第三十二話 「旧寮部屋変え」
その日のEクラスは、朝から嫌な予感がしていた。
⸻
《旧寮全員集合》
校内放送。
しかも教師の声が妙にテンション高い。
「絶対ろくでもねぇ……」
俺が呟くと、一ノ瀬雪乃も真顔で頷いた。
「うん」
⸻
数十分後。
旧寮共有ホール。
Eクラス全員集合。
教師陣までいる。
黒崎玲奈までいた。
「……なんですかこれ」
柴崎が警戒する。
すると。
担任教師が勢いよく前へ出た。
「はい!!」
嫌な始まり方だった。
「今日は!!」
黒板を叩く。
《旧寮部屋変え》
沈黙。
⸻
「現在、男子旧寮と女子旧寮で分けていますが!」
教師が熱弁する。
「意味ありません!!」
「暴論だろ!!」
Eクラス総ツッコミ。
⸻
「感情共鳴指数研究の結果!」
教師は続ける。
「カップル成立組は同室の方が精神安定率が高いことが判明しました!」
「研究結果が雑!!」
黒崎が頭を抱えていた。
⸻
そして。
教師が紙を掲げる。
「まず!!」
嫌な間。
「A組の一ノ瀬と九条! 同じ部屋な!」
数秒停止。
「……は?」
俺と一ノ瀬、同時停止。
⸻
「そんな感じで!」
教師は止まらない。
「柴崎と朝霧!」
「松永と瀬名!」
「藤堂と獅子原!」
「真壁と水瀬!」
どんどん発表される。
「それでいいなお前らは!」
提案が雑だった。
⸻
Eクラス全員。
数秒固まる。
そして。
「よくねぇぇぇぇぇぇ!!」
大爆発。
⸻
「待て待て待て!!」
柴崎が真っ赤になっていた。
「同室って何!?」
「恋人だろ?」
「そうだけど急だろ!!」
朝霧も顔真っ赤。
「む、無理無理無理!!」
⸻
一方。
松永は少し考えていた。
「……瀬名が嫌じゃなければ」
「お前冷静だな!?」
瀬名の顔が爆発的に赤くなる。
「ま、松永くんそういうの急に言うのずるい……!」
⸻
藤堂は完全フリーズ。
「同室……?」
獅子原はニヤニヤしている。
「え、私はちょっと楽しそう」
「楽しむな!!」
⸻
一方。
俺と一ノ瀬。
沈黙。
「……」
「……」
教師が言う。
「ほら! お前ら学園最高同期率なんだから問題ないだろ!」
「問題しかない!!」
俺が即答した。
⸻
一ノ瀬は顔真っ赤で固まっていた。
「……む、無理」
「だよな」
「……」
数秒後。
小声。
「でも……」
「ん?」
「九条くんなら……少し安心かも」
心拍上昇。
監視ドローン即反応。
《感情動揺確認》
「うるせぇぇぇ!!」
⸻
その時。
黒崎玲奈が前へ出た。
「……一応言っとくけど」
静かな声。
「これは恋愛省正式実験だから」
Eクラス静止。
「拒否権ないわよ」
地獄だった。
⸻
数時間後。
旧寮大移動開始。
男子寮と女子寮の壁撤去。
部屋割り変更。
Eクラス大騒ぎ。
⸻
「朝霧ぃぃぃ!! 俺片付けどうすればいい!?」
「まず服を床から拾って!!」
柴崎、怒られていた。
⸻
「松永くん、その炭持ち込むの?」
「生活必需品だ」
「違うと思う」
⸻
「藤堂、工具多すぎ!」
「改良班だからな」
「恋人部屋で工具箱五個はおかしい!」
⸻
そして。
俺の部屋。
荷物整理中。
一ノ瀬が静かに部屋を見回していた。
「……ほんとに同室なんだ」
「らしいな」
妙に落ち着かない。
だが。
一ノ瀬は少し笑った。
「なんか変だね」
「何が」
「最初、“偽装恋人”だったのに」
夕陽が差し込む。
「今、普通に同じ部屋になってる」
静かな声。
俺は少し黙る。
確かに。
最初は全部演技だった。
でも今は。
多分。
ちゃんと本物だった。
⸻
その瞬間。
《感情共鳴指数》
《同室ペア全組上昇確認》
監視モニターが点灯。
旧寮全域から叫び声。
「だから空気読めぇぇぇぇ!!」




