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シーズンⅢ 第八話 尋問

 こんにちは。作者の「野生の書生」です。

 前回はフードの男が身柄を拘束されるまでを書きました。

 今回はその続きからです。


 本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。

 主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。


 この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。

 鉱山の所有者は自宅で軟禁させられていた。

 「黒い天秤」の息がかかったペーパーカンパニーからの買収提案を断ったことが原因だそうだ。


 本人としては、あそこに醸造所をつくり、坑道跡で発酵させた酒を温泉街に卸すつもりだったらしい。


 公爵家にも出資してもらえないかと相談に出向いていたそうだが、今回、グランツ公爵に濡れ衣を着せる白羽の矢が立ったのも、その辺の事情が関係しているのかもしれない。

 突如として拘束させられたかと思うと、フードの男が自分に化けて、自分に成り代わって生活し、「黒い天秤」に鉱山を売り渡したのだ、と鉱山の所有者は言っていた。

 

 拘束したフードの男にも、その場で尋問を行った。

 フードの男は観念したのか、基本的に素直に回答していた。

 グランツ公爵に化けて鉱山周辺をうろつき、グランツ公爵が「黒い天秤」とつながっている噂が立つように仕向けたことも、認めた。


 あのスライムについては、山道を歩いているときに偶然見つけて、なぜか知らないけどついてきたから眷属とすることにしたのだそうだ。


 そのスライムは、今はアリアの足元でくつろいでいた。

 普通のスライムは水色を帯びているが、このスライムはグレーのような色味がある。

 先ほど鑑定してみたところ、スライムの「特殊進化系」だそうだ。

 

 特殊進化系のスライムの特徴として、自分よりレベルが低いものについては完璧にその姿や能力をコピーすることができるらしい。

 

 「そのスライム........。お前らどうするつもりだ?」

 フードの男は聞いてきた。

 

 エレナ曰く、スライムの特殊進化系は非常に珍しく、個体としては稀に生まれてくるものの、成長してレベルが上がるとなんにでも化けられることから、魔物の間でもその存在は恐れられて、レベルが低いうちに殺処分されるケースが多いとのことだ。


 目の前のスライムはレベル40。

 単純計算でこの世界の半分近くの者に変身できるというわけだ。


 「あのスライム。レベル40みたいだけど、なんでレベル99の俺に化けれたんだ。」

 俺は聞いてみた。


 「あのスライムの力と、俺の力を合わせた結果だ。俺はあのスライムと融合することでスライムの能力にバフをかけた。だが、外見はうまくいったが、記憶までは完全とはいかなかった。」

 フードの男は答えた。


 記憶は完全にコピーできなかった。

 つまり、俺が異世界で一度死んでこちらに転生したことは知られずに済んだのか?


 「お前。半年より前の記憶がほとんどないみたいだったな。最近の記憶でもあやふやなところがあるし......。”過去は捨てた。”なんて台詞吐く奴は何人も見てきたが.........。本当に捨てている奴はお前が初めてだ。」


 どうやら、転生前の記憶は読めなかったようだ。

 もしかしたらルミナによりガードがかかっているのか?

 いずれにしても、俺にとっては好都合だった。


 「おかげでよくわからない警戒心で、あのお嬢様の元に駆け寄るのが遅れちまった......。まあ、それはもういいや。それよりそのスライム、本当にどうする気だ?」

 フードの男はもう一度聞いてきた。


 スライムは相変わらず、アリアの足元で猫のように丸くなっていた。




 「このスライムは、わが公爵家の資料館で保護します。」

 アリアがはっきりと言った。


 ——俺は驚いた。

 フードの男がスライムの処遇を気にしているあたり、まだ「保護する」という方針を明言するべきではなかったのではないか、と思ったからだ。

 この男から情報を引き出す交換条件として——。


 「いいのか?俺はまだお前らに協力するとは一言も言ってないぞ。」

 フードの男は俺が思ったことを代弁した。


 「このスライムが、自らの自由な意志の下であなたに協力したというのなら、自らの意志で道を踏み外したものとして扱います。ですが、彼は他に行き場がない中、あなたという庇護者に出会い、あなたとともに歩むしか選択肢はなかった。であれば、その事情は考慮すべきです。」

 アリアはそう言っていた。


 俺はスライムを駆け引きの材料にしようと考えていた自分を、恥じた。


 フードの男はどこかバツが悪そうな、でもなにか憑き物が落ちたかのような顔をしていた。


 「大事にしろよ.......。」

 フードの男はぽつりとつぶやくと、続けて言った。


 「今夜、”グランツ公爵を告発する会”が開かれる。『黒い天秤』が主催する会だ。俺が知っている奴らの名前は全部言う。——いいか、今夜が勝負だ。」

 

 俺たちはフードの男の周りに集まり、一斉に身構えていた。


 第八話もお読みいただきありがとうございました。

 初期案では、鉱山所有者をドワーフにして、鉱山所有者からもより具体的な情報を聞き出す展開を構想していましたが、暗殺者キャラを投入してみたら作者的に良い感じにはまったので、そちらに変更しました。

 「黒い天秤」への糸口がいよいよ見えてきました。Ⅲもいよいよ終幕に向かっていきますので、引き続きよろしくお願いします。


 次回は2026年9月28日21時10分、公開予定です。


高評価・感想・ブックマーク等いただければ作者も喜びますので、よろしくお願いします。

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