シーズンⅤ 第六話 面会
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
前回は国軍による反乱開始を書きました。
今回はその続きからです。
本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。
主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。
この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
王宮から出る際、王都に巻き起こっている異様な景色を俺たちは目にしていた。
王宮のどこかしこに国軍の兵士が立ち、騎士団や近衛兵たちは両手をあげて整列させられていた。
表通りから民間人の姿は消えて、ここでも銃で武装した兵が、機械仕掛けの馬車——自動車に乗って王都を巡回していた。
俺たちは全員後ろ手に縛られて自動車の荷台に乗せられた。
目隠しもさるぐつわもされなかったのは、その必要がないという無言のメッセージだった。
これから向かうのは間違いなく研究所の地下室。
もはや行き先を隠す必要などない。
それに不用意に声を出せば、一緒に乗り込んでいる男たちが手にしている銃が使われるのだろう。
——だが、これでギルバード准将に会うことができる。
魔石密売組織の摘発から始まり、これまでさんざん振り回されてきた、この国の暗部の首魁たる存在——その男に招待されたのだから、ある意味光栄だ。
俺は荷台に同乗してきた銃を持つ男たちを睨むと、”面会”に備えて心の準備をしていった。
◇
後ろ手に縛られた人間を研究所の正門から通すわけにもいかず、俺たちは先日クロエと来たばかりの地下道に運ばれた。
俺たちが発見した塗り固められた壁は、今は壊されてその口を開いてた。
俺たちは荷台から下ろされて、そこから研究所の地下室に向けて歩かされた。
頭をかがめながら、狭くて薄暗い道を歩き続けて十分ほど、扉のようなものにたどり着いた。
俺たちを連行していた男の一人が手をかざし、魔力を込めるとロックが開く音がした。
扉がゆっくりと開かれて、その向こう側にある空間が視界に入っていった。
◇
開かれた扉の向こうにはおよそ異世界とは不釣り合いな、近代的な空間が広がっていた。
天井は高くはないが、学校の体育館ほどの広さはあろう大部屋。そこは魔石の中でも特に純度の高いものを使用したと思われる白色の蛍光灯のような光で満たされており、その壁はコンクリートの打ちっぱなしのような暗灰色の石で形成されていた。
部屋には複数の作業台が設置されており、様々な工具や魔道具が山のように置かれていた。
一部の作業台の周囲には、台から落ちたと思われる様々な魔法陣が書かれた紙が散乱しており、数多くの魔法がこの場で研究されていたことを物語っていた。
広大な空間を抜けた先に、ガラスの壁で隔てられた部屋があった。
ガラスの向こうには、複数の机と本棚が並んでおり、今は人の姿は見えなかった。
おそらく資料室の類だろう。
ガラスの壁の向こう側に通じるドアをくぐり、俺たちは資料室のさらに奥にある個室へと通された。
◇
「お待ちしていたよ。レオン君。」
個室の中には、複数の軍人を護衛につけて椅子に座るギルバード准将の姿があった。
俺たちはギルバード准将を睨みつけた。
「そう敵対しないでくれたまえ。我々も争いを好むわけではない。もっとも、今はちょっとした戦時下のような状態だがね。」
そう言うと、ギルバード准将はおもむろに立ち上がった。
その軍服の胸には複数の勲章が輝いていた。
「すでに武装した我々の勢力が、王宮も、国軍司令部も、騎士団事務所も制圧した。ソルティア王国中枢はすでに我々の支配下にある。まもなく国王から退位の声明が発表されるだろう。」
ギルバード准将は壁に貼られた王都の地図に視線を向けながら言った。
「あなた.......。正気ですの?こんなことして、何をなさりたいのですか?」
アリアが声を震わせながらギルバードに聞いていた。
恐怖ではなく、怒りに震えた声だった。
「我々国軍は、これまでいつも手足を縛られてきた。予算は年々縮小され、部隊規模も装備品も、近隣諸国とのバランスを考慮して自由に更改することも許されない。」
ギルバード准将は語り始めた。
「十五年前、私はある演習を率いていた。シラニア公国との国境での、国境警備に向けた演習だった。むろん、演習の実施はシラニア公国側にも通達していたよ。だが、演習開始二時間前に突然、演習場付近の森林から魔物が現れたのだ。我々は演習のための装備品を流用して魔物を迎撃した。だが、シラニア公国は我々による奇襲攻撃が始まったととらえたようだ。」
ギルバード准将は立ったまま俺たちに語り続けていた。
「シラニア公国側からも国境沿いに大規模な部隊が派遣されてきた。わが国軍も軍勢を増強した。国境を境ににらみ合う状態が半年ほど続いたよ。」
「だが、我々に下った命令は先方の指揮官に謝罪したうえで撤収せよ、というものだった。しかも国境沿いに多額の予算をかけて作った演習場を放棄することにもなった。そのうえ、わが隊は軽率な行動で国を危機に追いやったということで、軍法会議に掛けられたのだ。あの魔物自体、もしかしたらシラニア公国側が放ったものだったかもしれないのに..........。」
ギルバード准将の声色は後半から悔しさを噛みしめるようなものに変わっていった。
「軍法会議で、部下たちは自分の命令と判断に従っただけだと、私は主張した。彼らの輝かしい未来を閉ざすことだけは避けられた。だが、私は左遷されたよ。今の階級まで登ってこられたのも、当時の部下たちが出世して、私を後押ししてくれたからだ。だから今度は私が、彼らに軍人としての正当な未来を用意してやらねばならないのだ。」
ギルバード准将はそこまで言って、俺の方を見た。
「レオン君.........。君に会ったらぜひ聞きたいことがあったんだ。聞いてもいいかね?」
ギルバード准将はどこか俺に親近感を感じているかのような目で俺を見つめていた。
第六話もお読みいただき、ありがとうございました。
三連休に合わせた四話ずつの一挙公開も二日目に入りました。
読者の皆様には、ぜひ楽しんでいただけたらと思います。
次回は2026年10月11日12時10分の公開予定です。
この物語が面白いと思っていただけたら、高評価・感想およびブックマーク等で応援していただけたらと思います。




