シーズンⅣ 第十三話 発現
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
前回はレオンがエリオットの手勢に捕まるところまでを書きました。
今回はその続きからです。
本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。
主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。
この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
「で、ここには一人で来たのかな?」
エリオットが俺の髪をつかんでニヤニヤしながら聞いてきた。
十分ほど前、エリオットが牢屋の前に来ると、俺の姿を見つけた。
俺が王都で名の知れた英雄だと知ると、ここぞとばかりにいたぶってみたくなったのか、先ほどからの尋問のやり方には嗜虐的なものが感じられた。
「ああ。ここには俺一人で来た。」
俺はエリオットを睨みながら答えた。もちろん信じてもらえるわけがない。
エリオットは俺を乱暴に牢の床にたたきつけた。
「レオンっ!」
「おい、大丈夫か!」
クロエとマックスの声が響く。
大丈夫だ。あと少しで——。
「なかなか面白そうなやつだ。英雄を捕えた物語として、俺の歴史の一ページに———」
エリオットはそこで言葉を切った。
いや、話せなくなったのだ。
「エリオット様?どうされ——。」
周囲にいたエリオットの部下たちも同様だった。
奴らは次々とひざを折り、その場に倒れこんでいった。
——作戦成功。
この島に上陸したあの日、俺たちが最初に向かったのはこの島の真水タンクだった。
そこに俺たちはアソシラス村の特産品——清流の水を流し込んでおいたのだ。
エレナの話では薬効が出るまでに時間がかかると言っていたが、ここでの飲み水はあのタンクの水だけだ。
高濃度の薬品を含んだ川の水を摂取したエリオットたちは立ちどころに麻痺毒に侵されてくれた。
無論、村人たちもその水を飲むことになるが、一度摂取した薬には大抵耐性が付くものだ。
しかもエリオットが水を独占してくれたおかげで、村人に被害を出すことなく、エリオットとその部下たちのみ無力化することができたわけだ。
まあ、時間稼ぎと効果のほどを確認するために、俺が単独で捕まり役になったわけだが。
「貴様——!」
エリオットが呻きながら手を伸ばしてきた。
だが、もうその手が俺の体に届くことはない。
「おっと、そこまでだ。派遣期間はおしまいだぜ。お坊ちゃん。」
ジークフリートが剣を抜いてエリオットたちの背後に立っていた。
カイルたちも、そのあとに続いてきた。
「観念しろ、エリオット。明日にはお前の親父さんがこの島に来る。自分がこれまでしてきたことに、しっかりと向き合うんだな。」
俺はエリオットに言った。
「カイルとジークフリートは麻痺したエリオットたちの拘束を手伝ってくれ。エレナとアリアは捕まった村人たちの解放だ。」
「了解!」
全員が早速動き出す。
「まだだ.........。まだ俺は終わっちゃいねぇ。こんなところで.......終わるわけにはいかねえんだ!」
エリオットはそう言うと、ポケットに突っ込んだ手を取り出した。
その手には何かの紙が握られていた。
——なんだ?
エリオットは震える手で紙に魔力を込めた。
紙が強烈な青い光を発していた。
その直後、背後で巨大な水しぶきが上がる音がした。
俺たちは音のした方を振り返る。
そこには夕焼けをバックに、双頭の龍——いや、海蛇のような魔物が海中から姿を現していた。
◇
「なんだ、あれは?」
俺は思わず、声に出してしまっていた。
「この要塞に封印されていた魔物だろう。軍が兵器として使役するつもりだったのかもしれん。」
カイルが答えた。
「気を付けて。たぶんあの魔物は強力な毒をもっているわ。」
エレナが氷結魔法の構えを見せながら言った。
俺の世界でも海蛇の中にはハブをも越える猛毒を持った種類がいた。
もはやエリオットの拘束どころではない。
薬効はまだしばらく続くだろうから、後回しにしても当面は大丈夫なはずだ。
「まって。私も戦う。」
クロエが声を掛けてきた。
「俺もだ。レオン。助太刀させてくれ。」
マックスも続いてきた。
「わかった。協力してくれ。」
俺はクロエとマックスの拘束を解いた。
クロエの拘束を解くとき、その両手に火傷があることに気づいて俺は息を呑んだ。
たぶん発煙筒を使ったときに負ったものだろう。
「クロエ..........。その手。」
「大丈夫!私の水魔法じゃあまり役に立てないかもしれないけど.......一緒に戦わせて!」
クロエはそう言うと笑顔を向けてきた。
この笑顔に俺は何回救われてきたのだろうか。
「わかった。クロエは俺と来てくれ。マックスは村人の警護を頼む。なるべく離れて戦うつもりだが、もしあの海蛇がそっちに行ったら対応してくれ。」
そういうと、俺はクロエと一緒に海蛇の方に向けて駆け出した。
「了解!」
マックスの返答が背中に聞こえてきた。
「ようやく一緒に戦えるな............。クロエ。」
離れていく二人の背中を見送った後、マックスは一人そうつぶやいていた。
第十三話もお読みいただきありがとうございました。
作者は釣りが趣味で、何度か「ダイナンウミヘビ」という海蛇を釣ったことがあります。
ただ、これは海蛇といっても、爬虫類ではなく魚類の仲間だそうで毒はないそうです。
そんなわけで、持って帰って美味しくいただきました。
小骨が多く皮に臭みがあるので、湯引きして、醤油と砂糖とみりんで炒めてそぼろ状にすると白身魚のうまみが感じられました。
※ 両親からはあんまり変なものばっかり食べるなと言われましたが。
さて、次回は2026年10月7日7時10分公開予定です。




