第三十七話 「偽装恋人分析」
中央恋愛省。
特別分析室。
巨大モニターに映し出されていたのは――
《九条蓮・一ノ瀬雪乃》
通称。
《偽装恋人起点現象》
ひどい呼び名だった。
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「改めて分析結果を報告します」
研究員が資料を開く。
「両者は当初、“偽装恋人関係”として接触」
モニター映像。
初期の九条と一ノ瀬。
距離感が不自然。
笑顔も作り物。
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「しかし」
映像切り替え。
畑。
焼きとうもろこし。
Eクラスの日常。
「共同生活・協力行動・集団環境により」
《自然感情形成》
数値が変化していく。
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研究員が震えた声で言う。
「つまり……」
「“偽装恋人”から、本物の恋愛感情が発生しています」
会議室沈黙。
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一方。
Eクラス。
そんな国家分析を知らず。
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「おい九条!」
柴崎がニヤニヤしていた。
「お前ら最初、演技だったんだよな?」
「……まあ」
「今は?」
「……」
周囲静止。
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一ノ瀬雪乃も少しだけこっちを見る。
静かな空気。
「……今は違う」
ぽつりと答える。
数秒停止。
「うおおおおおお!!」
Eクラス大爆発。
「監査官認めたぁぁ!!」
「偽装終了!!」
「うるせぇ!!」
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一ノ瀬は顔真っ赤だった。
でも。
否定しなかった。
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その時。
教師が乱入。
「よぉぉぉし!!」
嫌なテンション。
「今日は!!」
黒板へ書く。
《偽装恋人分析会》
「最悪だぁぁぁ!!」
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教師は真顔だった。
「Eクラス恋愛の原点だからな!」
「歴史授業みたいに言うな!!」
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黒板分析開始。
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初期状態
九条蓮
* 恋愛否定
* 人間不信
* Lスコア最低
一ノ瀬雪乃
* 恋愛演技エリート
* 高Lスコア
* 本音不明
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「この二人が!」
教師が叫ぶ。
「なぜ本物になったのか!!」
「知らねぇよ!!」
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すると。
農業班女子が手を挙げた。
「共同作業じゃね?」
「それだ」
漁業班女子も頷く。
「毎日一緒にいたし」
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松永が真顔で言う。
「焼きとうもろこし」
「絶対違う」
「重要要因だ」
謎の説得力だけある。
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一方。
一ノ瀬は少し考えていた。
「……多分」
静かな声。
「“演技しなくてよかった”からかも」
空気が少し静まる。
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「A組にいた時は」
窓の外を見る。
「ずっと、“好かれる自分”を演じてた」
小さな声。
「でもEクラスは違った」
笑う。
「変でも笑うし」
「失敗しても怒らないし」
「泥だらけでも普通だし」
完全にEクラス汚染されていた。
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「だから」
一ノ瀬は少し照れながら言う。
「九条くんの前でも、普通でいられた」
沈黙。
監視ドローン即反応。
《感情共鳴指数急上昇》
「だから来るなぁぁぁ!!」
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その時。
柴崎が腕を組んだ。
「つまりアレだな」
「何が」
「“好きになろうとした”んじゃなくて」
朝霧を見る。
「気づいたら好きになってた」
空気が静まる。
それは。
Eクラス全員に共通していた。
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恋愛省は。
恋愛を“技術”にしようとした。
でもEクラスは違った。
毎日一緒にいて。
飯を食って。
働いて。
笑って。
その中で。
自然に感情が育っていた。
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その頃。
中央恋愛省。
白鷺優斗が静かに資料を閉じる。
《偽装恋人起点理論》
新理論名称。
「……興味深い」
小さく呟く。
「“偽物”から始まった関係ほど、本物へ変化しやすいとは」
それは。
恋愛省が最も理解できなかった感情だった。




