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第46章「静かな翌朝」


夜が終わったあとの家は、少しだけ音が違っていた。


エアコンの低い稼働音。


冷蔵庫の小さな振動。


そして、隣にいる“誰か”の気配。



朝。


カーテンの隙間から光が差し込む。


東戸塚の一軒家は、まだ完全に“日常”にはなりきっていない静けさを持っていた。



琉偉が目を覚ます。


少し遅れて、隣の気配にも気づく。



巳波はまだ起きていない。


髪が少し乱れたまま、静かに寝息を立てている。



(……ほんとに一緒に住んでるんだよな)



昨日の配信。


蒼と彩音の反応。


画面越しのキス。


全部がまだ頭の中に残っている。



その時。


巳波が小さく動く。


目がゆっくり開く。



「……おはよ」



かすれた声。



琉偉は少しだけ驚いて、すぐに答える。


「おはようございます」



巳波は軽く伸びをする。


「昨日、ちょっとやりすぎたね」



琉偉は少し黙る。


「配信のことですか」



「全部」


巳波は軽く笑う。



そのまま起き上がると、琉偉の方を見る。



「でも、もう隠すのも慣れてきた」



琉偉は小さく頷く。


「蒼と彩音は……多分大丈夫です」



巳波は少しだけ首をかしげる。


「“多分”なんだ」



「はい」



少しの沈黙。



巳波はベッドから立ち上がる。


カーテンを開けると、朝の光が部屋に広がる。



「今日、何する予定?」



琉偉は少し考える。


「大学の準備、少しだけ確認して」


「あと、引っ越し後の整理ですね」



巳波は頷く。


「私は撮影の打ち合わせ」



少しだけ間。



そして振り返る。



「ねえ」



琉偉が見る。



「もう普通の生活っぽいね」



その言葉は、少しだけ不思議だった。



“普通”


それはずっと遠かった言葉のはずなのに、


今はこの部屋の中にある。



琉偉は静かに言う。


「はい」



巳波は軽く笑う。


「じゃあ、それでいいか」



そして――


ゆっくり近づく。



短くキスをする。



「行ってきますの前に」



琉偉は少しだけ息を吐く。


「行ってきます」



そのやりとりは、


もう“特別”ではなくなりつつあった。



でも確かに、


二人だけの“日常の形”になっていた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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