↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/73

第七話 王都・決闘・新たな出会い(後編)

 こんにちは。作者の「野生の書生」です。


 前回の第六話で、ギルドにより『特別専属会員』に指定されたレオンと、その場に居合わせた騎士カイルの決闘が行われることとなりました。二人の決闘の勝敗はいかに。


 本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。

 主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。


 この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。

 決闘開始と同時にカイルの素早い剣術が何度も俺に向かってきた。

 俺は防御魔法と剣を駆使して、カイルの一撃一撃を受け止める。

 カイルの脇が空いた隙を狙って、凝縮した火魔法でフラッシュを放ち、そこに剣を叩き込む。

 だが、カイルは自分の剣でフラッシュを防ぐと、一歩下がって俺の一撃を躱していた。


 ——強い。

 カイルと戦った俺の正直な感想だった。


 カイルも顔に汗をかき、長期化するにつれて余裕がなくなってきているのが見て取れた。

 

 引き続きカイルが突進してきた。

 俺はそれを躱して、今度は防御魔法で作ったシールドを重り代わりにカイルの背中に叩き込んだ。

 カイルの体が前のめりになる。


 その機会に俺はカイルの体に体当たりを食らわせようとした。

 カイルを転倒させる狙いだったが、カイルはあえて前転すると、直ちに体勢を立て直して、再び俺に向かってきた。


 お互い、剣の振り方も、魔法の放ち方も大きくなってきている。


 ——このままではマズい。

 俺はカイルの刺突を躱すと、戦闘位置を元に戻そうとして、体をよじった。


 だが、それが決定打となった。

 俺の意識が戦闘開始位置に向いた一瞬をついて、カイルの放った風魔法の風圧が、俺の脇腹を直撃していたのだ。


 カイルの攻撃は剣術をベースにして、そこに風魔法を組み合わせることで、いわば戦場を風魔法で包囲しつつ、剣術における優位なポジションを確保するやり方だった。

 風魔法をまともに食らった俺は、地面に転倒する。

 カイルは俺ののど元に剣を向けて、立っていた。


 「そこまで!」


 審判の声が響く。——カイルの勝利だった。


 「いい腕だった、レオン殿。だが、ステータスの値はやはり機械の故障だ。貴殿に悪意があったとは思えないから、偽造の嫌疑はないと私からギルドに話しておく。もう一度測定をやり直すのだな。」

 カイルはそう言うと、俺のもとから去っていこうとした。 


 だが、決闘を見ていたギャラリーの反応を見て、カイルは再び足を止めた。


 「おい、見ろよ。これ............。」

 「すげえな。全部の土がここで止まっているぜ。」


 先ほどまで俺とカイルの決闘が行われていたギルドの裏庭は見るも無残に荒れ果てていた。

 土や石は飛び散り、芝生はめくれあがって、植えてあった樹木の枝は、風魔法の風圧を受けてどこかしこ折れていた。


 ——ところが、ギャラリーたちのところには小石一つ飛んできていない。

 特にクロエの周りにはきれいな円ができるほどに、地面の荒れ具合が異なっていた。


 「まさか...........。」

 カイルはその端正な顔を驚愕で震えさせた。


 「レオン殿.........。貴殿はここにいる観客に防御魔法を施しながら私と戦っていたというのか........。」

 カイルは震えた声で俺に聞いてきた。


 「はい。ですが、私はあなたとの戦いに手を抜いたつもりはありません。誠心誠意を尽くした結果がこれです。あなたの言う通り、俺の実力はまだまだです。もう一度、ギルドで測定をやり直させていただきます。」

 俺はカイルに一礼するとその場を去ろうとした。



 「...............その必要はない。」


 振り返ると、カイルはうつむいて両手をおろして、絞り出すようにつぶやいていた。


 「『弱者を守る盾であれ』——これは私が仕えるグランツ公爵家の家訓だ。............私は勝負に目を奪われて大切なものを見失っていた。レオン殿、貴殿の実力は本物だ。どうか先ほどの無礼な言動をお許しいただきたい。」

 カイルは俺に向けて頭を下げると、一息にそう告げた。


 「謝る必要なんて、どこにもありません。むしろ俺みたいな若輩者に、こんなに真剣に向き合っていただいて、本当にありがとうございました。」

 俺はどうしていいかわからず、そう伝えて一礼した。


 その瞬間、ギャラリーたちから一斉に拍手が巻き起こった。


 さて、これでやっと帰れる——。

 そう思った矢先だった。



 「お待ちください。レオン殿。」

 俺は再びカイルに呼び止められた。


 カイルが、声のトーンを落として俺とクロエにだけ聞こえるように説明してきた。

 

 「実は、本日我々がこのギルドを訪れた理由は、公爵家直々に相談したい案件があったからなのです。レオン殿、ギルドには我々の方から説明しておきますので、私と一緒に屋敷まで来ていただきたい。」


 「レオン。『特別専属会員』だからここは断るわけにはいかないよ........。」

 クロエが俺に耳打ちする。


 ——俺の休憩時間は、どうやらまだ先のようだ。


   ◇


 カイルとともに馬車に乗り、三十分ほどたったころ、公爵家の屋敷に俺たちは到着した。

 公爵家で何に巻き込まれるか分からなかったから、クロエは先に宿へ帰そうと思ったのだが、

 「わたしもついて行く!」と言って引かず、今は俺とともにカイルの後を歩いていた。


 応接室に入ったところで、カイルが俺に言った。


 「レオン殿。私は報告がありますゆえ、しばしここでお待ちいただきたい。」

 俺とクロエはそこで待機することとなった。


 どれくらいそうしていただろうか、ほどなくカイルが戻ってきて、俺たちに向かって言った。


 「紹介します。公爵家令嬢、アリア・ロゼ・グランツです。」


 カイルの紹介を受けて、アリアと紹介された公爵家令嬢が応接室に入ってきた。


 「アリア様、こちらは先ほど紹介しました、レオン殿と、クロエ殿です。」

 カイルが俺たちを紹介する。


 「アリア・ロゼ・グランツと申します。以後お見知りおきを。」

 アリアと紹介された女性は言った。


 「レオンと申します。こちらこそ、今後とも——」

 俺は顔を上げてアリアと名乗った女性の顔を視界に入れた。

 だが、その瞬間に言葉が出なくなった。


 ——倉見麗子。どうしてお前がここに............。

 俺はまたしても卒倒していた。


 「レオンっ!?」

 クロエの声が俺の頭の奥に響いていたが、俺の意識は遠のいていった。 

 第七話もお読みいただき、ありがとうございました。

 カイルとの決闘もさることながら、ここで主人公の新たなトラウマを呼び起こす人物が登場しました。

 さて彼女は、主人公の前世の記憶も含めて、一体どのような人物なのでしょうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。