シーズンⅣ 第十五話 奇跡
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
前回は海蛇を倒したものの、飛散した毒液にクロエが倒れてしまうところまでを書きました。
今回はその続きからです。
本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。
主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。
この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
「クロエ!しっかりしろ!」
俺はクロエを抱き起した。
エレナやアリア達も駆け寄ってきたが、視界に入ったその光景に目を見張っていた。
飛散した蛇の毒液から俺を庇ったクロエは、その顔に大きな火傷を負っていたのだ。
クロエの顔右半分は紫色に変色し、片目は視力を失っているようだった。
アリアが慌てて、木箱を取り出した。
アソシラス村で村長から託された秘薬だ。
——そうだ、俺たちにはそれがあったんだ。
カイルやジークフリートも駆け寄ってきたが、クロエにこの薬を使うことに誰からも異議は出なかった。
俺はアリアから薬の瓶を受け取ると、クロエの顔にそれを使おうとした。
だが、クロエの右手が持ち上がると、瓶を持つ俺の手を押しとどめた。
「だめ.......。それは、レオンが自分の左腕に使って.........。」
クロエが消え入りそうな声で言う。
「何言ってるんだ!俺の腕はほっとけばいずれ治る!だけどクロエの顔は——。」
俺は必死の形相で叫んでいた。
クロエはつぶれていないほうの目から涙を流して続けた。
「私...........知っているよ。レオンが時々、私の顔を見て、なにかに苦しんでいること。理由はわからないけど、あまりいい思い出のない人の顔と........私の顔が似ているのかなって、ずっと思ってた。」
俺はまた一つ心臓が跳ね上がった。クロエは気付いていたのだ。
「だから........。この顔が変わって、もうレオンが苦しまなくて済むのなら........。私は.......それでいいから.........。」
そう言ってクロエは涙を流しながら微笑んでいた。
俺は声を出さずに涙を流していた。
俺は、ずっと過去にとらわれていた。
そのせいで、目の前の大切な人にずっとつらい思いをさせていたんだ。
——もう、言葉は必要なかった。
俺はクロエを抱えなおすと、薬の瓶を開けて、クロエの顔に使用した。
クロエの顔の火傷は瞬く間に回復していき、片目は閉じたままだったが、しばらくすれば回復するように思えた。
「..........どうして。」
クロエは小さな声でつぶやいた。
「その顔は、クロエの顔だ。何度も俺を窮地から救ってくれた、大切な仲間の顔だ。その顔が悲しみに染まるのなら、俺は何度だって笑顔に戻して見せる。」
俺はクロエを抱き寄せて、そう言っていた。
「ヒュー。やるねぇ!レオン!」
ジークフリートが拍手を送ってきた。
我に返った俺は、急に恥ずかしくなり、クロエの顔から視線をそらした。
耳まで赤くなっていることが自分でも分かったので、クロエの体をそっと離して立ち上がると、体ごと向きを変えて言った。
「ま、まぁ、これからエリオットたちの後始末だ!クロエの体が戻ったのなら早く行くぞ!」
アリアは「あらあら。」という様子で俺の方を見てくる。
ジークフリートはニヤニヤとそっぽを向いた俺の背中を見ていた。
カイルはどこかすがすがしい顔をして、俺たちの方を見ていた。
エレナもクロエの回復を喜んでいたが、俺が背中を向けると、クロエの肩に手を置いて、
「私.............。負けませんから。」
クロエの耳に顔を近づけて、そうつぶやいていた。
クロエは驚いてエレナの方を振り返ったが、その顔は敵意ではなく、純粋に仲間を想う優しさに満ちていた。
明日、エリオットの父親がこの島に来る。
俺たちはそれまでにやるべきことを終わらせとかなければならないのだ。
第十五話もお読みいただきありがとうございました。
このエピソードは、このシーズンの山場として持ってきたいシーンだったので無事に執筆することができて良かったです。
次回(シーズンⅣ 最終話)は2026年10月8日7時10分公開予定です。
シーズンⅣ(クロエ編)の最終話に是非、最後までお付き合いいただけたらと思います!




