シーズンⅤ 第二話 新生活
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
前回はレオンのパーティへの潜入調査依頼を書きました。
今回はその続きからです。
本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。
主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。
この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
王室から帰宅した俺は、公爵家が用意して連泊していた宿を引き払う準備に追われていた。
俺は明日から王立魔導大学の学生という立場になり、学生寮に入ることになったのだから仕方ない。
——そのあとは髪を切りに行く。
そもそも俺は王都内で顔と名前がある程度知れているから潜入調査には向かない。
そういう意味では大量にいる学生として紛れ込ませるという特捜部の判断は一理あった。
ただ、さすがに俺がいるとバレれば連鎖的に他のパーティメンバーの潜入も発覚するかもしれないから、俺はできる限りの変装をすることとなった。
翌日、宿の前で俺を迎えてくれたクロエは俺の姿を見てケラケラと笑っていた。
髪は短く刈り込み、最後の抵抗で眼鏡をかけてみたのだが、やっぱり不自然だったか。
「おかしくはないよ。ちょっと新鮮だっただけ。」
クロエはそう言っていたが、フォローするにはもう遅い。
◇
校門に近づくと、警備員——カイルが俺たちに向かって挨拶してきた。
俺は他の学生たちと変わらないように会釈をして、校内に足を踏み入れた。
クロエと並んで歩いていると、今度は清掃員から声を掛けられた。
「よぉ、若いの!青春だねぇ!」
清掃員——もとい、ジークフリートのからかいを無視して進むと、清掃員はちぇー、といった様子で掃除に戻っていった。
俺たちは一般教養のカリキュラムに沿った授業を受講することになっていて、一限目の教室に足を踏み入れた。
見慣れない二人組の登場に学生たちの間でざわざわとざわめきが起こった。
この感覚。——やっぱり苦手だ。
俺は、教室で注目の視線を集めるシチュエーションを前に、久々に背中に冷や汗が垂れるのを感じた。
だが、よく見ると俺よりも注目を集めているのはクロエだった。
「おい。あんなかわいい子いたか?」
「編入生かな?後で声かけようぜ。」
男子生徒の声が耳に入ってくる。
で、その声に交じって
「横にいる男、なんなんだよ。」
「あいつもあまり見ない顔だけど、気に入らねえ。」
俺への敵意むき出しの声が聞こえてくる。
前世のような粘着質な”悪意”ではないが、やはり気分がいいものではない。
「レオン.......。大丈夫?」
クロエが俺の顔色を窺うように上目遣いでこちらを見る。
——やばい、この状況でそれは。
予想通り、場の空気が凍り、男子の視線が完全に敵意に染まるのを感じ取った。
俺の第二の学生生活が無事終了したことをこの瞬間悟った。
◇
一限目の授業が終わると、クロエは男子たちに容赦なく声を掛けられまくっていた。
で、俺はというと誰からも声を掛けられることもなく、ただただ休憩時間を空費していた。
俺の目的は調査であって、学生生活のやり直しではない。
分かってはいるのだが、前世と変わらない対応しかできない自分をどこか不甲斐なく思っていた。
「やあ。編入生のレオン君だよね?」
突然後ろから声を掛けられた。
振り返ると俺と同じくらいの背丈をした、さわやかな雰囲気を纏った男子が背後に立っていた。
「僕の名前はルーク。気軽に呼んでくれていいよ。これからよろしく。」
そう言って笑っていた。
「それにしても、初日から災難だったね、君。」
ルークはクロエの方を見て、言った。
「そうそう。あんなかわいい子、初日から連れていたら、全男子敵に回すぜ。」
横からもう一人、小柄な男子が現れた。
「あー。こっちはヴァンっていって、僕の友人。ひがんでるだけだから気にしなくていいよ。」
ルークはそう紹介していた。
「ひがんでねーよ!」
ヴァンはルークに返していた。
——俺の目的は学生生活のやり直しではない。だけど、俺はルミナの言葉を思い出していた。
『あなたは居場所がなかったんじゃない。』
「レオンっていうんだ。これからよろしく。」
俺は、ルークとヴァンと握手をしていた。
第二話も読んでいただき、ありがとうございました。
今日から、クライマックスということで一日四回の更新で物語を完結させます。
次回は2026年10月10日12時10分に公開します。
作者のデビュー作完結に向けて、高評価・感想・ブックマーク等で応援していただけたら幸いです。




