シーズンⅣ 第六話 破綻
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
前回はジークフリートによる哨戒活動を書かせていただきました。
今回はその続きからです。
本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。
主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。
この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
団員の一人を抱えたまま、ジークフリートは森を全力疾走していた。
敵の姿を見た時に、二人を伝令として分離したが、今に至るまでに赤い光を見ていない。
——おそらくは。
ジークフリートは森を出た。森に入るときに止めた馬車がそのままになっていた。
やはり、伝令二人は戻ってきていない。
ジークフリートは森の方を振り返る。
——ここで魔石の光を放てば、敵がここに集まってくるかもしれない。
自分は大丈夫だが、先に分かれてこの森のどこかにいるであろう、あの二人は。
——だが、今は村の安全が最優先だ。
ジークフリートは懐から魔石を取り出すと、術式を発動させた。
暗闇の森の中、闇夜を裂く赤い光が天に向けて伸びて行った。
◇
北の森林から発した赤い光は俺の目にもはっきりととらえられた。
"異常発生"
しかも、あのあたりはジークフリートが哨戒していたエリアだ。
俺はクロエと目を合わすと、合図の火球を放つことにした。
ジークフリートの光もほとんどの村人に届いただろうが、念のためだ。
先ほどまで夜の静寂に包まれていたアソシラス村が昼間のように明るく照らし出された。
が、俺はそこで異常に気付いた。静寂が過ぎている。
昼間、この火球を見た村人たちは驚きの声を上げていた。
だが、ただでさえ警戒態勢中のはずなのに、俺の火球を受けても物音ひとつ立つ気配がない。
クロエもエレナもそれに気づいたらしく、周囲を見回す。
俺は火球に照らされた火の見櫓に目を凝らして、息を呑んだ。
先ほどまで二人以上で警戒に当たっていた櫓の上が無人になっているのだ。
それも目に付くところのすべての櫓が。
「レオン殿!」
カイルの声が暗闇の中から響いてきた。
「カイル、何かあったのか?」
俺は聞いた。
「村役場の人間が次々と倒れて........。一緒に警備にあたっていた自警団の人たちもだ。」
カイルが話した直後、西の門付近が急激に明るくなった。
魔石による赤い光ではない。
複数の松明がもたらす、火の手による明るさ。
奴隷狩りの部隊が姿を現したのだ。
「お父さん!お母さん!」
クロエが悲痛な声をあげた。
クロエの実家があるのはまさに西の門付近であった。
◇
用意していた馬車に乗り込み、俺とクロエとエレナとカイルは西を目指していた。
それにしても、一体何が起こったんだ?
道中で何人も倒れている村人を見かけたが、彼らは全員息があり、一様に体が動かないことを訴えていた。
救出したいのは山々だったが、今は侵攻してくる奴隷狩りの部隊を止めるほうが先だ。
「おそらく、麻痺毒の類だと思うわ。それも遅効性のね。たぶん奴らは数日前からこの村の生活水、つまりあの清流に村の外から毒を流し込んでいたのよ。」
エレナが言った。
俺も同感だ。
『湧き水は飲めるとは限らない。』
ルミナに最初に教わった、この世界でのサバイバル術。どうしてその可能性に気づけなかった。
俺があの場で、その可能性に気づいて清流に鑑定魔法を試していれば........。
この村を救い損ねたのは、俺だ。
俺は自分の顔の前に両手を組み、強く握った。
祈っているわけではない。ただただ、己の愚かさを悔いていたのだった。
不意にクロエが俺のその両手を自分の両手で包み込んできた。
俺はクロエの方に顔を向けた。
その顔は、優しく笑っていたのだ。
『レオンなら大丈夫だよ。』
ヒロとの特訓が失敗してしまったときの想定を口走った時に、かけてくれたあの言葉。
クロエは何も言わなかったが、その笑顔は俺にその時の言葉を思い出させていた。
——どうして。
今はクロエが一番つらい立場なはずなのに。どうしてそこまでしてくれるんだ。
俺は後悔することをやめて、視線を目の前の景色に戻した。
松明がまがまがしく照らす夜空を見据えて、俺はこの村を守る決意を新たにしていた。
第六話も読んでいただき、ありがとうございました。
クロエはレオンと一番長くバディを組んでいるので、過去エピソードが多く、作者としてもストーリーの幅が広がって楽しいです。
次回は2026年10月4日7時10分公開予定です。
評価・感想・ブックマーク等いただけたら、作者もモチベーションが高まりますので、なにとぞよろしくお願いします。




