幕間(第五話⇔第六話) 王都到着前夜
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
前回の第五話で、レオンとクロエが"寄り道"を終えて再び王都への道を歩き出すところまで書かせていただきました。
今回は王都に到着する前の物語として、幕間(第五話⇔第六話)です。
本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。
主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。
この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
ヒロと別れて二日後。明日はいよいよ王都に着く。
クロエは冒険者ギルドに行って、冒険者としてその名を登録することになる。
じゃあ、俺は——。
王都に行くというところまでは決めていたが、その後の身の振り方については何も決まっていなかった。王都には各業種に合わせた様々なギルドがあるそうだけど、俺はどこに向かえばいいのだろうか。
部屋で一人、もんもんと悩んでいるとノックの音が聞こえてきた。
「どうぞ。」
俺が言うと、クロエが顔をのぞかせた。
俺はクロエを部屋に入れた。
クロエは椅子に座ると、俺の方を見て何かを話そうとしているが、言い出しにくそうな表情だった。
「クロエ?どうしたんだ——。」
俺は声をかけようとしたがそれは途中で遮られた。
クロエの目にうっすらとだが涙が浮かんでいたからだった。
「..........いかないで。」
クロエは消え入りそうな声で、震えながら言っていた。
「え............?」
俺は思わず、聞き返した。
「......王都に、着いたら、わたしは、冒険者に........。だけど、レオンは、レオンはっ。」
クロエはそこまで言うと、大粒の涙をぽろぽろとこぼし始めた。
そうだった。
いつの間にか当たり前のように俺の隣にはクロエがいたけれど、王都に着けばその理由は、なくなる。
最初、俺はクロエの顔におびえていた。正直言うと、今でも時々稲木凛花のことを思い出すことはある。
だが、王都まで無事にたどり着けるのかと心配していたこの旅路も、気が付けば明日にはゴール地点に到達しているのだ。
「クロエ。俺がヒロに言ったこと覚えているか?.......お前の居場所を、お前の力で精いっぱい守って行けって。クロエがもしも、自分の居場所が俺の隣だと言ってくれるのなら、俺にもその居場所を守らせてくれないか。」
——言った後でものすごく恥ずかしくなって、俺はいつもとは違う意味でクロエの顔を直視できなくなっていた。
「え..........。」
クロエは涙をぬぐって、俺の方を見てくる。
「だから........。俺も冒険者になる!冒険者ギルドに登録する!だからこれからもクロエは俺の仲間だ!」
気恥ずかしさに耐えかねて、俺は一息にまくしたてていた。
「うんっ。これからもよろしく!レオン!」
クロエはさっきまでの暗雲立ち込めていた表情を台風一過のように明るくした。
「それじゃあ、明日は一緒にギルドに行こう!おやすみ、レオン。」
そういうと部屋を去っていった。
——本当に嵐のようだ。
俺はベッドに横たわり、明日からの行動を考えていた。
クロエとこれからも冒険者として過ごしていく。
一人で別の道を選ぶ選択肢がなぜさっきまで存在していたのか、分からなくなっていた。
◇
部屋に戻ったクロエは、ポーチから念写を取り出すとベッドに横たわった。
しばらくそれを眺めると、ベッドの上で何度も何度も身を転がしていた。
幕間(第五話⇔第六話)もお読みいただき、ありがとうございます。
とうとう、主人公の異世界での方向性も「冒険者」という形で定まりました。
第六話以降、王都を舞台に物語は新しいフェーズに突入します。
引き続き、第六話もお読みいただければ幸いです。
第六話は2026年9月20日10時10分公開予定です。




