↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/123

第60章「交差する夜、そして始まる配信本番」


夕方前――


まだ陽が完全に落ちきる前の時間帯。



リビングには、すでに“配信前の空気”が出来上がっていた。



その中心にいるのは、巳波。



そして、その向かい側に座っているのは――


琉偉の母、聖樹だった。



「すごいわね……これ」



聖樹は食卓を見渡す。



そこには明らかに“普通の家庭”では見ない光景。



■配信機材(主要)


・メインカメラ(SONY α7Ⅳ)

・サブカメラ(俯瞰用)

・リングライト

・LEDパネルライト

・マイク(ブームアーム付き)

・配信PC(OBS起動状態)



そして、その隣――



山のように積まれたラーメン。



カップ麺、袋麺、冷凍ラーメン。


具材、トッピング、飲料水。



「これ……何をやるの?」



聖樹が素直に聞く。



巳波は落ち着いて答える。



「大食いの生配信です」



一切の迷いなく。



「今日の夜に」



聖樹は少し驚きながらも頷く。



「そうなのね」



そして続ける。



「琉偉は?」



巳波はすぐに答える。



「顔出しはしません」



一瞬だけ間を置き、


少し柔らかく続ける。



「声だけ、です」



その配慮に、聖樹は軽く頷く。



「それなら安心ね」



さらに巳波は続ける。



「あと、幼馴染の子も呼んでます」



「蒼くんと彩音さん」



その名前を聞いた瞬間――



聖樹の表情が少し変わる。



「……あら」



小さく笑う。



「来るのね、あの子たち」



巳波は少し驚く。



「ご存知なんですか?」



聖樹は頷く。



「ええ」



「蒼くんのお母さんの薺さんと、彩音ちゃんのお母さんの百華さん」



少し懐かしそうに目を細める。



「中学と高校、一緒だったの」



「ママ友でもあるわね」



その事実に、巳波は少し目を見開く。



「そうなんですね……」



思わぬ“繋がり”。



この家の中で、関係がさらに複雑に交差していく。




その頃――



玄関の外。



ガチャ、と鍵の音。



「ただいま」



琉偉が帰ってくる。



靴を脱ぎながら、リビングの声が聞こえる。



笑い声。



(……?)



ゆっくりと中に入る。



そして、その光景を見る。



巳波と母・聖樹が、楽しそうに会話している姿。



一瞬、時間が止まる。



「おかえり」



巳波が先に気づく。



そのまま、迷いなく近づく。



そして――



唇を重ねる。



“濃厚なキス”



聖樹の前で。



しかも、少し長めに。



「……ん」



巳波が小さく声を漏らす。



琉偉も応えるように、しっかりと唇を重ねる。



離れたあと。



一瞬の静寂。



そして――



聖樹が苦笑する。



「ラブラブなのはいいけど」



少しだけ間を置く。



「やりすぎないようにね」



琉偉は少しだけ顔を赤くする。



巳波は、軽く笑った。




それから約30分後。



インターホンが鳴る。



「来たね」



巳波が立ち上がる。



玄関を開けると――



「こんばんは」



蒼と彩音。



二人は中に入り、すぐに気づく。



「……あ」



リビングにいる人物。



聖樹。



二人は同時に姿勢を正し、お辞儀をする。



「こんばんは」



礼儀正しく。



聖樹も優しく返す。



「いらっしゃい」




少しの挨拶のあと。



巳波が蒼に向かって言う。



「そうだ」



「薺さん、最近会えてないって言ってたよ」



蒼が少し驚く。



「母さんが?」



「うん」



そして彩音の方へ。



「百華さんにも、連絡してあげて」



彩音も頷く。



「分かりました」




その時。



聖樹がふと思い出したように言う。



「そうだ、忘れてた」



琉偉の方を見る。



「これ」



食卓の上に置かれた封筒。



「結婚祝い」



琉偉は少し驚きながら受け取る。



中を見る。



「……え」



中には――



20万円。



空気が一瞬止まる。



巳波も思わず声を失う。



「……」



そしてすぐに、深く頭を下げる。



「ありがとうございます」



蒼と彩音もその金額に目を見開く。



「すご……」



小さく呟く。



聖樹は穏やかに言う。



「前祝いってことで」



それだけ言って、立ち上がる。



「じゃあ、私はこれで」



自然な流れで帰っていく。



ドアが閉まる。




静寂。



そしてすぐに、空気が切り替わる。



巳波が振り返る。



「よし」



「始める前に説明するね」



蒼と彩音が頷く。



「今日はラーメン大食い配信」



「顔出すのは私だけ」



「二人は声だけでサポートお願い」



「琉偉も同じ」



三人が揃って頷く。




そして、改めて食卓を見る。



配信機材。



そして――



ラーメンの山。



湯気を上げる準備前の麺たち。



整えられた照明。



カメラのレンズ。



すべてが“本番”を待っている。



巳波は小さく息を吐く。



「じゃあ」



「行こうか」




夜8時。



秘密と現実が交差する、


その瞬間が始まろうとしていた。 



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。