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シーズンⅢ 第十話 反撃

 こんにちは。作者の「野生の書生」です。

 前回はレオン達がサーシャと接触するまでを書きました。

 今回はその続きからです。


 本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。

 主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。


 この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。

 ソルティア王国中央広場。

 今そこには、”グランツ公爵を告発する会”の特設ステージが開設されていた。

 広場には一段高くした舞台が設けられており、その舞台は魔石を利用した照明により、ひと際明るく照らし出されていた。

 そして、その舞台に向けて扇状に三百席以上はあろう椅子が並べられ、まるで野外コンサートでも始まるかのような様相を呈していた。

 もっとも今夜舞台に立つのは、華やかな歌手ではなく、いかめしい顔をした男たち――腐敗貴族グループ「黒い天秤」の幹部たちであった。

 

 客席にはまだ人はおらず、今は舞台の袖でこれから始まる”演劇”の打ち合わせが行われていた。


 その傍らには、両手・両足を縛られて椅子に座らされている男——グランツ公爵の姿があった。

 グランツ公爵は抵抗する様子もなく、荘厳なオーラを纏ったまま、「黒い天秤」の男たちをただ睨みつけていた。


 「まったく........。まだ希望を捨てていないのか。あの男は。」

 「まあ、泣き喚かれるよりかはマシさ。"黒幕"としての説得力も上がる。」


 「黒い天秤」の幹部たちはそういうと、ハハハと笑った。


 「さて.......。"女優"の準備は整ったのかね?」


 「はい。完璧です。彼女の存在は間違いなく世論を”公爵の断罪”へ導くでしょう。」


 「結構だ。さていよいよ”開演”だ。客席に観客を入れたまえ。」


 客席に次々と人々が入ってくる。

 最前列は貴族たち。「黒い天秤」に属さない、まっとうな貴族たちだ。彼らの目にはグランツ公爵への怒りと侮蔑が宿っていた。


 続いて、新聞記者が入れられる。彼らはカメラマン(念写の能力を持つ人間)を伴い、これから始まる王都の一大イベントに好奇心と商売魂を燃やしていた。


 そして最後列に一般庶民が入れられる。用意した座席数では収まりきらず、その背後に立って見物する彼らこそ「黒い天秤」にとっては重要な存在だった。


 「予想以上の盛況ですね。」


 「ああ。最近の不況で、王都民の不満も高まっていたからな。その不満のはけ口として、グランツ公爵の存在はまさにうってつけだ。」


 「これで貴族から一般庶民まで、名実ともにグランツ公爵は”国民の敵”となる。——後はわかっているな。」


 「はい。数日以内に”神の裁き”が公爵に下ることでしょう。」

 そこまで言うと、「黒い天秤」の男たちは黙った。



 「皆さん!大変お待たせいたしました!」

 司会者が舞台の上で”開演”を告げた。


 「本日、ここにお集まりいただきました皆さまに対し、我々は重大な告発を行いたいと思います。それすなわち、我々を長き不況の渦に巻き込み、その傍らで私腹を肥やし続けた悪しき貴族の存在です。」

 司会者は会場の隅々にまで響き渡る声でつづけた。


 「その貴族は、不当な労働で上げた利益を搾取し、自らは手を汚すことなく、暖かな家で暖かなスープを口にしていた、この男——グランツ公爵に他なりません!」


 スポットライトが移動し、拘束されて座るグランツ公爵に当てられる。

 会場の人々から声が上がった。その中には罵声に近いものも含まれていた。


 白い光とともに人々の侮蔑的な視線を浴びたが、グランツ公爵はなお、高潔たる意志をその目に宿していた。


   ◇


 「お父様.............!」

 会場の片隅。一般観衆に混ざっていたアリアが呻いた。


 「まだ耐えろ。........勝負はこれからだ。」

 ジークフリートが舞台を睨み据えて言った。


 俺も、クロエも、エレナも、カイルも、そして協力者たちも、「その時」をうかがっていた。



 「さて、このグランツ公爵による極悪非道な所業の被害者として、この場に証言者をおよびしました。こちらです!」

 司会者の男は続けた。

 数人の男女が舞台に上がる。そのうちの一人の顔には見覚えがあった。


 「あの女....!」

 カイルもそれに気づいたらしい。

 証言者として舞台に上がったのはリリア――俺たちがパーティ結成記念の食事会をしていた時に乱入してきた女だった。


 「皆様........。私は........そこにおりますグランツ公爵の配下の者によって王都の郊外にいたところ突然捕らえられました。そして、そのままあの暗い鉱山へと連れていかれ........。私の持つ大きな魔力に目を付けたのでしょう。」

 リリアは”悲劇のヒロイン”役を演じていた。


 「あの......暗い鉱山の中で、私も、ここにいる鉱夫も奴隷のごとく使い倒されました.........。ですが、今日この日、勇気ある方々の行動により、私たちの苦労は報われました。今日この場所で解放の日を迎えましたことを、喜ぶとともに、皆様には最大の感謝のお言葉を述べたいと思います!」

 リリアの演説は続いた。

 人々はリリアの言葉に呑まれ、あるものは涙を流していた。


 なんだ。あれは。

 俺は壇上で熱演するリリアの姿に、葬儀会場でのクラスの奴らを思い出していた。

 薄っぺらい悲劇の皮をかぶった存在。

 

 ——今、その化けの皮を剥いでやる。


 「作戦開始だ。」


 熱狂に包まれる会場の片隅で、俺は仲間たちにそう告げていた。


 第十話もお読みいただきありがとうございます。

 ”グランツ公爵を告発する会”をどのような光景に描くはいろいろと考えました。

 初期案では、屋内を考えていましたが、より開放的で大人数がいる状態を書きたかったので野外に変更しました。

 考えてみたら、異世界で照明とか描写するのって難しいですね(電気がないので)。

 今回は魔石による照明ということにさせていただきました。シーズンⅠの地下道のシーンでも使った設定なので許してください。


 次回は2026年9月29日21時10分公開予定です。


高評価・感想・ブックマーク等をいただければ、作者も頑張れるのでよろしくお願いします。


 

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