第三十八話 「偽装恋人分析委員会」
Eクラスは、またおかしくなっていた。
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旧校舎食堂。
黒板。
《偽装恋人分析委員会》
大きく書かれている。
「……なんだこれ」
俺は本気で帰りたかった。
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教師が満足そうに頷く。
「偽装恋人分析会、大好評だったからな!」
「なんでだよ!!」
Eクラス総ツッコミ。
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「というわけで!」
教師が勢いよく紙を貼る。
《偽装恋人分析委員会 正式設立》
嫌な正式化だった。
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「委員長は!」
嫌な予感。
「九条蓮!!」
「やっぱり!!」
「副委員長!!」
「一ノ瀬雪乃!!」
一ノ瀬まで固まる。
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「拒否権は?」
俺が聞く。
教師、笑顔。
「ない!!」
「独裁国家か!!」
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一ノ瀬は顔を押さえていた。
「……なんでこんなことに」
「Eクラスだから」
「納得したくない」
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その時。
柴崎と松永が同時に立ち上がった。
「よし」
「分析するか」
完全にノリノリだった。
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「A組と一般クラスの偽装恋人を分析するぞ」
二人同時。
空気停止。
「なんで息合ってんだよ!!」
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Eクラス全員。
なぜかやる気だった。
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「最近多いんだよな」
「“見せかけカップル”」
朝霧が言う。
漁業班情報網らしい。
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「A組、まだLスコア目的交際多いし」
瀬名も頷く。
「共同生活制度導入で焦ってる」
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つまり。
Eクラス方式が広がった結果。
“本物っぽく見せる偽装恋人”が増えた。
皮肉だった。
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「じゃあ分析開始だ」
藤堂がホワイトボードを出す。
なんで準備いいんだ。
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偽装恋人特徴
①距離感が不自然
「近いけど心が遠い」
②会話がテンプレ
「点数意識しすぎ」
③共同作業がない
「生活感ゼロ」
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「研究発表みたいになってる!!」
俺が叫ぶ。
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すると。
一ノ瀬が少し真面目な顔になる。
「……でも、分かるかも」
全員静かになる。
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「前の私も、そうだった」
小さな声。
「“恋愛っぽく見える行動”ばっかりしてた」
静かな空気。
「でもEクラス来てから」
笑う。
「泥だらけで畑やってる方が、ずっと自然だった」
完全に価値観が変わっていた。
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その時。
監視ドローン飛来。
《偽装恋人分析委員会》
《活動記録開始》
「国家公認委員会になってるぅぅぅ!!」
Eクラス崩壊。
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さらに。
教師が新紙を貼る。
《校内恋愛相談受付開始》
「なんで!?」
「分析委員会だからな!」
「意味分からん!!」
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その直後。
一般クラス女子たちが本当に来た。
「すみません……」
Eクラス静止。
「彼氏が“正解の会話”しかしてくれなくて……」
沈黙。
「ガチ相談だ!!」
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柴崎が腕を組む。
「重症だな」
「お前急に恋愛専門家面するな」
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松永が真顔で言う。
「一緒に焼きとうもろこし焼け」
「解決法が雑!!」
だが。
Eクラス全員、少しだけ頷いていた。
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「……共同作業か」
一ノ瀬が呟く。
「うん」
俺も少し考える。
Eクラスでは。
一緒に働いて、
一緒に飯食って、
一緒に笑ってるうちに。
自然に感情が育っていた。
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その頃。
中央恋愛省。
白鷺優斗が頭を抱えていた。
《偽装恋人分析委員会》
「……なぜ生まれたのですか、この組織」
研究員も困惑している。
「ですが人気です」
《相談件数急増》
しかも。
相談後カップル継続率が高い。
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白鷺は静かに呟く。
「Eクラスは……」
窓の外を見る。
「恋愛教育機関へ進化しているのかもしれませんね」
恋愛省が数十年かけて作った制度を。
Eクラスは泥だらけで塗り替え始めていた。




