シーズンⅢ 第一話 命令
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
プロローグで、公爵邸執務室に報告に行く場面までを書きました。
今回はその続きからです。
本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。
主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。
この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
公爵邸の執務室で、俺たちは鉱山での一連の出来事を報告していた。
奴隷として働かされていた鉱夫は一人残らず解放したこと。
監視役の男たちも全員拘束し、騎士団により王都に移送されたこと。
三人の人間が人柱にされていたが、彼らも無事に救出したこと。
そして、鉱山は崩落し、もはやあの鉱山から魔石を得ることは不可能であるということ。
——つまり、今回の主目的はすべて達成されたということだ。
「うむ。ご苦労だった。」
一連の報告を聞いたグランツ公爵は、そう返してきた。
俺たちはほっと胸をなでおろす。
アリアもカイルも、ようやく肩の荷が下りたようであった。
——だが、ジークフリートだけは緊張を解いていないようだ。
あいつ本当にどうしたんだ?
俺は疑問に思ったが、今はグランツ公爵からの言葉に意識を戻した。
「時に、レオン殿。貴殿の働きは聞いている。」
グランツ公爵は突然俺に向かって言った。
俺は居住まいを正して、グランツ公爵に向き直った。
「魔石密売組織の一斉摘発。加えて今回の鉱山での任務。貴殿の力なしでは成しえなかったことであろう。依頼人である公爵家として、改めてお礼を申す。」
グランツ公爵は俺に向かって頭を下げてきた。
「は。身に余る光栄です。」
この返しでいいのか........?
俺は貴族の正しい挨拶や敬語など知らないから、内心ヒヤヒヤしながらグランツ公爵に返答していた。
「そのうえで、だ。貴殿に頼みがある。」
グランツ公爵が一つ咳ばらいをして言ってきた。
「は。何事でございましょうか。」
口にしながら、また厄介ごとに巻き込まれるのではないか、という警戒心も芽生えていた。
「アリアのことだが、貴殿のパーティからの離脱を認めてもらいたい。アリア。お前は今日から、この公爵邸で私の手伝いをしてもらう。」
ざわ、とその場の空気が揺れた。
俺も、クロエも、エレナも、ジークフリートも、カイルも驚いた。
アリアも何を言われたのか理解できていないようだった。
「お父様。なにをおっしゃって.......。」
アリアはうろたえながらも抗弁した。
「もともとお前を最前線に出すつもりなどなかった。だが、お前に任せていたらお前は冒険者パーティに加わり、大立ち回りまでやっていたそうではないか。公爵家の者として、お前をこれ以上危険な場所に置いておくわけにはいかん。」
——まあ、それについてはグランツ公爵の考えも理解できる。
「むろん、レオン殿には感謝しているし、今後の接触を断てとは言わん。むしろレオン殿には今後もわが公爵家の力になってもらうつもりだ。」
——俺、まだ了承してないんだけど。
「だからお前にはその間に入ってほしい。公爵家と優秀な冒険者パーティをつなぐ大事な役割だ。私の元に戻ってきてくれ。」
——話を聞くと、要は一人暮らしを始めた娘に実家に帰ってこいと言っているようなものか。
だが、一番大事なのはアリアの意志だ。アリア、君はどうしたいんだ——。
俺はアリアの方を見た。
アリアはうつむいていたが、やがて顔をあげると、意を決して言った。
「わかりました。ですが、私にはまだやり残した仕事があります。」
グランツ公爵は黙って続きを待っている。
「やりかけた仕事を途中で投げ出すのは公爵家の恥です。——私に最後の冒険をさせてください。」
アリアはそういうと、俺の方へ振り向いた。
その顔は笑っていたが、どこか寂しそうな笑顔だった。
さて、第一話もお読みいただきありがとうございました。
シーズンⅢに突入し、作者もよりよい物語が書けるように腕が鳴っています。
シーズンⅢの前半は物語の区切りが難しく、文字数が少なくなりがちですが、手抜きではありませんので、ご容赦いただければと思います。
本作は10月12日に無事完結する予定ですので、それまでお付き合いいただければ幸いです。
第二話は2026年9月26日7時10分公開予定です。
☆ 土曜日、日曜日は12:10にも最新話を公開しますのでよろしくお願いします!
まだまだ、多くの方にこの物語を手に取っていただければと思っていますので、この物語が少しでも面白いと思っていただけたら、評価・ブックマーク等でご協力いただければと思います。




