シーズンⅣ 第十四話 双頭
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
前回は海蛇の魔物が出現したところまで書きました。
今回はその続きからです。
本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。
主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。
この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
島の断崖に面した海岸線で、俺たちは双頭の海蛇と対峙していた。
双頭の蛇は、その巨大な頭を何度も俺たちのいる方に向けて突進させてきた。
俺たちはそれを何とか躱し続けていた。
だが一度蛇が岩に嚙みつき、その岩が砕けたのを見た時は肝が冷えた。
あいつの脅威は毒だけじゃない。
もしも、あの力で嚙みつかれれば骨も粉砕されかねない。
エレナが氷結魔法を試みたが、一時的に動きを止めるだけで、決まり手にはならなかった。
カイルが突っ込んできた海蛇の首をはねようと剣をふるう。
だが海蛇の外皮は予想以上に厚く、一瞬苦悶の表情を見せただけで、カイルの剣を振りほどくと、再びその威容を俺たちに見せつけてきた。
俺の火魔法も、おそらくあの外皮を貫通するのは難しいだろう。しかも海中に潜られては、あの火球をぶつけたとしても、海水を多少沸騰させるだけで効果は薄いと思われた。
その時、俺は思いついた。
「クロエ、俺の背後から水魔法を放てるか?あいつの口に向かって。」
「うん。たぶんできると思うけど.......。」
「分かった。頼む。」
俺はそういうと、クロエの前に立った。
俺とクロエの間に防御魔法の盾を張る。
海蛇の頭のうち一つが俺に向かって突進してきた。
その口が大きく開かれた。
——今だ。
クロエの水魔法による水流が、蛇の口の中に撃ち込まれた。
俺はその水流に向けて火魔法を合わせる。
沸騰した水が蛇の口の中に注がれ始めて、蛇は首を振り上げて悶絶し始めた。
ここだ。
蛇の首筋に威力を高めた火魔法を当てる。
その瞬間、蛇の首がはじけ飛んだ。
——水蒸気爆発だ。
クロエも、アリアも、エレナも呆気にとらわれてその光景を見ていた。
カイルとジークフリートは勝機が見えたことに目を輝かせていた。
だが、蛇の頭はもう一つ残っている。
残った一つの頭が、理性を失ったように俺の方に突進してきた。
これは好都合だ。
クロエが再び、口に向けて水魔法を放つ。
俺がそこに火魔法を合わせる。
蛇は再び苦悶の表情を見せた。
だが今度は口を大きく開いて、高温の水蒸気を口外に逃がしていた。
蛇は大きくのたうち回っている。
蛇の口から放出された蒸気が、俺の左腕に当たった瞬間、激痛が走った。
蒸気の高温に当てられたからではない。
蛇の口から放たれた蒸気は、口内に宿した毒を纏って、俺の腕に損傷を負わせていたのだ。
「レオンっ!」
クロエの声が背後に響く。
「大丈夫だ.......。まだやれる!」
俺は体内の魔力の残りをすべて使い果たす覚悟で、蛇の首筋に火魔法の輪を作り、締め上げた。
体の内側と外側から同時に焼かれた蛇は、ついに力尽きたようで、その巨体をこちらに向けて倒してきた。
「離れろ!」
俺が叫ぶと、全員倒れてくる巨体から逃れる格好で、海岸線から離れて行った。
蛇の巨体が地面に崩れ落ちる。
轟音がしたその瞬間、蛇の方を振り向いてみると、紫色の液体が飛散していることに気づいた。
——蛇の体液?いや、毒液か?
そして、それは今や俺の眼前に迫ってきていた。
俺は、防御魔法を張ろうとしたが間に合わないことは明白だった。
俺は思わず目を閉じた。
——だが、しばらくしても俺の体に激痛が走ることはなかった。
俺はおそるおそる目を開けた。
そして、自分の目の前に広がる光景に心臓が大きく跳ね上がった。
俺の足元には、顔を押さえてうずくまるクロエの姿があったのだ。
第十四話も読んでいただき、ありがとうございました。
話数が増えたシーズンⅣですが、いよいよクライマックスが近づいてきました。
次回は2026年10月7日21時10分公開予定です。




