表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/122

第80章「選ばれた3000人――静かに動き出す握手会準備」


握手会の企画は、すでに“イベント”というより“プロジェクト”に変わりつつあった。


都内のイベント運営会社の一室。


ホワイトボードには大きくこう書かれている。


・応募者:20,000人

・当選枠:3,000人

・開催日:2日間(午前・午後×2)


その下に、細かい動線図とセキュリティ配置。


まるでライブ会場の設計図だった。



雷斗はスタッフと並びながら、淡々と指示を出していく。


「午前は回転速度を上げてください」


「午後は少し余裕を持たせる」


「写真撮影は時間固定で」


無駄がない。


慣れている者の動きだった。



その横で、巳波は別室のモニターを見ていた。


画面には、当選者の抽選処理が流れている。


名前、年齢、コメント。


ひとつひとつが人間の“熱量”として並んでいる。



【いつも救われています】

【初めてイベント行きます】

【人生で一番楽しみです】

【ラーメン配信から来ました】



その中に、また一つだけ異質なデータが混ざっていた。


コメントが長い。


冷静で、距離が近い。


そして、どこか“観察している側”の文章。



巳波はそれを見て、静かに笑う。


「やっぱり来るんだ」



雷斗が横から覗く。


「当選処理、どうします?」



巳波は少し考える。


「普通に通して」


即答だった。



雷斗は少しだけ目を細める。


「特別枠の話は?」



巳波は画面から目を離さずに言う。


「特別にする必要ないよ」


「その人はもう、特別だから」



空気が一瞬だけ止まる。



雷斗はそれ以上聞かなかった。


代わりに、淡々と処理画面へ戻る。



一方その頃――


大学。


琉偉は講義室の最後列に座っていた。


教授の声は遠い。


ノートは開かれているが、頭の半分は別の場所にある。



スマホには通知。


「握手会 当選結果」



指が一瞬止まる。


そして開く。



画面に表示されたのは――


「当選」



それだけだった。



静かに息を吐く。


「……当たったのか」



周囲は何も変わっていない。


でも、自分だけが少しだけ別の時間に入ったような感覚だった。



その日の昼。


大学の食堂。


友人が軽く話しかける。


「握手会とか応募したの?」


琉偉は少し間を置いて答える。


「した」


「当たった」



友人は一瞬固まる。


「え、マジ?」



琉偉はそれ以上説明しない。


ただ水を飲む。



その頃、イベント運営本部。


雷斗の端末に最終リストが届く。


3000人。



巳波はそれを見て、静かに言う。


「これで決まりだね」



雷斗は頷く。


「はい。もう変更はできません」



巳波は画面を閉じる。


そして小さく息を吐く。


「……会うんだね、ちゃんと」



その言葉には、少しだけ温度があった。



夜。


琉偉は帰り道を歩きながら、スマホを見ている。


握手会の案内。


時間。


場所。


注意事項。



その中に一文。


「混雑を避けるため、完全整理券制」



画面を閉じる。


空はもう暗い。



そして、ふと呟く。


「普通の一日じゃなくなるな」



その声は、少しだけ静かだった。


でも、確かに――


何かが動き始めていた。  



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ