第十五話 「Eクラス解体計画」
「……解体?」
旧校舎屋上。
俺は端末画面を睨んでいた。
《Eクラス解体計画》
嫌な単語だった。
横から柴崎が覗き込む。
「おい待て待て待て」
「声でけぇ」
「解体ってなんだよ!? 俺ら校舎ごと爆破されんの!?」
「発想が終末映画なんだよ」
一ノ瀬も画面を見る。
そして表情が変わった。
「……本気だ」
「何が分かる」
「この計画、生徒会だけじゃない」
静かな声。
「恋愛省も絡んでる」
最悪だった。
⸻
翌日。
Eクラス食堂緊急会議。
黒板には大きく書かれていた。
『Eクラス生存戦略会議』
なんでサバイバル組織みたいになってるんだ。
「まず状況確認だ!」
柴崎が前へ立つ。
「俺たちは今、国家に消されかけている!」
「言い方ぁ!」
改良班がツッコむ。
だが間違ってもいない。
⸻
「解体って具体的には?」
農業班女子が聞く。
俺は黒崎からの情報を共有した。
「学園祭最終日に“適性再編”を実施」
「低評価者は他校隔離施設送り」
静まり返る。
漁業班女子・朝霧が小さく言う。
「……戻って来れないやつ?」
「多分な」
空気が重い。
⸻
だが。
「なら簡単だ」
松永が立ち上がった。
全員見る。
「学園祭で勝てばいい」
「何に?」
「全てに」
なんだこいつ。
「Eクラスの価値を見せれば、簡単には切れない」
真顔だった。
すると改良班がノッてくる。
「つまり焼きとうもろこしで革命!?」
「食革命だ!」
「お前ら本当にそれ好きだな」
⸻
だが。
一ノ瀬がぽつりと言った。
「……でも、少し分かる」
全員が静かになる。
「A組って、みんな数字ばっかり見てる」
彼女は窓の外を見る。
「誰が上とか」
「誰が人気とか」
「誰と付き合えば得とか」
静かな声。
「でもEクラスって違う」
柴崎を見る。
朝霧を見る。
松永と瀬名を見る。
「ちゃんと“好き”がある」
空気が止まった。
そして。
「……うおおおお!!」
柴崎が突然立ち上がった。
「聞いたか!? 一ノ瀬さん公認だぞ!!」
「何が!?」
「俺たちにも恋愛感情あるって!!」
「最初からあるわ!」
⸻
その勢いのまま。
柴崎は朝霧のところへ走った。
「朝霧!!」
「えっ!?」
「俺、お前と話してると楽しい!!」
食堂沈黙。
「……はい?」
朝霧が固まる。
Eクラス全員も固まる。
柴崎も固まった。
「……あ」
顔が真っ赤になる。
「ち、違っ……!」
「告白じゃん」
「うわぁ」
「青春だ」
Eクラスが騒ぎ始める。
「違うからな!!」
柴崎が叫ぶ。
だが。
朝霧は少しだけ笑った。
「……私も、楽しいよ」
静寂。
数秒後。
「うおおおおおお!!」
Eクラス大爆発。
「リア充発生!!」
「国家反逆恋愛だ!!」
「漁業班勝利!!」
「うるせぇぇぇ!!」
柴崎が真っ赤になっていた。
⸻
一ノ瀬はその光景を見て、小さく笑っていた。
自然に。
本当に楽しそうに。
そして。
「……いいな」
ぽつりと呟く。
俺だけが聞こえた。
「何が」
「こういうの」
彼女は少し照れたように視線を逸らす。
「打算とかじゃなくて」
「……」
「ちゃんと感情で動いてる感じ」
沈黙。
その時。
校内モニターが突然点灯する。
《学園祭特別イベント追加告知》
嫌な予感。
《Eクラス解体適性審査》
空気が凍る。
《学園祭収益・恋愛適性・社会性を総合評価》
そして最後の一文。
《最下位クラスは廃止対象とする》
Eクラス全員が静まり返る。
数秒後。
松永が静かに言った。
「……焼きとうもろこし、五倍作るか」
「戦争始めるな」




