第二十一話 「Eクラス」
Eクラス解体計画凍結。
そのニュースは、一夜で学園中へ広がった。
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翌朝。
校内モニター。
《特別通達》
《Eクラス運営継続決定》
ざわめき。
A組は静かだった。
一般クラスは困惑。
そして。
Eクラスだけが異様に騒がしかった。
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「生き残ったぁぁぁ!!」
柴崎が旧校舎廊下を走る。
「今日から俺たちは自由だ!!」
「いや普通に授業あるぞ」
農業班女子が冷静にツッコむ。
「ちくしょう!!」
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一方。
松永は朝から畑へいた。
「何してんだ」
俺が聞くと、松永は真顔だった。
「記念とうもろこし」
「なんだそれ」
「解体凍結記念栽培」
「お前人生とうもろこし中心すぎるだろ」
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Eクラス農地。
そこには、以前より少し明るい空気があった。
朝霧と柴崎は自然に隣へいる。
瀬名と松永も普通に会話している。
改良班は新型燻製器を作っていた。
相変わらず意味が分からない。
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だが。
変わったのは、それだけじゃない。
「……見られてるな」
俺が呟く。
一ノ瀬が頷いた。
校舎側。
一般クラスの生徒たちが、Eクラスを見ている。
以前みたいな“見下し”だけじゃない。
興味。
困惑。
憧れ。
色々混ざっていた。
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「なんでEクラスだけ楽しそうなんだ?」
「恋愛不適合者じゃなかったの?」
「でもカップル成立してたし……」
ヒソヒソ声。
価値観が揺らぎ始めている。
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その時。
農地ゲートが開いた。
全員止まる。
現れたのは――相沢。
A組。
生徒会執行部。
空気が少し張る。
「……なんの用だ」
柴崎が警戒する。
相沢は少し周囲を見る。
畑。
炭火台。
魚干し網。
完全に高校じゃない。
そして。
「……焼きとうもろこし、一つくれ」
沈黙。
「は?」
「聞こえなかったか?」
「いや聞こえたけど!?」
Eクラス全員が困惑していた。
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松永は黙って一本渡す。
相沢は受け取り、一口食べた。
数秒後。
「……うまいな」
静かな声。
Eクラス停止。
「相沢が認めた!?」
「国家レベル事件だ!!」
「だから国家基準やめろ!」
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すると。
相沢は小さく息を吐いた。
「……A組にはない空気だな」
ぽつりと呟く。
その瞬間。
空気が少し変わった。
生徒会側にも、揺らぎが出始めている。
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一ノ瀬雪乃は、その光景を静かに見ていた。
「……変わり始めてる」
「何が」
「この学園」
風が吹く。
「みんな、Lスコア以外を見るようになってる」
静かな声。
俺は少し空を見る。
最初は。
ただの偽装恋愛だった。
だが今は。
Eクラスそのものが、この学校を変え始めていた。
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その時。
校内全モニターが突然点灯する。
《中央恋愛省通達》
空気が止まる。
白鷺優斗の顔が映る。
「皆さん、おはようございます」
嫌な笑顔だった。
「本日より」
モニター表示が切り替わる。
《新制度試験運用開始》
《感情共鳴指数》
ざわめき。
「……なんだそれ」
俺が呟く。
白鷺は静かに微笑む。
「恋愛を“個人”ではなく、“関係性”で測定する新システムです」
空気が凍る。
そして最後に。
「なお、モデルケースは――Eクラスにお願いします」
Eクラス全員。
同時に頭を抱えた。
「また俺たちかよぉぉぉ!!」




