第四十九話 「告白連鎖」
《最後の恋愛監査終了》
その翌日。
神奈川県立統合学園は、妙に静かだった。
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恋愛監査制度。
Lスコア。
偽装恋人。
長い間、この学校を縛っていたもの。
それが終わろうとしていた。
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だからだろう。
みんな。
少しだけ素直になっていた。
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昼休み。
中庭。
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「……好きです」
一般クラス男子。
真っ赤な顔。
向かいには女子。
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「えっ」
「前から、ずっと」
周囲ざわつく。
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「始まったぁぁぁ!!」
柴崎が叫ぶ。
「お前静かに見守れ!!」
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だが。
終わりじゃない。
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別の場所。
D組。
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「一緒に畑いる時間、好きだった」
D組女子。
隣の男子、完全停止。
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さらに。
A組。
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「……評価とか関係なく」
A組男子が言う。
「お前といると落ち着く」
以前のA組では絶対出なかった言葉。
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校内中で。
“好き”が溢れ始めていた。
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「……なんだこれ」
俺が呟く。
一ノ瀬雪乃が静かに笑う。
「解放されたんじゃない?」
「何が」
「みんなの感情」
静かな声。
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昔は。
告白は怖かった。
失敗したら減点。
嫌われたら終わり。
だから。
誰も本音を言えなかった。
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でも今は違う。
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「振られてもいい!」
一般クラス男子が叫ぶ。
「でもちゃんと伝えたかった!」
講堂レベルのざわめき。
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Eクラス連中。
なぜか拍手していた。
「青春してるぅぅぅ!!」
「お前らテンション高ぇよ!!」
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一方。
中央恋愛省。
会議室。
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《全国告白率急上昇》
《恋愛不安指数急低下》
研究員たちが騒然としていた。
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「統計が異常です!!」
「全国的に感情表現が増加しています!」
完全に社会現象だった。
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保守派幹部が青ざめる。
「管理が……消えていく……」
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だが。
白鷺優斗は静かにモニターを見る。
そこには。
笑いながら告白する生徒たち。
泣きながら本音を言う生徒たち。
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「……違います」
小さく呟く。
「戻っているだけです」
人間らしい感情へ。
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一方。
夕方。
旧校舎農地。
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今日も騒がしい。
だが。
どこか空気が柔らかい。
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「なあ九条」
柴崎が笑う。
「結局さ」
「なんだ」
「恋愛って、“正解”探すもんじゃなかったんだな」
静かな空気。
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朝霧が隣で笑う。
「好きになっちゃったら、もう仕方ないしね」
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松永は真顔だった。
「とうもろこしも自然に育つ」
「全部農業に繋げるな」
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すると。
一ノ瀬が小さく笑う。
「でも、ちょっと分かるかも」
「何が」
「恋愛って、“頑張って作る”より」
夕焼けを見る。
「育っていく感じなんだね」
静かな声。
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その時。
校内全モニターが点灯する。
全員止まる。
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《中央恋愛省 全国声明》
白鷺優斗が映る。
静かな顔。
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「本日をもって」
空気が止まる。
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《全国Lスコア制度 終了》
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沈黙。
数秒後。
学園中がざわめき始める。
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「終わった……?」
「マジで?」
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白鷺は静かに続けた。
「これからの恋愛教育は」
映像切り替え。
Eクラス。
畑。
焼きとうもろこし。
笑い声。
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「“感情共鳴教育”へ移行します」
その瞬間。
Eクラス全員。
静かになる。
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最初。
ここは落ちこぼれ隔離クラスだった。
でも今。
この学校を。
この国を。
変えていた。
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一ノ瀬が小さく俺の手を握る。
「……すごいね」
「だな」
演技じゃない。
本物の温度だった。
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その瞬間。
《感情共鳴指数》
《全国同期状態確認》
監視ドローンが最後に光る。
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そして。
初めて。
誰もツッコまなかった。




