シーズンⅣ 第五話 哨戒
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
前回はエリオットが少しだけ登場しました。
今回はその続きからです。
本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。
主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。
この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
夕暮れが迫ったアソシラス村の広場で、俺たちはアリアたちと合流した。
俺はクロエに、今日ぐらいは実家に泊まればいいと言ったが、クロエは自分の村は自分で守りたいと言って俺たちについて来ていた。
「私の......”居場所”だからね。」
クロエはそういうと、俺の方を向いて笑った。
『これからはお前の力で、お前の居場所を守って行け。』
——俺がヒロに言った言葉を、クロエは覚えていたようだった。
そうだ。俺はそのあとクロエと約束したんだ。クロエの居場所を一緒に守ると。
◇
村の自警団は第一から第四まで存在する。
村役場で話した警備計画通り、村に通じる四つの門を三交代制で警備する。
これに当たるのが、第一から第三自警団だ。
第四自警団は予備部隊として、村の中央部に集めさせた子供や高齢者の警護にあたるとともに、ジークフリートの発案で村の外周を哨戒することとなっていた。
俺は村を見回した。
村にはそこかしこに火の見櫓が立っている。
今はその各櫓の上に最低2名以上の消防団が立ち、監視に当たっている。
何かあれば赤い狼煙を上げることになっており、夜間は魔石で赤い光を放つことにしていた。
俺たちにも狼煙を上げるための魔道具——発煙筒のようなものが配られていたが、俺なら火魔法の火球でより広範囲に確実に知らせることができる。
村人にもそのことは共有しておいた。
火魔法の火球を試しに見せた時は、全員肝をつぶしたような顔をしていたが。
「それじゃあ俺は行ってくる。マックス、そっちは頼んだぞ。」
ジークフリートは第四自警団の一部を引き連れて哨戒に向かった。
「では私は子供たちの警護に向かう。レオン......。クロエのこと頼んだぞ。」
マックスは俺に向かっていった。
「分かっている。この村も、クロエも、奴らの好きにはさせやしない。」
俺はマックスにそう宣言した。
マックスは小さく笑うと、部下を連れて村の中心部に向かっていった。
俺とクロエとエレナはこの広場で待機することにした。
アリアとカイルは村役場の警備にあたることにした。
——さあ、エリオット。どこからくる?
俺は夕暮れの空を見上げて、そこに”敵”の顔があるかのように、彼方の地平を睨んでいた。
◇
村の門を出ると、ジークフリートと第四自警団の部隊は哨戒活動を開始していた。
ジークフリートは第四自警団から二十人ほど団員を借りると、四人一班の計五班に編成していた。
第一班は北の門を出て、東の門へ
第二班は東の門を出て、南の門へ
第三班は南の門を出て、西の門へ
第四班は西の門を出て、北の門に向かう編成だ。
そして、ジークフリート率いる第五班は、第一班とともに北の門をでて、反時計回りに西に向かった。
向かうはアソシラス村北方に広がる森林だ。
奴隷狩りを想定している以上、道が整備されているところから敵は来るものと思われるが、万一森林から近づかれては、直前までその動向をつかめない。
ジークフリートの第五班はそれを警戒しての措置だ。
森林に入って二時間。すでに夕日は落ち、辺りは暗闇が広がっていた。
互いが互いを見失わないように、適度な距離を保ち、森林を進む。
ジークフリートの視界の端に、光が映ったのはその瞬間だった。
ジークフリートは右手を上げる。一旦集まれの合図だ。
自警団が集まってくる。
ジークフリートは右手で光が見えた方を指し示した。
密集体制になり、互いの背後を庇いながら光の方に進んでいく。
その時、今度ははっきりと光が見えた。しかもその光に照らされて男が三人いるのが見て取れた。
”敵発見”
事前の取り決め通り、団員二人がここを離脱して村に知らせに向かう。
全員で取り押さえにかかって全滅しようものなら、危険を知らせるチャンスが不意になる。
あの二人は森を出たところで、魔石の赤い光で村に危険を知らせてくれるはずだ。
ジークフリートと残った団員一人は、三人の男の元に向かった。
一歩、一歩と近づいていく。
——まだこちらには気づいていない。
あと、五歩進んだら仕掛ける。
ジークフリートはハンドサインで示した。
一歩、二歩、三歩。
四歩、五歩。——今だ。
ジークフリートと団員は三人の男に斬りかかった。
左右にいた男はぎょっとした様子で振り返ったが、即座に剣を抜き、ジークフリート達の奇襲を受け止めた。
その間、真ん中にいた男は、暗闇でも分かるくらい血の気が引いた青い顔をしていたが、そのままどこかに走り去っていった。
——エリオットだ。
ジークフリートは直感していた。
エリオットの両脇にいた男たちを、団員とともにねじ伏せると、二人でエリオットの姿を追った。
だが、走り始めて五分もしないうちに、突然隣で一緒に走っていた団員が倒れた。
——おい、どうした?
ジークフリートは声には出さなかったが、追跡をいったんやめて、団員を抱え起こした。
意識はある。外傷はない。
だが、震えるその口は敵を警戒して声を出さないのではなく、声を出せない様子だった。
なんだ?なにが起きた。
エリオットが歩いてきた方に視線を向けてみる。
そこには沢があるのか、水の音がかすかにだが聞こえてきた。
その周辺。暗闇の中で小山のように盛り上がった何かがあった。
団員をいったん地面に寝かせると、そちらに向かった。
小山のように見えたのは、大量の樽だった。いずれも空である。
——やられた。
ジークフリートは事態を察すると、再び団員を抱えて、森を出るべく走り出していた。
さて、第五話もお読みいただきありがとうございました。
今回、ジークフリート発案による村の外周哨戒ですが、緊張感が出ることを意識して執筆したつもりでしたがいかがでしたでしょうか。作者もこのシーンは書いていて楽しかったです。
さて、次回は2026年10月3日21時10分公開予定です。
高評価・感想・ブックマーク等をいただければ、作者も喜びますので、よろしくお願いします。




