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シーズンⅤ 第三話 経過報告

 こんにちは。作者の「野生の書生」です。

 前回はレオンが第二の学生生活(仮)をスタートする場面まで書きました。

 今回はその続きからです。


 本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。

 主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。


 この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。

 潜入捜査が始まって一か月。俺たちは王宮の”特捜部”に経過報告のために集まっていた。


 まずはエレナの報告だ。

 「ここ一か月は、目に付くところでは国軍関係者の出入りは見られませんでした。ただし、一部の研究に関して突然論文の公表を取り下げられたものがありました。内容は魔石からの魔力の抽出と濃縮に関する研究ですが、国軍との関連は不明です。」


 次にカイルの報告だ。

 「門で警備している限り、こちらも軍関係者の接触は見られませんでした。エリオットが接触していたというローブの男ですが、それに該当するものも見当たりませんでした。」


 次にジークフリートの報告だ。

 「構内を調べたけど、施設の図面と変わりはなかった。だけど、地下研究室には俺の権限じゃ立ち入れない。何かあるとすればそこだとは思うが、あそこはトップシークレットだ。」


 次にアリアの報告だ。

 「研究室の会計資料を確認しましたが、不審な点は見当たりませんでした。国防関係の研究は公式にも行われていますので、その詳細までは確認できませんでした。」


 アリアはそこでいったん言葉を区切った。


 「ただし、気になることが判明しました。以前、レオン様に地下道の探索を依頼した際に確認した資料なんですが..........。」


 「続けてくれ。」

 アレクサンドルが続きを促す。


 「はい。レオン様が非常口を発見したのを機に、王都環境整備開発公団の資料を洗いなおしました。その時の資料をこの前改めて確認してみましたら、他の地下道の建設が凍結された後も、一本だけ工事が続いていた路線がありました。」

 アリアは続けて言った。


 「その路線も最終的には凍結されましたが、最終到達点が研究所のすぐ近くになっているのです。」



 「地下道の建設が凍結されたのはいつだ?」

 アレクサンドルの顔色が変わった。


 「先代の王が計画して、建設が進められていましたが五年ほど前に財政悪化が原因で.......。」

 アリアはそこで言葉を切った。

 何かに思い至ったようだ。


 俺もその可能性に気づいた。

 道路建設に充てられるはずだった国家予算。

 それが何らかの形で国軍に抜かれていた。

 それが原因で道路建設を凍結せざるを得なくなった。

 だが、それでも建設を続けていた道路があった。

 それも研究所の地下にまで——。




 「レオン様とクロエ様はいかがでしたかな?」

 アレクサンドルはこちらに話を振った。


 俺とクロエは顔を見合わせた。

 俺たちも、最初は潜入捜査ということで校内の各所を見て回ったり、生徒間の会話に耳を澄ませたりもしていた。

 だが、任務を忘れていたわけではないものの、途中から学園生活に溶け込んでしまっていたのだ。


 「いえ.......。俺たちから報告することはなにも。」

 少々、決まりがわるい恰好となってしまった。


 「ふむ......。まあ学生という立場上あまり派手に立ち回るわけにもいかんからな。」

 アレクサンドルはおおよそ察していたかのような口調でいった。


 「地下道の件は特捜部も調べてみる。当時の会計資料を洗いなおさせよう。」

 アレクサンドルはそう言うと、アリアから地下道の図面を受け取った。


 アレクサンドルはしばらくそれを眺めていたが、不意にこちらを向いて言った。


 「レオン様とクロエ様にお願いしたいことがあるのですが、よろしいですかな。」


   ◇


 二日後の夜、俺とクロエはアレクサンドルの依頼を受け、学生寮を抜け出していた。


 アレクサンドルからの依頼。

 ——地下道の探索を行うためだ。


 カイルやジークフリートは地上から研究所の様子を見張っている。

 地上で何か動きがあれば、研究所内でボヤ騒動を起こして、狼煙代わりに地下道入口で待機する特捜部に知らせるという。

 少々乱暴な方法だが、この潜入捜査で満足に役割を果たせていない俺たちにとっては、ようやく役立てる局面が回ってきたというところだ。


 この地下道も、やはり鼻が曲がりそうなほどニオイが立ち込めている。

 俺はむせかえるように息をして、クロエの方を見た。


 「クロエ、大丈夫か。」


 「私は平気..........。行きましょう。」


 俺たちは水音を立てながら地下道を歩き始めた。


 「ねえ、レオン。」

 クロエが小声で話しかけてきた。


 俺は歩きながらクロエの方を向いた。


 「前にもこうやって一緒に地下道を歩いたよね。本当に、あれからいろんなことがあったなぁ。」

 クロエは懐かしい思い出を振り返るように言った。


 「思い出は帰ってからゆっくり振り返ろう。」

 ——死亡フラグになりそうだから。

 俺は心の中で付け足した。


 「......そうだね。これからもいろんなことが待っているんだもんね。」

 クロエはそう言うと静かに歩き始めた。


 今回の目的は、探索だ。

 敵のせん滅ではない。

 何かあれば引き返すだけだ——。


 そう思っていたら、目の前が行き止まりになった。

 どうやら建設されたのはここまでらしい。

 天井からは地下水がぽつぽつと垂れてきて、断続的に水音を発していた。


 俺はレンガ造りの壁面に目を凝らす。


 「レオン........これ。」

 クロエが壁の一角を指さした。


 そこには周囲の壁とは明らかに色味が違う、最近塗り固めたかのような真新しい箇所が一か所だけ存在していた。


 第三話もお読みいただきありがとうございました。


 ストーリーのテンポ上、話を一か月進めてしまいましたが、潜入捜査中にそれぞれの立場でいろいろな出来事があったかと思います。

 特にレオンとクロエは学生生活ということで、授業や学食での会話など、書いてみたいイベントはあったのですが、完結後に番外編として書くかもしれません。


 さて次回は、2026年10月10日17時10分公開予定です。


この物語が面白いと思っていただけたら、是非、高評価・ブックマーク・感想等で応援をよろしくお願いいたします。

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