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シーズンⅣ 第十二話 上陸

 こんにちは。作者の「野生の書生」です。

 前回はレオン一行が港で商会の社長と会うところまでを書きました。

 今回はその続きです。


 本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。

 主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。


 この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。

 セレストロス商会社長の提案はこうだった。


 ひとつ、これから三日間セレストロス商会は島に手を出さない。

 ひとつ、レオン達に島に渡るための船を貸す。

 ——その交換条件として、これ以上誰も死なせないことを約束してほしい。


 つまりは島への船は用意するからエリオットを殺すな、という意味だ。

 俺たちだって、人を殺したいわけではない。

 だから社長の提案に即座に同意していた。


 ただ、社長は自分が用意した大型船を出航させようとしたから、それは断った。

 人質を取られているようなこの状況では、俺たちの上陸を悟られた時点で、奴らがどう動くか分からない。

 そのため隠密に潜入できるよう、大型船に乗せられていた救命ボートを拝借することにした。



 カイルの風魔法を推進力に、日が落ちてから島に接近する。

 正面の桟橋には、エリオットが乗り付けたと思われる大型船があった。


 ——まずはあれが標的だ。


 エリオットたちを足止めするためとは言え、船そのものを派手に破壊すれば、隠密潜入も敵わない。


 だから、事故を装う。


 カイルが風魔法を船の横腹に当てて、船が傾いたタイミングで、俺が防御魔法の盾で船を岸壁に衝突させる。


 マストが風できしむ音がし、船体が岸壁にぶつかると、浸水が発生したのか喫水線が傾き始めた。


 ——これでいい。とりあえずは当面出航不能だ。


 俺たちはエリオットの船から離れて、島の裏側にまわり、崖に近いところから何とか上陸した。


   ◇


 「ですから......。ここに来るときに使った船は突風で岸壁に衝突してしまいまして.........。」

 エリオットの部下がしどろもどろで説明する。


 「ふざけるな。こんな奴隷用の島に俺がいつまでいなきゃいけないんだ!」

 エリオットは怒声をあげた。


 「ここでは本格的な修理は不可能です。三日後に食料の補給のために別の船が来ます。エリオット様はそれまで船の中で——。」


 「俺に沈みかけの船の中で過ごせというのか?」

 エリオットは部下を睨んだ。


 「いえ。そんなつもりは。なんでしたら、桟橋の近くに将校用の宿舎として使われていた建物があります。そこを使われてはいかがでしょうか。」


 「気に入らんが、仕方がない。奴隷の分の食料と水を減らしてこっちに回せ。」

 エリオットは歩き出した。


 エリオットの部下は気が重い報告が済んで、ほっと息を吐きだした。


   ◇


 闇に紛れて上陸した俺たちはとりあえず、最初の仕掛けを済ました。

 

 「エレナ、これで大丈夫なのか?」

 俺は聞いてみた。


 「ええ。たぶんね。」

 エレナは答える。


 「まあ、もしダメだったらその時はその時だろう。」

 ジークフリートが言う。


 俺たちは物陰に身を潜めてその時が来るのを待った。

   

   ◇


 「おい。これなんだ?」

 夜が明けて、船の修理に当たっていた船員がつぶやいた。


 その視線の先には、船の右舷側に設けられた手すりや救命ボートが不自然に壊れている光景があった。

 防御魔法で船を岸壁に向けて押した痕跡なわけだが、それは船の整備に携わってきた人間であれば一発で分かる不自然さだった。


 「航行には影響ないと思うが.......。何があったらこんな壊れ方するんだ?」

 船員たちはつぶやきあっていた。


 「何の騒ぎだ?」

 エリオットが背後から声を掛ける。


 「あ、いえ........。船に少々不自然なところがありまして。ですが、王都のドックに入れたら完全に修理できますので——。」

 船員は慌てて言った。


 エリオットは船の損傷は不服ではあったが、捨ておこうと思った。

 だが、エリオットの部下の一人が懸念を抱き、エリオットに耳打ちした。

 ——エリオットの顔色は不安の色に染まっていった。


 「島の中を徹底的に調べろ。ネズミが紛れ込んでいるかもしれん。」


 エリオットは部下たちに命じた。


   ◇


 太陽がすっかり高い位置にまで来ると、島の中はひっきりなしに足音が響くようになっていた。


 潜入開始二日目にして、俺たちはエリオットが放った捜索隊から身を隠すこととなった。


 「あのバカ息子.......。小心者のくせに勘はいいからタチが悪い。」

 ジークフリートは吐き捨てるように言った。

 

 だが、捜索隊がひっきりなしに動き回るこの状況は、敵の人数や配置を把握するうえでは有利でもある。


 ——そろそろ頃合いだろう。

 

 「これから俺が仕掛ける。お前らは引き続き隠れててくれ。」

 俺はそう言った。


 「任せたぞ。大将。」

 ジークフリートはニカッっと笑い、親指を立てて見せた。


   ◇


 夕暮れの気配が感じられるようになったころ、将校用の宿舎跡にエリオットの部下が駆け込んでいった。


 「報告します!島の北側の森で煙が出ています!」 


 「なんだ。すぐに確認に向かわせろ。消火が必要なのか?」

 エリオットが紅茶をすすりながら答える。


 「いえ、火はほとんど鎮火しているようで、延焼の心配はなさそうです。それより、現場で一人不審人物を捕えました。」


 「それを先に言え。例のネズミか?」


 「わかりませんが、一応奴隷たちと一緒に監禁しておきます。」


 「それでいい。後で俺も会おう。」

 エリオットは再び席に着くと紅茶を口にしていた。


   ◇


 鉄格子が開く堅い音が響いたのち、一人の男が牢屋の中に突き飛ばされるようにして転がり込んできた。


 「レオン..........?」

 新しく牢に入れられた男の顔を見て、クロエは言った。


 「お前も捕まっちまったのかよ。」

 マックスが続けた。


 「大丈夫だ。問題ない。」

 俺は自信をもって答えていた。


 クロエの目にはレオンが捕まったことに対するショックよりも、レオンが自分のところまで来てくれたことに対する希望の光が宿っていた。


 その様子を見ていたマックスは、やれやれといった様子で一歩後ろに下がっていた。


 第十二話も読んでいいただきありがとうございました。

 エリオットの人物像を設定するとき、小物感満載でいこうかと思いましたが、小心者ゆえに勘が働くという設定にしてみました。

 悪役を書くのも楽しいですが、なかなか難しいです........。


 次回は2026年10月6日21時10分公開予定です。


 この物語が面白いとおもっていただけたら、高評価・感想・ブックマーク等お願いできればと思います。

 

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