第六話 王都・決闘・新たな出会い(前編)
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
前回の「幕間」(第五話⇔第六話)で、レオンとクロエによる王都到着前夜のやり取りを書かせていただきました。
引き続き、第六話から始まる王都編もお読みいただけたらと思います。
本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。
主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。
この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
ソルティア王国の王都の門をくぐって、中世ヨーロッパ風の街並み(......であっているのか?)を歩き続けること一時間。
俺たちは冒険者ギルドの門前に立っていた。
「ここか................。」
俺は大通りの中で、ひと際目立つ大きな建物を見上げて言った。
王都の冒険者ギルドは国内の冒険者ギルドの本部を兼ねているそうだ。
先ほどから出入りしている人たちを見ていると、百戦錬磨の達人という風情の人たちが、どこかしこに闊歩していた。
「じゃあ行こう!レオン。」
クロエが俺の手を引いて、ギルドの中に入っていく。
本当に物おじしないところは、臆病者の俺にはこの先敵いそうもない。
ギルドの中は、酒場と依頼を掲示する掲示板とがあり、受付はその一番奥にあった。
荒くれ者のような人たちもいる中で、華奢なクロエとただの若造の二人組は否応なく目立っていた。
「新規登録の方はあちらの魔道具をお使いください。」
受付に着くと、受付嬢からそのように案内された。
怪しげな紋様が刻まれた長方形の台座の上に、青い半球状の物体が鎮座している。
この半球に手をかざすと、下の長方形の台座からステータスを記した紙が出力されるのだという。
クロエがまるで占いを受けに来た少女のように、ワクワクした表情で半球に手をかざしていた。
——台座から紙が出てくる。
『名前:クロエ、レベル:12、総合ステータス:C、体力:C、知力:B、魔力:A、適性:水魔法........』
クロエは出力された紙を眺めると、受付にそれを持って行った。
続いて俺の番だ。
俺は青い半球に手をかざした。
異変が起きたのはその時だった。
それまで青かった半球が、突如としてオレンジ色になり、最後は赤色へと移り変わっていった。
やばい、壊したか——?
俺は不安になったが、ほどなくして半球は元の青色へと戻り、何事もなかったかのように測定を終えた。
——台座から紙が出てくる。
『名前:レオン、レベル:99、総合ステータス:S、体力:SSS、知力:S、魔力:S、適性:火魔法 / 防御魔法.............』
俺にはそこに書かれた意味が分からなかったので、それをそのまま受付に持参した。
——受付嬢は俺から紙を受け取ると、その顔がたちまち驚愕の色に染まっていった。
「少々お待ちください!」
受付嬢は奥に下がる。受付のただならぬ空気を察した他の冒険者たちがレオンの周りに集まってくる。さすがにクロエも不安になったのか、心もとない表情で俺の方を見る。
受付嬢が奥から戻ってきた。
「レオン様。あなたを当ギルドの『特別専属会員』に指定します。」
冷や汗をぬぐいながら、しかし毅然とした態度で受付嬢は俺にそう告げた。
『特別専属会員』........?
俺は聞いたことがない言葉の響きにクロエの方を見る。クロエは驚きと喜びから目を輝かせて、俺に説明してくれた。
どうやら、『特別専属会員』とは冒険者ギルドにおける伝説的な存在らしく、国内にも数人しかその座に就くものはいないということらしい。
これに指定されると、その人は冒険者ギルド以外のギルドへの登録はできなくなるが、代わりにギルドから掲示板に載っていない特別な依頼を回してもらえる他、各種の便宜を図ってもらうことができる、ということだった。
ギルド内が大騒ぎとなり、周囲の冒険者たちの値踏みするような視線に、俺は囲まれていた。
「おい、なんなんだよ。あいつは..........。」
「ガタイはいいみたいだが...............。腕は俺よりも細いぞ。」
受付嬢はそれではこちらの書類に記入を、と一枚の紙を渡してきた。
そこには先ほど出力された、俺のステータスがすべて転写されていた。
他の冒険者たちもこぞって書類を覗き込み、俺の名前は瞬く間にギルド中に広まった。同じく俺とパーティを組むクロエも大勢の注目を集めた。
クロエも誇らしそうな表情で、改めて俺のステータスを覗き込んできた。
◆
——だが次の瞬間、クロエの目は規格外のステータスよりも別のところにくぎ付けになった。
書類の一番下、その他の欄に記載された一言がクロエの心に強烈な印象を残していた。
『心に傷を持つ孤独な戦士』
クロエにとっては他のどんな数値よりも、この言葉が重要だった。
だけど、もしここでレオンの「心の傷」を聞いたとしてもおそらくは答えてくれないだろう。
それに、それはレオンの心の傷を深くしてしまうかもしれない——。
クロエは今見たことは触れないことにした。
◆
俺はクロエの表情が少し変わったのに気づき、声をかけようとした。
——その時だった。ギルドの入り口から騎士と思われる人間が複数入ってきた。
「グランツ公爵家の遣いのものである。ギルド長にお目通り願いたい。」
先頭の騎士が受付嬢に告げた。
「ギルド長は席を外しておりまして...........。少々お待ちいただけますか。」
受付嬢は答える。
「ところでこれは何の騒ぎだ?」
先頭に立っていた騎士は周囲を見回すと、受付嬢に問うた。
「はい.......。実は先ほど当ギルドから特別専属会員になる冒険者が現れまして.......。」
声を潜めて受付嬢が答える。
「特別専属会員だと?ステータスを見せろ。」
騎士は受付嬢から俺のステータスが書かれた書類を受け取ると、一読してから言った。
「機械の故障だ。あるいは何らかの欺瞞工作か。いずれにしても真偽を確かめる必要がある。そこの........レオン殿と申したか。一手お手合わせ願いたい。」
突然の騎士による宣戦布告に俺の頭は付いていかなかった。
公爵家の騎士が俺に勝負を?冒険者ギルドで登録をすませたら手ごろなクエストがないかをチェックして、クロエと今後のことを相談しようと思っていたのに、さっきからいったい何なんだ——。
「おい、特別専属会員様が公爵家騎士と決闘だとよ!」
「こいつは見ものだぜ。特別専属会員の実力、見せてもらおうぜ!」
俺の返答を待つことなく、決闘は既定路線となった。
——帰りたい。
だが断れば今度はステータス偽造の嫌疑とかでどこかに引っ張られるかもしれない。
クロエは俺を心配そうに見守っていた。
◇
場所を移して、急遽ギルドの裏庭で俺とその騎士——カイルとの決闘が行われることとなった。カイルと名乗った騎士の体は俺よりも大きく、年齢もいくらか年上に思えた。
その視線と動きに隙はなく、義理堅そうな顔は、今は真剣なまなざしを伴ってこちらに向けられていた。
決闘のルールは剣・魔法・体術いずれも使用可能。どちらかが降伏するか戦闘不能になる、もしくは勝敗は決したと審判が認めたときに終了とする。
——「機械の故障だ」と言ってはいたが、カイルは全く俺のことを侮ってはいない。
俺はそう理解すると一瞬の油断が命取りになることを覚悟して、決闘の舞台に上がった。
俺もカイルを侮ることはしない。
思えば、前世の俺はいつも侮辱の視線にさらされてきた。
こうして真剣な目を向けてくる相手はいままで何人いただろうか。
——なら、俺は誠心誠意、この男に応えるしかない。
「始めっ!」
審判の合図とともに、俺たちは剣をほとんど同時に抜いていた。
第六話もお読みいただきありがとうございました。
異世界系のテンプレのような展開でしたが、いかがでしたでしょうか.......?
カイルにも何かしらの前世の顔を設定しようかとも思いましたが、作者的には主人公とカイルの関係性は異世界から始まる形にしたかったので、主人公にとってカイルは”初対面”という設定にしました。
さて、第七話では主人公とカイルが戦うわけですが、勝負の行方はいかに.........。
第七話は2026年9月20日12時10分公開予定です。




