第二十九話 「Eクラス方式」
《Eクラス方式》
その四文字は、日本中へ衝撃を与えた。
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翌朝。
旧校舎前。
報道ドローン。
取材班。
恋愛省研究員。
人、多すぎ。
「……終わってる」
俺は本気で帰りたかった。
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「見てください! ここが“Eクラス方式”発祥地です!」
レポーターが興奮している。
「自然恋愛発生率、全国最高値!」
「焼きとうもろこし人気も異常!」
「そこ重要なの!?」
松永だけ誇らしげだった。
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一方。
Eクラス連中は微妙な顔をしていた。
「俺ら普通に生活してただけなんだけど……」
柴崎が困惑している。
「なんで国家理論になってんだ」
朝霧も苦笑していた。
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だが。
変化は確実に起きていた。
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一般クラス。
以前みたいな《恋愛ランキング》会話が減っている。
代わりに。
「今日、一緒に帰る?」
「放課後、農地見学行かない?」
普通の誘いが増えていた。
点数じゃなく。
ちゃんと会話している。
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一方。
A組。
空気は重かった。
「……Eクラス方式なんて間違ってる」
A組男子が呟く。
「努力して上げたLスコアは何だったんだ」
その時。
相沢が静かに言った。
「努力が無意味だったわけじゃない」
全員見る。
「ただ、“点数のための恋愛”だけじゃ足りなかったんだ」
静かな声だった。
以前より少し柔らかい。
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その頃。
Eクラス農地。
今日も騒がしい。
「柴崎ぃぃぃ!!」
「なんだ!?」
「朝霧さんに弁当作ってもらってる!!」
「違っ、魚弁当を分けてもらっただけだ!!」
「リア充だぁぁぁ!!」
平和だった。
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一方。
藤堂と獅子原。
「これ罠調整用」
獅子原が手作りキーホルダーを渡す。
藤堂停止。
「……え」
「改良班カラーで作った」
「……」
耳真っ赤。
「嬉しい」
「顔で分かりづらいなぁ」
Eクラスがまた騒いでいた。
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一ノ瀬雪乃は、その光景を見ながら静かに笑う。
「……みんな変わったね」
「そうだな」
「前は、“好き”って言えなかったのに」
風が吹く。
「今は、ちゃんと伝えてる」
小さな声。
そして。
「私も、少し変われたかな」
その言葉に。
俺は少しだけ彼女を見る。
最初の一ノ瀬雪乃は。
完璧だった。
でも今は。
ちゃんと照れて、
笑って、
怒っている。
そっちの方が、ずっと自然だった。
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その時。
校内モニター点灯。
《中央恋愛省・特別発表》
空気が止まる。
白鷺優斗が映る。
「本日をもって」
静かな声。
《旧Lスコア制度 一部凍結》
全校騒然。
「えぇぇぇ!?」
「マジで!?」
さらに。
《感情共鳴指数 本格導入決定》
ざわめき。
そして最後に。
《神奈川県立統合学園Eクラス》
《正式名称変更》
嫌な予感。
モニター表示。
《感情共鳴実験クラス》
沈黙。
「ダサぁぁぁぁ!!」
Eクラス総ツッコミ。
「Eクラスでいいだろ!!」
「なんで研究施設みたいにするんだ!!」
だが。
白鷺優斗は静かに微笑んだ。
「おめでとうございます」
そして。
「皆さんは、“恋愛制度を変えたクラス”になりました」
その瞬間。
旧校舎の空気が少しだけ静まる。
最初は。
ただの落ちこぼれ隔離クラスだった。
でも今。
Eクラスは。
本当に、この世界を変え始めていた。




