃああああっ!」
男が悲鳴を上げる。
至近距離から放たれた炎が、顔や肩を焼いた。
男は地面を転がりながら、必死に身体を動かしている。
「熱い! 熱い、熱い!」
俺はそれを見下ろす。
火球は一つ。
それでも、十分だった。
男の苦痛に歪んだ顔を見ながら、拾ったナイフを首元へ当てる。
「動くな」
男の身体が止まった。
俺は顔を上げ、残った三人を見る。
「武器を納めろ」
誰も動かない。
俺はナイフを、ほんの少しだけ首元へ近づける。
「こいつがどうなるか、分かるだろ」
剣を持った男が、仲間たちと顔を見合わせる。
やがて、剣が鞘へ収まった。
棍棒を持った男も武器を下ろす。
最後に、魔術師が杖を下げた。
「今回は、お前の運が悪かった」
剣の男が言った。
俺は答えない。
ただ、ナイフを首元へ当てたまま、男を見る。
「な、何言ってんだよ……」
「じゃあな」
「お、おい……!」
三人は振り返る。
ナイフの男を気にする様子もなく、フードを深く被り直す。
そして、そのまま走り去っていった。
……希薄な関係だ。
俺はナイフの男を見る。
男は何も言わない。
ただ、去っていった仲間たちの背中を見つめている。
「……嘘だろ」
小さく呟く。
自分だけが残されたことを、ようやく理解したらしい。
俺は首元からナイフを離し、男の服を掴む。
「立て」
「ぐっ……!」
男が焼けた肩を押さえる。
「痛ぇ……」
「歩け」
俺は構わず、服を掴んだまま歩かせる。
男はふらつきながらも、俺に引かれて歩き始めた。
路地の外へ向かった。
大通りへ出る。
行き交う人々が、こちらへ視線を向ける。
俺は周囲を見渡した。
「誰か、衛兵を呼んできてくれ」
近くにいた男へ声をかける。
「それとこいつを少し見といてくれ」
男をその場に座らせる。
「……分かりました」
戸惑いながらも、男は頷いた。
ナイフの男は、抵抗しなかった。
焼けた肩を押さえたまま、黙って座っている。
俺は路地の奥へ戻る。
屋根を見上げ、そのまま地面を蹴った。
一気に屋根へ飛び上がる。
「アマネ」
「カナタさん」
アマネが立ち上がる。
「もう大丈夫だ」
「……はい」
俺はアマネを抱き上げる。
そのまま屋根から飛び降り、大通りへ戻った。
先ほどの男は、まだそこにいた。
俺はアマネを地面へ下ろす。
あとは衛兵を待つだけだ。
「……面倒だな」
小さく呟く。
アマネが俺の隣に立つ。
いつもより、少しだけ距離が近い。
俺は何も言わず、衛兵が来るのを待った。
————————————————————————————
しばらくすると、衛兵がやってきた。
俺は簡単に事情を説明する。
衛兵は倒れている男と俺を交互に見ながら、話を聞いていた。
「分かりました。あとは我々に任せてください」
「ああ」
衛兵が男へ近づく。
男は焼けた肩を押さえたまま、抵抗する様子もない。
仲間には置いていかれた。
逃げることもできない。
今のこいつには、抵抗する理由もないのだろう。
俺は男から離れた。
衛兵が男を連れていく。
その姿を見届けてから、アマネを見る。
「行くか」
「……はい」
アマネが頷いた。
俺たちは本屋へ向かって歩き始める。
先ほどまでの出来事などなかったかのように、街は平和な光景を見せている。
ただ、さっきまでより少しだけ俺の近くを歩いている。
「疲れたか?」
「……少しだけ」
「そうか」
俺は歩く速度を少し落とした。
しばらく歩くと、目的の店が見えてくる。
本屋だ。
大きな看板が出ている。
窓から店内が見える。
壁際には棚が並び、その間にもいくつかの棚が置かれている。
その棚には、本がぎっしりと並んでいた。
「ここだ」
アマネが店を見る。
少しだけ目が大きくなった。
俺たちは店の中へ入る。
扉が開く。
外の街の音が、少しだけ遠くなった。
代わりに、紙の擦れる音や、ページをめくる音が聞こえる。
本の匂いもする。
店内には何人か客がいた。
誰も大きな声を出さない。
それぞれが棚の前に立ち、本を手に取っている。
棚には札が掛けられていた。
文芸書。
実用書。
専門書。
児童書。
学習参考書。
それぞれの棚に、本が整然と並べられている。
「……いっぱいあります」
俺も店内を見る。
想像していたより多い。
これだけの本を一つの店に集めているのだから、探すだけでも大変そうだ。
「アマネならここら辺だろ」
俺は児童書の棚へと向かう。
アマネも後ろからついてくる。
棚には、色鮮やかな表紙の本が並んでいた。
絵の多い本。
子供向けの物語。
動物や植物について書かれた本。
簡単な世界地図が描かれた本もある。
ページを開けば、いくつかの地域に分けられ、それぞれの土地の特徴が簡単に紹介されている。
そこには、その地方でよく食べられているものや、暮らしている種族、見られる動物などが、絵と一緒に載っていた。
「……」
アマネが、一冊の本に手を伸ばす。
「これは?」
「動物の本だな」
「動物……犬とか猫ですか?」
「ああ」
アマネが本を手に取る。
ぱらぱらとページをめくる。
そこには、アマネの知っている犬や猫が描かれていた。
その中には、見たことのない動物もいる。
知らない動物が出てくるたびに、アマネの目が輝く。
ページから目を離さず、顔を小さく動かしながら絵を追っている。
「これも、動物……」
知っていくことが楽しい。
そんな様子だった。
「その本は、そこまでにしとけ」
「……?」
「興味があるなら買うから、他にも気になるのを探せ」
「買って……いいんですか?」
「ああ」
アマネは手にした本を見る。
それから、棚に並んでいる本へ視線を移した。
「……はい」
小さく頷く。
そして、また棚へ目を向ける。
「俺も少し見てくるから、アマネも買う本選んでおけ」
「分かりました」
俺はアマネと別れ、専門書の棚へ向かった。
魔道具について書かれた本を手に取る。
ページをめくる。
冷蔵庫、レンジ、照明、収納袋、遠話機 。
ページをめくるたびに、目を通していく。
けれど――。
「……」
知らないものはない。
どれも俺が知っているものだった。
仕組みについても、特別珍しいことは書かれていない。
魔術の本にも手を伸ばす。
確認された魔術適性が並んでいる。
火炎。
炎を生み出し、操る魔術。
水。
水を生み出し、操る魔術。
土。
土や石を操る魔術。
氷結。
氷を生み出し、操る魔術。
治癒。
傷や身体の損傷を治す魔術。
身体強化。
肉体の能力や感覚を強化する魔術。
——————。
確認の多い一般魔術の適性。
死霊。
死者の肉体に残る記憶を利用し、その身体を動かす魔術。
魔従。
魔物を従わせ、魔力によってその潜在能力を引き出す魔術。
変身。
他者や魔物の姿へと自身の外見を変化させる魔術。
模倣。
触れた相手の性質を一時的に模倣する魔術。
——————。
確認の少ない希少魔術の適性。
創造。
無機物を生み出す魔術。
斬痕。
対象を切り裂き、その傷を治癒できないものにする魔術。
天操。
天候や気象を変化させる魔術。
支配。
他者や概念を従わせるとされる魔術。
——————。
固有魔術と呼ばれる適性もある。
確認例は極めて少ない。
中には文献に記されているだけで、実際に存在したのかすら定かではないものもある。
簡単な説明が書かれているだけで、魔術式の構造については触れられていない。
他の魔術の本に目をやる。
『火炎魔術適性者向け魔術式・初心者編』
そんな題名が目に入る。
他の適性についても、同じような本が並んでいる。
ページをめくる。
火球。
炎の壁。
炎を纏わせる方法。
火力を上げるための魔力操作。
魔術式の簡略化。
初心者でも扱える魔術式が、分かりやすく描かれている。
昔なら、こうした魔術を覚えるだけでも、手探りで魔力を流し続ける必要があった。
今はこうして、体系化された魔術式を本で学ぶことができる。
魔術を覚える環境は、昔よりもずっと整っている。
けれど、目新しいものはない。
俺は本を棚へ戻す。
それでも、少し気になった。
これ以上詳しい魔術式について書かれた本はないのだろうか。
近くにいた店員へ声をかける。
「すまない」
「はい。何かお探しでしょうか?」
「魔術について、もっと詳しく書かれた本はないか?」
「詳しく、ですか?」
「ああ。初心者向けではなく、魔術式そのものについて書かれたものが欲しい」
店員は少し考える。
「そうですね……」
そして、申し訳なさそうに首を横に振った。
「当店にも専門書はいくつかございますが、魔術式を専門的に研究した本となりますと、あまり置いていません」
「そうなのか」
「はい。そういった本をお探しでしたら、王都のほうが見つかりやすいと思います」
「王都?」
「王都には魔術研究を専門に扱っている店もありますから」
店員が続ける。
「それ以外にも、魔術の研究が盛んな街なら、専門的な書物を扱っている店があると思います」
もっと深く知りたいなら、場所を変える必要があるらしい。
「悪かったな」
「いえ。お役に立てたなら何よりです」
俺は店員から離れる。
この機会に他の魔術式を知れればと思ったが、残念だ。
俺はアマネの元へと戻る。
アマネが本棚の前に立っていた。
何冊かの本を手に取り、表紙を見比べている。
時々、隣の本を見ている。
まだ決められていないらしい。
「決まったか?」
「一冊は決まってます。あと何冊買ってもいいですか?」
アマネが本を抱えたまま尋ねる。
抱えているのは、動物の簡単な図鑑だった。
「そうだな……」
俺は棚を見る。
「あと二冊くらいなら買ってやる」
「二冊ですね。分かりました」
アマネは再び本棚へ向き直った。
そこには、タイトルや表紙から内容が想像できる本が、たくさん並んでいる。
勇者が姫を救うために仲間を集め、姫を攫った悪いドラゴンを倒す本。
動物に人気のパン屋さんが、動物たちの要望に応えてパンを作っていく本。
暗い街を歩く悪い子を、ゾンビやスケルトンが脅かす本。
そんな本が、いくつも並んでいる。
アマネは一冊ずつ、表紙を眺めていく。
気になった本を手に取っては、少しだけページをめくる。
けれど、すぐには決めない。
また棚へ戻し、隣の本へ手を伸ばす。
俺はその様子を、少し離れたところから眺めていた。
◇
「決めました」
思っていたよりも、早くそんな声が聞こえた。
アマネがこちらを振り返る。
腕には、三冊の本が抱えられていた。
「これでいいのか?」
「はい」
アマネは満足そうに頷く。
動物の図鑑と、二冊の絵本。
「そうか」
俺は本を受け取る。
「じゃあ、会計してくるか」
「はい」
二人で本を持って、店の奥にある会計へ向かう。
会計を済ませ、本を収納袋へ入れる。
「これで今日の予定は終わりだな」
「はい」
店を出る。
外へ出ると、昼の街は相変わらず賑わっていた。
「昼飯でも食うか」
「はい」
「何が食べたい?」
「……」
アマネが少し考える。
「クレープが食べたいです」
「……お前、本当にクレープ好きだな」
「はい」
迷いのない返事だった。
「まあ、帰りに買ってやる」
「本当ですか?」
「ああ。昼飯を食べた後にな」
「……分かりました」
アマネが嬉しそうに頷く。
俺たちは昼飯を食べる店を探しながら、街を歩き始めた。
今日は銀行へ行って、本屋へ寄った。
あとは昼飯を食べて、帰りにクレープを買う。
それだけだ。
アマネは時々、収納袋のほうへ視線を向けていた。
その中には、さっき選んだ三冊の本が入っている。
家に帰れば、きっとまたページを開くのだろう。
俺はそんなアマネを横目に見ながら、歩き続けた。




