シーズンⅣ 第三話 清流
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
前回は自警団のマックスが登場しました。
今回はその続きからです。
本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。
主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。
この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
村役場を出た俺たちは、今はクロエの実家に向けて歩いていた。
アリアとカイルは今日以降の俺たちの宿の手配と、自警団との連絡体制について村長と話を詰めるために村役場に残っていた。
クロエがまだ実家に顔出しできていないということを知ると村長は、気を遣って俺たちを先に返してくれたのだった。
その結果、今は俺とエレナとジークフリートと、クロエとマックスの五人で歩いていた。
——マックスはどうやらクロエの幼馴染で、子供のころからよく一緒に遊んでいたらしい。
村長がこっそり教えてくれたが、クロエが半ば家出のような格好で村を出たと知ると、自警団の仕事を放棄して王都に追いかけにいこうとしたらしく、役場のみんなに止められたのだとか。
クロエとマックスは先ほどから俺たちの先を歩きながら、なにやら同郷の者同士の会話に花を咲かせていた。
「おい。ここにきてまさかのライバル出現か?レオン。」
ジークフリートは俺の側に来ると、ニヤニヤしながら耳打ちしてきた。
「あら。いいではありませんか。幼馴染として、積もる話もいろいろとあるのでしょう。」
エレナはそう言うと、俺の側に寄ってきた。
いつもなら、ここでクロエが反応してくるはずだったが、今日はそれがなかった。
「——じゃあ、私たちはどこかに美味しいものでも食べに行きましょうか。」
エレナもどこか拍子抜けしたような感じで、俺に言ってきた。
「だめだめ。これからクロエの実家に行くんだから。」
昨日の話を聞いた以上、クロエを一人で——、いや、今はマックスがいるわけだが、実家に行かせるのは不安もあり、パーティメンバーとして挨拶をさせてもらうという体で同行することにしていた。
エレナも分かっていて言ったはずだが、少し頬を膨らませていた。
「なんだかいつもと逆のようですな、レオン。」
ジークフリートが懲りずに俺に話しかけてきた。
俺は相手にするのも疲れたので、村の景色に目を移した。
アソシラス村は山間部にある緑豊かな村だった。
特徴と言えば村の中央を流れる清流で、ここの水は王都でも売られるほどの一級品らしく、村の特産品として農産物はもちろん、医薬品や化粧品の工房も複数存在していた。
村民の生活とも清流は密接にかかわっていて、ある皮膚病の子供はアソシラス村を訪れて三日間滞在していたら、王都では治らなかった皮膚病が自然と収まった、などという話もあるくらいだ。
ちょうど俺たちの右手にその清流が見えてきた。
川面は昼過ぎの太陽の光を反射して、キラキラと宝石のような表情を見せていた。
「ああ、あの光。まるでクロエの瞳のようだ——。」
ジークフリートが俺の声を真似して言う。
さすがに度が過ぎている。
俺はジークフリートの頭を一発ポカリとすると、頭を押さえて立ち止まるジークフリートを置いて、エレナとともにクロエたちの後に続いた。
◇
歩き続けること三十分。
俺たちは小さな農家の一戸建てといった佇まいの家を前にしていた。
ここが、クロエの実家だ。
クロエは両手の拳を握りしめて家の前に立っていた。
その両足は、少し震えていた。
「大丈夫。親父さんもきっと分かってくれるさ。」
マックスがクロエの背中に手を置くとそう言っていた。
幼馴染による自然なフォロー。
分かってはいるのだが、なぜか俺は複雑な気分になっていた。
でもそれを認めると、またジークフリートに養分を与えるような気がしたので、今は黙ってクロエが家のドアをノックするのを見守っていた。
第三話も読んでいただき、ありがとうございました。
さて、次回は2026年10月3日7時10分に公開予定です。
高評価・感想・ブックマーク等をいただけたら作者もますますやる気が出てくるのでよろしくお願いします。




