↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/73

シーズンⅢ 第七話 虚像

 こんにちは。作者の「野生の書生」です。

 前回は暗殺者を追い詰めたところ、レオンが二人いるという状況に発展するところまで書きました。

 今回はその続きからです。


 本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。

 主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。


 この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。

 煙幕の晴れた後の展開は、俺にとっては悪夢だった。


 俺がどれだけ必死に「俺が本物だ!」と主張しても、

 偽物の方も「嘘つけ!」と俺に言い返してくる。


 エレナが鑑定魔法を試してみたが、俺も偽物も、何も表示されなくなっているそうだ。

 厄介なことにこいつは俺の記憶までコピーしているようで、俺しか知らないはずのことも答えやがる。

 ——こいつ、前世のことまで把握しているのか?

 だとしたら、余計なことを口走らないでくれよ。


 「うむ。これでは埒が明かんな......。」

 カイルが額に手を当てる。


 いつまでも、迷ってはいられない。

 どうやったのかはわからないが、こいつが俺に化けた目的は時間稼ぎだろう。

 見た目上、身体は修復したようだが、こいつの魔力はまだ回復しきっていない。

 おそらく、魔力が回復したら化けの皮を剥いで逃げるか、”仕事”を果たすかするつもりなのだろう。


 俺も含めて拘束させるか?

 いや、拘束する手段に出た途端、おそらくこいつは逃げるだろう。


 「ジークフリート殿.......。これはおそらく。」

 カイルがジークフリートに耳打ちする。

 

 「ああ。鉱山で写っていたグランツ公爵の偽物と関係がありそうだ。」

 ジークフリートが返す。


 そうだ。おそらくこいつがグランツ公爵に化けていたのだろう。

 おそらくは鉱山に万一のことがあった時に濡れ衣を着せるために。

 鉱山の所有者がどこまで知っているのかはわからないが、口封じを図るぐらいだから、「黒い天秤」につながるなにかがあるはずだ。


 <やはり、こいつは生け捕りにしたい。>

 俺はそう思った。


 

 「父上に裏切られて........。信じた仲間にまで裏切られて........。」

 唐突にアリアが空を見上げてつぶやく。

 

 「アリア様..........?」

 「アリア............。」

 おい。ちょっと待て。いったい何の話が始まった?


 「レオン様。あなたが「黒い天秤」に情報を流し、自分の複製を用意させていたのですね。..........残念ですが、その事実を受け入れるしかなさそうですね。」

 アリアは絶望しきったような目で、俺と”俺”を見ながら続けた。

 

 なんだ?何の話をしているんだ?アリア?


 「私ももう限界です。レオン様、来世ではどうか私のおそばに........。」

 アリアはそういうと剣を抜き、自分の首に当てた。

 首筋から血の筋がしたたった。


 「やめろ——!」

 俺は飛び出していた。


 偽物の俺も飛び出そうとしていた。

 が、偽物は罠を警戒したのか、俺より反応が一瞬遅れた。

 

 「そちらです!そちらが偽物です!」

 アリアが出遅れた偽物の”俺”を指して叫んだ。


   ◆


 ——アリアは気付いていた。

 レオンが出会った当初、自分の外見に何かしら怯えと警戒の表情を見せていることに。


 だが、これまでの旅路で徐々にそれは変化していき、今の信頼関係が出来上がった。

 本物のレオンにはその旅路の”経験”がある。だが、偽物には旅路の”知識”しかない。


 その差にアリアは賭けたのだった。


   ◆


 「よっしゃあ!」

 ジークフリートとカイルが一斉に動き出す。

 

 クロエが水魔法を浴びせかける。エレナがそこに凍結魔法をかける。お得意の足止めだ。

 偽物の俺は足元を凍結させられて、動けなくなった。


 続けて、ジークフリートとカイルが偽物の俺に剣を突きつけた。

 

 「——おい。いつまで俺の仲間の面、被ってんだ?あんまり続けるようだと、こいつで面の皮剥いじまうかもしれねぇぞ?」

 ジークフリートが偽の俺の顔に剣を突きつけて言う。

 

 その光景に、俺はなんだか嫌な記憶がよみがえりそうな気がしたけれど、最近はもう前世の記憶にとらわれることもなくなってきていた。




 偽物の俺の体からなにか液体のようなものが滑り落ちた。

 そのあとには元の姿に戻ったフードの男がいた。

 偽物の俺の体から落ちたものは、——スライムだった。


 「フン.........。どうやら俺はここまでみたいだ。せいぜい長生きしろよ、相棒。」

 フードの男はスライムに呼びかけていた。

 

 ジークフリートはフードの男の拘束に取り掛かった。

 フードの男は、もう抵抗はしなかった。

 


 「アリア様.......。本当に無茶はなさらないでください。」

 カイルは叱るような口調で言っていた。

 

 <これではグランツ公爵の懸念ももっともだな。>

 アリアに助けられながらも、俺は心の中でグランツ公爵に同意していた。


 「ねえ、アリア。さっきの演技すごかったけど........。『来世ではおそばに。』って何?」

 クロエが聞いていた。


 エレナもアリアに顔を向けた。

 ジークフリートも<なんか始まったか?>と言わんばかりに寄っていった。

 

 「あれは.......。とっさの演技で.............。」

 アリアは赤面しながら答えていた。



 「なあ、カイル。お前、早くしないとアリアまでとられちまうかもしれねぇぞ。」

 ジークフリートがカイルの耳元で言う。

 

 「貴殿は自分の仕事を早く済ませなさい!」

 カイルは家の方を指さして言う。

 はやく鉱山の所有者を確保してこい、という意味だ。

 

 「へーい、へーい。」

 ジークフリートは家の方に向かう。

 

 その様子を見ていたフードの男は、俺の側で耳打ちした。


 「お前、気苦労が絶えねぇかもしれねぇけど。本当に良い仲間を持ったな。うらやましいよ。」


 <こいつ、本当に俺のことをどこまで知っているんだ?>

 声を掛けようとしたが、拘束されながら寂しそうに笑うフードの男にそれ以上のことは聞けなかった。


 第七話もお読みいただきありがとうございました。

 どちらが本物のレオンかを見抜く方法については、作者もいろいろと考えました。

 お気づきのかたもいらっしゃると思いますが、今シーズンのテーマは「アリア回」です。

 アリアの高潔さと活躍をできるだけ、盛り込みたいと思い、今回の描写に至りましたがいかがでしたでしょうか..........?


 さて、次回は2026年9月28日7時10分、公開予定です。


高評価・感想に加えて、ブックマーク等いただけたらと思いますので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。