第二十四話 「全面監視Eクラス」
翌朝。
Eクラスは終わっていた。
物理的に。
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「……なんだこれ」
旧校舎前。
俺は絶句していた。
監視カメラ。
増設。
ドローン。
巡回監査官。
なぜか農地横に小型観測タワーまで建っている。
「国家予算の無駄遣いすぎるだろ……」
柴崎も青ざめていた。
「俺ら犯罪組織扱いじゃねぇか」
「恋愛感染組織らしいぞ」
「字面終わってる!!」
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《Eクラス全面監視体制》
正式名称。
『感情共鳴特別観測区域』
もっとヤバくなっていた。
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その時。
ドローンが近づいてくる。
《感情同期率測定中》
「うわっ!?」
朝霧が逃げる。
柴崎が庇うように前へ出た。
「近ぇよ!」
《恋愛感情反応確認》
「やめろぉぉぉ!!」
Eクラスが大混乱だった。
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一方。
松永は普通に畑作業していた。
「お前平然としてんな」
「とうもろこしは逃げない」
「メンタル強ぇな」
だが。
瀬名が隣へ来ると、少しだけ動きが止まる。
「松永くん」
「……なんだ」
「監視されながら手繋ぐの、ちょっと恥ずかしい」
松永停止。
耳赤い。
「……すまん」
「なんで謝るの?」
瀬名が笑う。
自然に。
その瞬間。
《感情共鳴指数上昇》
監視ドローンが反応した。
「反応するなぁぁぁ!!」
Eクラス総ツッコミ。
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昼休み。
食堂。
Eクラス全員、監視カメラを気にしていた。
「落ち着かねぇ……」
藤堂が小声で言う。
獅子原が隣で笑った。
「でも藤堂、さっき私のこと見てた」
「見てねぇ!」
《視線感情反応確認》
「だから反応するな!!」
監視AIが余計すぎる。
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その時。
食堂扉が開く。
現れたのは、一ノ瀬雪乃。
相変わらず目立つ。
だが今はもう。
Eクラス全員が普通に迎える。
「おー一ノ瀬ー」
「焼きとうもろこし食う?」
「毎日食べてない?」
一ノ瀬が笑う。
「もう慣れた」
完全にEクラス適応していた。
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その時だった。
監視ドローンが急接近。
《九条蓮・一ノ瀬雪乃》
《感情同期率測定開始》
「またかよ」
一ノ瀬が少し困った顔をする。
そして。
「……最近、近づくだけで測定されるね」
「最悪だな」
すると。
ドローン表示が変わる。
《同期率:94%》
食堂静止。
「高っ!?」
「もう普通にカップルじゃん」
「制度上な!」
だが。
一ノ瀬は少しだけ笑った。
「……今は、それだけじゃないかも」
心拍が少し跳ねる。
監視ドローン即反応。
《感情動揺確認》
「うるせぇぇぇ!!」
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その頃。
中央恋愛省本部。
会議室。
大量のデータモニター。
《Eクラス観測記録》
白鷺優斗は静かに資料を見ていた。
「驚異的です」
研究員が言う。
「Eクラス接触後、生徒たちのストレス指数低下」
「恋愛不安軽減」
「感情安定率上昇」
別研究員が続ける。
「従来型Lスコア制度より、自然恋愛発生率が高い」
沈黙。
白鷺は静かに笑った。
「……つまり」
窓の外を見る。
「“管理された恋愛”より、“自然発生した感情”の方が安定する」
それは。
恋愛省そのものを否定しかねない結論だった。
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一方。
Eクラスでは。
「おい九条!」
柴崎がニヤニヤしていた。
「次お前らだろ」
「何が」
「キス」
「なんでそうなる」
Eクラス全員が頷く。
「確かに」
「後夜祭でもしてなかったし」
「進展遅いな監査官」
「うるせぇ!!」
一ノ瀬は顔を赤くしながら笑っていた。
その瞬間。
《感情共鳴指数 Eクラス全体上昇》
監視モニターがまた反応する。
もはや。
Eクラスそのものが、“恋愛現象”になり始めていた。




