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第45章「画面の外側の現実」


配信が終わった直後の部屋は、急に静かになった。


さっきまで画面を埋め尽くしていたコメントの流れも止まり、モニターには配信終了の表示だけが残っている。



「……終わったね」


巳波が軽く息を吐く。



琉偉は小さく頷く。


「はい」



数秒の沈黙。


その静けさは、配信中とはまったく別の重さを持っていた。



巳波は椅子から立ち上がると、少しだけ近づく。



「今日、ありがとう」



そのまま――


唇が触れる。



“濃いめのキス”


さっきの配信の延長ではない。


完全に二人だけの時間としてのキスだった。



「……ん」



離れたあと、巳波は軽く笑う。


「ちょっと疲れた」



琉偉は静かに言う。


「お疲れさまです」



その時だった。



琉偉のスマホが震える。



画面に表示された名前。



蒼・彩音(グループ通話)



「……」


琉偉は一瞬止まる。



そして通話を開く。



同時に、二人の声が飛び込んでくる。



『おい琉偉!!』


『やっぱお前だっただろ!?』



蒼の声が先に爆発する。



『今日の配信の隣の人!!』


『声で分かったわ!!絶対お前!!』



彩音もすぐに続く。


『あれ隠す気なかったでしょ!?』


『普通にバレるってあれは!』



琉偉は少しだけ目を閉じる。


「……まあ」



その一言で確定したような空気になる。



蒼が叫ぶ。


『やっぱりかよ!!』



その瞬間。



巳波が少しだけ画面の外から顔を出す。



テレビ電話モード。


カメラに少しだけ映る形で。



そして静かに言う。


「こんばんは」



蒼と彩音が一瞬黙る。



『……え?』


『え、ちょっと待って』



彩音の声が裏返る。


『本物!?』



蒼も動揺する。


『なんでいるの!?今!?』



巳波は落ち着いたまま続ける。


「さっきまで配信してました」



蒼がすぐに言う。


『いやそれは知ってる!!』


『問題はそこじゃねぇ!!』



巳波は少しだけ視線を琉偉に向ける。


そして、軽く言う。



「この人のことは」



少し間。



「他の人には言わないでね」



その瞬間だった。



巳波はスマホ越しのまま、琉偉の方へ少し寄る。



そして――



テレビ電話画面のまま、琉偉にキスをする。



「……ん」



画面越しに見えてしまう“距離の近さ”。



蒼と彩音は完全にフリーズする。



『……』


『……いや』



数秒の沈黙。



そして蒼が力なく言う。


『もう分かったわ』



彩音もため息混じりに言う。


『これは見なかったことにするやつだね』



蒼が軽く笑う。


『とりあえずさ』



『また連絡してこいよ』



彩音も続ける。


『話はそれから』



そう言って――



通話は切れる。



静寂。



画面には終了表示。



巳波は何事もなかったようにスマホを置く。



「……大丈夫そうだね」



琉偉は小さく息を吐く。


「多分……大丈夫じゃない気もします」



巳波は少しだけ笑う。


「まあ、慣れてもらうしかないね」



そしてもう一度だけ。


軽くキスをする。



今度は短く。


確認のように。



「今日はもう休もうか」



琉偉は頷く。


「はい」



新しい家の静けさの中で、


現実と秘密がゆっくり同じ場所に馴染んでいった。   



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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