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シーズンⅣ 第八話 罪

 こんにちは。作者の「野生の書生」です。

 前回はレオンの火魔法が解放される話を書きました。

 今回はその続きからです。


 本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。

 主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。


 この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。

 俺の火魔法の火球が、西の門付近を消し飛ばした後、そこにはすり鉢状の陥没ができていた。


 その陥没の中、うずくまって震えている人が二、三人。

 屈強な男たちに抱えられて、荷馬車の方に連行されようとしていた村人だ。

 

 俺は火球を落とす決断をしたとき、下にちょうど村人を連行してきた輩がいることに気づいた。

 だから、村人にはできる限りの防御魔法を施した。

 どうやら、彼らは無事のようだ。


 「クロエ........。エレナ.......。カイル.......。後は頼んだ。」

 俺は魔力を大量消費した疲労により、いや、理由は他にもあるのだが、立っていることができなかった。


 膝をついた俺にみんな一瞬、動きを止めたが各々の役割を果たし始めた。


 カイルは得意の風魔法で、火球の攻撃範囲外に残った残敵の掃討を始めた。

 

 クロエとエレナはお決まりの水魔法と氷結魔法の組み合わせで、荷馬車が逃走するのを封じた。


   ◇


 「おい......。どうなっている。なんで、奴隷狩りが進んでいないんだ!」

 荷馬車から少し離れた雑木林の中から様子を見に来たエリオットは現場指揮官に詰め寄っていた。


 「申し訳ありません.......。先ほどの火球で、我々の手勢がかなり失われまして......。」


 エリオットは焦った。

 村の中にまだ動ける奴らがいたことも計算外だったが、こちらの手勢が大幅に減ったのはもっと予定外だった。

 これで村人を連れ出す作業にはさらに多くの時間がかかることになる。

 だが、村に流し込んだ麻痺毒の効力は長くは続かない。

 夜が明けるころには、自警団の連中が回復して反撃してくるかもしれない。


 「確保した奴隷は何人いる?」

 エリオットは聞いた。


 「は。百五十人ほどは既に積み込みを終えましたが.........。」


 大赤字だ。エリオットは唇をかんだ。だが、打つ手はある。


 「引き上げるぞ。ただし........利益を確保したうえでだ。」

 

 「は..........?」

 現場指揮官はエリオットに聞き返した。


 が、それ以上質問を重ねることはできなかった。

 現場指揮官の胸にはナイフが突き刺さり、次の瞬間には絶命していた。


 ”売上”が下がるのならば、”費用”を抑えればいい。

 「セレストロス商会次期頭首をなめるなよ...........。」

 

 雑木林の中から、エリオットは門を睨んだ。


   ◇


 カイルたちが戦っている傍ら、俺は膝をついて、満足に動くことができなかった。


 魔力の大量消費だけが原因ではない。


 火球をぶつけたあの瞬間。

 極限まで研ぎ澄まされていた俺の感覚は、灼熱と衝撃波に命を奪われていく、奴らの阿鼻叫喚を捕えていた。

 

 『この力は決して誰かの居場所を奪うためには使わないと誓います。』

 あの日、ルミナに誓ったあの言葉。

 嘘を言ったつもりはない。


 ——だが、結果的に俺は彼らの命を、居場所をこの手で奪ってしまったのだ。

 理不尽な暴力から居場所を守ると決めたのに。

 あいつらにだって帰りたい場所が、会いたい人がいたかもしれないのに。


 この感覚が、体内の魔力不足と相まって、俺の体を地面に縛り付けていたのだ。 

 



 ——現場の空気が変わったのはその瞬間だった。


 奴隷狩りをしていた一部の作業員が、踵を返して門に向かって走りだしたのだ。

 その手には、最後の意地汚さか、各々村人や奪った家財が抱えられていた。

 

 俺は周囲を見回すと、門の外から緑色の光が空に向かって放たれていることに気づいた。

 エリオット側が用意した”狼煙”だった。

 

 ——まさか撤退するのか?

 だが、荷馬車はすでにクロエとエレナによって足止めされている。

 別動隊がいるのか?



 「お父さん!お母さん!」

 クロエの叫び声が聞こえてきた。


 俺は門の方に視線を向けた。そこには門の外に向けて走っていく男が二人。

 その腕にはそれぞれ、クロエの両親が抱えられていた。


 俺は再度、魔法を放とうとした。

 だが、伸ばした腕からは火も、煙も、盾も出現しなかった。


 

 その時、門の外にある雑木林から轟音がした。

 俺の世界では毎日のように耳にしたが、こちらの世界に来てからは耳にしなかった音。

 ——エンジン音だ。

 

 雑木林から複数の自動車のようなものが躍り出てきて、俺たちはその光景を前にして呆気に取られていた。

 第八話も読んでいただきありがとうございました。

 レオンの火魔法の解放に当たって、作者が悩んだところがレオンに明確に十字架を負わせる行為をさせるか否かということでした。

 あいまいにして書くこともできたでしょうが、それでは物語全体が”見たくないものは見ない”作品になってしまうと思い、あえて命を奪った事実に向き合わせる展開にしました。

 重くなってしまってすみません。


 次回は、2026年10月4日21時10分に公開予定です。


☆今回の話で、シーズン1のプロローグから数えて50話目になります。

節目として、評価・感想・ブックマーク等いただけたら、作者も嬉しいのでよろしくお願いします。

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