シーズンⅡ 第八話 崩壊
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
前回は人柱を発見し、レオンの過去の記憶がまた一つ掘り起こされた後、脱出の作戦を考えるところまでを書きました。
今回はその続きからです。
本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。
主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。
この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
俺の考えた作戦は、単純だった。
まず俺が可能な限りの広域に防御魔法を施して天井を固定する。
そして、魔道具である南京錠を破壊して、三人を救出する。
その後、崩落が始まるだろうから、可能な限りダッシュで出口に向かう、というものだった。
誰からも異論は出なかった。問題は各員の役割だ。
「カイルとジークフリートの二人には祭壇に残ってほしい。三人が結晶化から解放されたらどちらかが二人、どちらかが一人を連れてここから脱出だ。」
二人ともうなずいていた。
「もし、二人抱えての脱出が難しければ、その時は俺が一人を抱えるから——。」
「その必要はねえよ。」
ジークフリートが言っていた。
ジークフリートは腰につけていた大きな剣をその場に捨てた。
重い金属音が坑道内に響く。
「この剣は俺が『黒い天秤』にいたときに調達したものだ。ちょうどいい。こいつに死に場所を与えてやるよ。」
ジークフリートはそう言って二人担ぐ役を買って出た。
次に南京錠を破壊する役だ。俺は防御魔法に全力を割きたいからここでも一人協力者が欲しい。
魔道具の破壊という性質上、腕力ではなく魔力に長けた人が必要だ。
「エレナ、お願いできるか。」俺は言った。
エレナは無言で目を閉じ、深くうなずいていた。
「ちょっと待って。私はどうすればいいの。」
クロエが聞いてきた。アリアも俺の方を見ていた。
「二人は祭壇から離れて、部屋の出入り口付近にいてくれ。そこから全力ダッシュだ。途中で監視役の奴らの残党に遭遇するかもしれないから、前衛として進路上の障害を排除してくれ。」
クロエは心配そうな顔をしていたが、うなずいた。
アリアも黙ってうなずいている。
「最後に俺だが、この部屋から全員いなくなった時点で俺もこの部屋から脱出する。」
方針は決まった。
◇
各員が配置につく。
俺は天井に向けて両手を掲げた。防御魔法の巨大な魔法陣がさらに大きくなり、天井の向こうに消えた。——これで準備は整った。
俺の隣にエレナが立つ。エレナの役割はスタートラインを後ろに置かれた危険な役割だ。
「ごめん...........。いや、ありがとう。エレナ。」
エレナは俺に向けてそっと微笑みかけると、もう何も言わずに南京錠の魔道具に向けて、魔力を集中させ始めていた。
エレナから発せられた白い光が、南京錠に集結する。
南京錠がガタガタと音をたてて揺れ動き始める。
まがまがしい紫色の光が南京錠から一気に放出されると、南京錠は金属音とともに砕け散った。
「今だ!走れ!」俺は叫んだ。
クロエとアリアが部屋を出る。エレナもそのあとを追って走り出していた。
三人を閉じ込めていた結晶にひびが入り、ガラスが割れるような豪快な音とともに崩壊する。
祭壇上に三人が放り出される。
「あれ.......。ここどこ........。」
三人とも寝起きのような表情を浮かべていたが、カイルとジークフリートが構わず、抱え起こすと出口に向けて走り出した。
よし、俺も——。
だが、結晶化が解除された直後から、俺の防御魔法は一気に降り注いできた天井の重圧に対し、限界に近い悲鳴を上げていた。
俺はそれを何とかこらえて、カイルたちの後を追って走り出した。
俺が部屋を出ると、祭壇の魔力も、俺の防御魔法も届かなくなったその部屋は直ちに崩落を開始した。
轟音とともに大量に降り注いだ岩が、まがまがしい祭壇を土へと還していった。
第八話もお読みいただき、ありがとうございました。
祭壇の人柱の解放とその後の脱出という状況を思いついたときに、レオンのパーティで誰にどんな役を与えたら最適か考えてみたら、意外にすっきりとおさまったので良かったです。(作者的に)
さて、全力ダッシュで崩壊する坑道から出ることになったレオン一行ですが、その行方はいかに。
第九話は2026年9月24日12時10分、公開予定です。




