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シーズンⅢ 第二話 疑惑

 こんにちは。作者の「野生の書生」です。

 前回は、グランツ公爵がアリアにパーティ離脱命令を出すところまでを書きました。

 今回はその続きからです。


 本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。

 主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。


 この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。

 公爵邸を出た俺とクロエとエレナは、紆余曲折を経て、今はジークフリートの家にいる。

 彼も貴族の出だ。公爵邸ほどではないにしても、その家は俺の世界の基準で言っても”豪邸”と言って差し支えないものだった。


 というのも、公爵邸を出て、宿に戻ろうとしたときにジークフリートが俺の腕をつかんで、

 「話がある。」と言ってきたのだ。

 俺はクロエとエレナと目配せして、ジークフリートのこれまでの様子から、大事な話だと察してジークフリートについて行ったのだった。


 そして、今。彼の屋敷の応接室で俺たちは信じがたいものを見せさせられていたのだ。

 そこに置かれた写真——もとい”念写”には、グランツ公爵らしき人物が坑道の入口で監視役の男たちと何事か話している様子が写っていたのだ。

 

 「どういうことだ?」

 俺はジークフリートに聞いた。


 「俺にもわからん。だが、こいつをくれた女は確かにこの景色を見たそうだ。」


 念写は写真と違い、実際に存在するものをそのまま写すわけではない。

 つまりは偽造も可能なわけだが、坑道で人柱にされていた女がそれをする理由はない。


 「このことを知ったらアリアは...........。」

 クロエが悲痛な表情で言う。


 「まだ真偽はわからないわ。この念写に写っている人間が本当にグランツ公爵なら、そもそも私たちをあそこに行かせた理由がわからないわ。何か..........。」

 エレナも悩んでいた。

 

 俺も同感だった。

 グランツ公爵が鉱山の違法採掘に関わっている”あちら側”の人間なら、俺たちをそもそもあそこに行かせて鉱山を潰させる理由がない。

 これまで表立って公爵家の意志として動いてくれていたのはアリアだが、その気になれば俺たちを妨害することだってできたはずだ。

 少なくとも公爵家は俺たちのこれまでの行動に全面的に協力してくれていた。


 ——それが俺の正直な感想だった。ゆえに、目の前のこの念写の光景は俺には信じがたかった。


 皆一様にこの念写が意味するところを考えこんでいた。



 「アリアが言っていた”最後の冒険”の件だけど.......。」

 頭が煮詰まってきたので俺は話題を変えた。

 

 アリアが言っていたのは、「鉱山の所有者」への調査だ。

 違法採掘がなされていた鉱山も、もともとはまっとうな鉱山として所有者がいたはずだ。

 その所有者に話を聞きに行けば「黒い天秤」につながる新しい情報も手に入るかもしれない。

 ——というのがアリアの主張だった。


 王都内で完結する調査であり、遠出の必要もなく、朝晩はアリアは公爵邸で過ごすことができる。

 ——グランツ公爵もアリアの”最後の冒険”に同意してくれた。


 だが、グランツ公爵が同意したというのはどういう意味か。

 彼が"あちら側"の人間なら、「鉱山の所有者をあたっても何も出てこない。」という余裕なのか。



 その時、完全に意識の外から抜けていた疑問が浮かんだ。

 「グランツ公爵が『黒い天秤』につながっていたとして、なんでこのタイミングでアリアを引き抜くんだ?」

 公爵家が「黒い天秤」とつながっていて余裕綽々なら、これまで通り俺たちを泳がせておけばいい。

 今、俺たちとアリアを引き離そうとする意図はどこにある?


 ジークフリートも同意していた。


 アリアを俺たちのパーティから引き離して、アリアも「黒い天秤」側の人間に引き込む気か?

 それとも、真相に近づきすぎた俺たちを「黒い天秤」が処分しようとしていて、アリアをそこから助け出そうとしているのか?


 いろいろな仮説が頭の中に浮かんだ。

 だが、グランツ公爵が「黒い天秤」に連なる人物という仮定に立った瞬間、俺の頭にはどの仮説にも違和感しか感じられなかった。


 『公爵家の者として、お前をこれ以上危険な場所に置いておくわけにはいかん。』

 ——やはり俺には、グランツ公爵のあの言葉は、純粋に娘を案じた父親としての言葉にしか思えなかった。



 グランツ公爵の真意はともかく、まずは問題の念写の真偽から確かめるべきだろう。


 「調べたいことがあるんだけど、協力してくれるか?」

 俺はそこにいる全員に聞いてみた。


 クロエもエレナも、ジークフリートも一斉に俺の方を見た。

 

 俺は”調べたいこと”の概要を説明したが、誰からも異論は出なかった。


 第二話もお読みいただきありがとうございました。

 

 シーズンⅢ前半は各話が「短くなっている。」とお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、前回後書きに書かせていただいた通り、ネタ切れではないのでご安心ください。


 次回は2025年9月26日12時10分公開予定です。


 高評価・感想・ブックマーク等いただけましたら、作者も頑張れるのでよろしくお願いします。

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