第三十九話 「恋愛相談」
《偽装恋人分析委員会》
設立三日目。
Eクラス旧校舎は、完全に終わっていた。
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食堂前。
《恋愛相談受付》
看板設置。
「なんで本当に始まってんだよ……」
俺は頭を抱えていた。
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しかも。
並んでいる。
一般クラス。
B組。
C組。
相談者だらけ。
「Eクラス人気すぎるだろ」
柴崎が呆れている。
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一方。
教師は満足そうだった。
「よし! 今日も青春してるな!」
「この学校の青春概念おかしい」
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その時。
最初の相談者が来る。
A組女子だった。
空気が少し張る。
「……相談、いいですか」
「どうぞ」
一ノ瀬が優しく答える。
昔なら。
A組側がEクラスへ相談なんてありえなかった。
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「彼氏が……」
A組女子が小さく言う。
「“高評価される会話”しかしてくれないんです」
静かな空気。
「毎日、褒め言葉も完璧で」
「デートも計画通りで」
「SNS映えも完璧で」
でも。
「なんか、疲れる」
その言葉に。
Eクラス全員が少し黙る。
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柴崎が真顔で言った。
「それ偽装寄りだな」
「診断みたいに言うな」
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松永が腕を組む。
「共同作業不足」
「またそれ!?」
「畑やれ」
「農業万能論やめろ!!」
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だが。
一ノ瀬は静かに頷いた。
「……少し分かる」
全員が彼女を見る。
「前の私も、“正解の恋愛”ばっかり考えてた」
小さな声。
「でもEクラスって、“失敗してもいい”から」
笑う。
「だから楽なんだと思う」
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相談者のA組女子は少し驚いた顔をする。
「……失敗しても、いい?」
「うん」
一ノ瀬は優しく笑った。
「恋愛って、多分テストじゃないから」
空気が静まる。
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その瞬間。
監視ドローン即反応。
《感情共鳴指数上昇》
「感動シーンに出てくんな!!」
Eクラス総ツッコミ。
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さらに。
次の相談者。
一般クラス男子。
「好きな子いるんですけど……」
「うん」
「会話続かなくて」
Eクラス、少し考える。
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すると。
朝霧が言った。
「何か一緒にやれば?」
「え?」
「魚でも捕る?」
「ハードル高ぇよ」
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瀬名が笑う。
「でも、“話題探す”より、一緒に何かした方が自然だよ」
藤堂も頷く。
「作業中の会話って、意外と楽」
完全にEクラス理論だった。
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その時。
教師が黒板へ書く。
《Eクラス恋愛理論》
・一緒に働け
・一緒に食え
・一緒に笑え
「雑ぅぅぅぅ!!」
だが。
相談者たちは真剣にメモしていた。
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その頃。
中央恋愛省。
《Eクラス恋愛相談制度》
《満足度:異常高評価》
研究員たちが頭を抱えていた。
「なぜですか!?」
「理論が雑すぎます!!」
だが。
結果は出ていた。
《相談後交際成立率》
《全国平均超過》
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白鷺優斗は静かに笑う。
「……彼らは」
資料を見る。
「“恋愛テクニック”ではなく、“関係そのもの”を教えている」
それは。
恋愛省が最も教えられなかったものだった。
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一方。
Eクラス。
夕方。
相談会終了後。
「疲れた……」
俺が机へ突っ伏す。
一ノ瀬が隣で笑う。
「でも、なんかすごいね」
「何が」
「前まで恋愛できなかったEクラスが」
窓の外を見る。
「今、恋愛教えてる」
静かな声。
確かに。
最初は。
誰も恋愛なんて分からなかった。
でも今は。
不器用でも、
本音で向き合っている。
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その時。
食堂扉が勢いよく開いた。
「大変だぁぁぁ!!」
柴崎だった。
「なんだ」
「A組カップルが畑耕し始めた!!」
沈黙。
「感染してるぅぅぅぅ!!」
Eクラス全員が頭を抱えた。




