第十四話 「Eクラス残留判定」
《恋愛適性選抜ランキング発表》
その告知が出た瞬間から、学園全体の空気は変わっていた。
A組は盛り上がる。
上位層にとって、ランキングは“祭り”だからだ。
だが。
Eクラスは違う。
俺たちにとってランキングは、
人生の切り捨て判定だった。
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翌朝。
Eクラス食堂。
空気が重い。
珍しく誰も騒いでいない。
松永ですら静かだった。
「……で?」
柴崎が机に突っ伏したまま言う。
「特別措置って何なんだよ」
「知らん」
「怖ぇよ」
改良班女子が端末を見る。
「掲示板だと、“Eクラス再編成”って噂」
沈黙。
農業班女子が顔をしかめる。
「再編成って……」
「切るってことだろ」
誰かが呟いた。
空気が冷える。
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その時。
校内モニターが点灯した。
《恋愛適性選抜制度 詳細発表》
全員が画面を見る。
《上位成績者》
《通常クラス昇格》
ざわめき。
そして。
《低適性判定者》
《Eクラス残留》
数秒沈黙。
次の瞬間。
「はぁぁぁぁ!?」
柴崎が立ち上がった。
「Lスコアだけ見られてEクラス残留って鬼畜かよ!!」
食堂中が共感した。
「努力どこ行った!?」
「農業スキル見ろよ!!」
「漁業班国家資格レベルだぞ!!」
松永が真顔で言う。
「焼きとうもろこし技術は?」
「恋愛適性に関係ねぇ!」
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だが。
モニター表示は続いていた。
《なお、残留者には追加矯正プログラムを実施》
「追加だぁ?」
《共同生活強化》
《恋愛適性観察》
《感情同期訓練》
地獄だった。
「感情同期訓練ってなんだよ!」
「国家が人の心まで管理する気か!?」
「もうしてるだろ!」
その時。
一ノ瀬が静かに呟く。
「……ひどい」
演技じゃなかった。
本気で嫌悪している顔だった。
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「ふざけんなよ……」
柴崎が拳を握る。
「なんで恋愛できねぇだけで、こんな扱いされなきゃいけねぇんだ」
誰も笑わない。
いつものEクラスなら、バカ騒ぎしてる。
でも今は違った。
みんな薄々分かっている。
この制度は、
本気で自分たちを切り捨てようとしている。
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その時。
白鷺優斗が食堂へ入ってきた。
空気が止まる。
白鷺は穏やかに微笑む。
「皆さん、誤解しています」
「……何をだよ」
柴崎が睨む。
「Lスコア制度は、皆さんの幸せのためです」
「どこがだ!!」
柴崎が叫ぶ。
「俺たち恋愛下手なだけだろ!!」
白鷺は静かに答える。
「恋愛とは社会適応力です」
「他者理解」
「共感性」
「協調性」
そして。
「恋愛できない人間は、社会生活にも問題を抱えやすい」
空気が凍る。
「だから矯正が必要なのです」
静かな声だった。
だが。
それが余計に怖い。
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「……じゃあ」
ぽつりと。
一ノ瀬が口を開いた。
全員が彼女を見る。
「Eクラスのみんなって、“失敗作”なんですか?」
白鷺は少し黙る。
そして。
「いいえ」
笑顔のまま答えた。
「“改善対象”です」
Eクラス全員の空気が冷え切った。
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その夜。
旧校舎屋上。
柴崎が缶ジュースを握り潰していた。
「クソが……」
珍しく本気で怒っていた。
「俺、恋愛とかよく分かんねぇけど」
夜風が吹く。
「朝霧と話してる時、楽しいんだよ」
小さな声。
「松永だってそうだろ」
遠くを見る。
農地で、松永と瀬名が燻製器を直している。
笑いながら。
「みんなちゃんと感情あるのに」
柴崎は呟く。
「なんで数値だけで決められなきゃいけねぇんだよ」
沈黙。
俺は空を見る。
その時だった。
端末が震える。
《監査局機密通知》
《生徒会による“Eクラス解体計画”を確認》
空気が変わる。
そして最後の一文。
《実施予定:学園祭最終日》




