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シーズンⅤ 第十一話(最終話) 別離

 こんにちは。作者の「野生の書生」です。

 今回はいよいよ最終話です。


 本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。

 主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。


 この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。

 俺の回答に、千石先生は衝撃を受けているようだった。


 「なぜだ........。君はこの世界で、恨めしいはずの顔に囲まれて、過去のトラウマに追われて、おびえながら生きてきたのではないのか?私は君をその呪縛から解放するために——」


 千石は俺の目を見ながら、必死な表情で訴えてきた。



 「俺にとってここにいるみんなはかけがえのない仲間です。確かに最初は驚きましたし、その顔に怯えもしましたけど。」

 俺はクロエたちの方を一度振り返った。


 「でも、みんなこんな俺のことを信じて一緒にここまで旅をしてくれた仲間なんです。俺にとってここにいる仲間は、そんな写真の向こうにいる奴らの記憶なんかでどうにかなるような、ちっぽけなもんじゃないんですよ。」

 俺は一切の迷いなく言った。


 その言葉に、クロエも、アリアも、エレナも、ジークフリートも顔を上げた。



 「だったら、なおさらだ。君の過去の記憶が無くなれば、君は彼女たちと面と向かって話をすることができる。それは、彼女たちの願いでもあるのではないのか?」

 千石先生は理解しがたいといった表情で聞いてきた。


 「俺、この世界に来るときにルミナ様に言われたんです。俺は居場所がなかったんじゃない、居場所を作れなかっただけだって。あの時は悔しかったけれど、今はその意味が少しはわかります。俺が気づかなかっただけで元の世界にも、先生や俺の両親みたいに、一緒に俺の居場所を作ろうとしてくれる人がいたんだって分かったから。だから、俺はその人たちのことを無かったことになんてしたくないんです。」

 少々照れ臭かったが、俺は自分の本心を伝えていた。


 「それに俺、先生のことも忘れたくないんです。だから、俺の心の中にいる大切な人たちを消さないでくれませんか。」


 あまりの明快な回答に、千石は、自分は何をしにここまで来たのか、分からなくなっていた。

 私なんかが来なくても、羽沢君は自分の足で立ち、自分の手でこの世界に居場所を作り上げていた。


 張り詰めていたものが抜け落ちたような気持ちになり、千石は術式の発動に向けて起動していた魔法陣を消失させた。


 「私はとんだ独り相撲をしていたようだな............。」

 千石はそうつぶやくとその場に座り込んだ。


 魔石が放っていた強烈な光も、それに合わせるかのようにその発光を鎮めていった。




 「貴様!わが国軍を謀ったのか!」

 背後から突如声が上がった。ギルバード准将だ。


 カイルとジークフリートが即座に剣を構える。

 だが、次の瞬間、ギルバード准将の体は勢いよく飛ばされて、壁にたたきつけられていた。


 「くっ............!」

 ギルバード准将は立ち上がろうとしたが、敵わず力尽きた。


 カイルとジークフリートは驚いた顔で振り返る。

 ——魔力を発したのは、千石先生だった。


 千石先生も、内容は違えど、ルミナの祝福を生き延びた人間なのだ。

 改めて千石先生を見ると、その体には強烈な魔力が宿っていた。


 「国軍に渡した銃や自動車はあと一時間ほどで使用不能になる。騒がせてしまってすまなかった。」

 千石先生は俺たちに向かってそう言った。



 「千石先生。本当に——」

 俺は千石先生の元に駆け寄り、手を差し伸べようとした。


 その瞬間、見たことのある輝きが地下実験室の天井から降り注いできた。

 光とともに降臨してきたのは、女神ルミナだった。


 「結論は出たようですね。そろそろ時間切れです、千石先生。」

 ルミナは、千石にそう告げていた。


 「ああ、わかっているよ。ルミナ様。」

 千石はルミナに向かって言った。


    ◇


 「時間切れ..........?どういうことですか、先生。」

 俺は千石先生の体が少しずつ透けていっていることに気が付いた。


 「私の魂はまだ向こうの世界にある。この世界に来るときの付帯条件として、この世界にとどまれる制限時間が設けられていたんだ。その時間が来たんだよ。」

 千石先生は微笑みながら、俺に告げていた。


 「だから、私はもうここにはいられない。そして、もうここに来ることもないだろう。羽沢君、いやレオン君。これからの君の人生が、仲間たちとともに歩む、素晴らしいものであることを願っているよ。」


 恩師からの別れの言葉に、俺も姿勢を正して応じる。



 「先生、本当にありがとうございました。それと、向こうに帰ったら俺の両親に伝えてほしいんですが——。」

 俺は千石先生のもとに歩み寄り、両親への伝言を託した。


 「わかった。元の世界に戻ったら、必ず君の両親に伝えるよ。」

 千石先生は、これまでの中で一番優しい笑顔になって、俺に微笑みかけてくれた。


 クロエも、アリアも、エレナも、ジークフリートも、カイルも、消えていく千石先生に礼をして敬意を表していた。


 俺は目元に涙を浮かべて——それでも最後まで笑顔で、消えゆく恩師の姿を見送っていた。

 ルミナの光に導かれて千石の姿は、この世界から完全に消えていった。


   ◇


 「レオン!」

 「レオン様!」

 「レオン殿!」


 しばしの静寂を挟んで、俺のかけがえのない仲間たちの声が地下実験場に響き渡った。

 それと同時に全員が俺の周りに集まってくる。

 

 「レオン!私のこと”かけがえのない仲間”って言ってくれてありがとう!」

 「レオン様を信じて、本当に良かったですわ!」

 「私のためにあそこまで言ってくれるなんて..........、感激しました。レオン。」

 「レオン殿は私の生涯の戦友です!」


 皆が俺の周りで口々に言葉を重ねていく。


 「だー!もうわかったから。お前らいったん落ち着けって!」

 俺は両手を広げて全員をいったん押しやる。


 でもそれは、もう拒絶のための手ではない。


 「おいおい。先生が目を離したとたんに不純異性交遊とはね~。」

 いつもの調子でからかってくるジークフリートも「吾妻翔也」なんかの顔では決してなかった。


 「とりあえずいったん帰るぞ!なんだかいろいろあったせいで頭の中がもうめちゃくちゃなんだ。」

 俺は大げさに頭をかくと、出口に向けて歩き出した。


 「了解!」

 「へーい」

 俺の大切な仲間たちの声が後に続く。


 俺たちが鉄扉を開けたとき、床に残されていた一枚の写真は、吹きこんだ風で舞い上がった。

 写真は魔石の山に落ちて、魔力に当てられると、ゆっくりと燃えて、この世界から永遠にその姿を消していった。


 第十一話もお読みいただき、ありがとうございました!

 おかげさまで最終話も無事公開させていただくことができました。


 引き続き、本日エピローグを二本公開させていただきますので、本格的な後書きはそこでさせていただきます。


 エピローグ1は、2026年10月12日17時10分に公開予定です。

 エピローグ2は、2026年10月12日21時10分に公開予定です。


 この物語が面白かったと思っていただけた方は、是非、評価・感想をいただければと思います。

 また作者も、より多くの方にこの物語を手にしていただきたいと思いますので、ブックマーク等で応援していただければ幸いです。


 エピローグはまだ続きますが、ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!


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