シーズンⅡ 第七話 坑道最奥部
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
前回は坑道から監視役の男たちを含むすべての人間を退避させるまでを書きました。
今回はクロエが発見した最奥部への道を進む場面からです。
本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。
主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。
この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
クロエが見つけた坑道最奥部に続く道。俺たちはそこを慎重に歩き進めていた。
「おかしいわ...........。」エレナがつぶやいた。
俺はエレナの方を向いた。
「これだけ無理な採掘を繰り返しているのに、崩落している箇所が少なすぎるのよ。普通ならもっとあちこちに崩落した跡があってもいいはずだわ。」
エレナは続けていた。
確かにそうだ。奴隷を使って無茶な採掘をしていたというわりに、ここの坑道では崩落してふさがったような箇所をあまり見ていない。
「これ...........。もしかして。」
アリアが坑道の壁に手をあててつぶやく。
「レオン様、以前お渡ししたペンダントをお借りできますか。」
アリアも何かに気づいたようだ。
アリアの求めに応じて俺はペンダントを外すとそれを手渡した。
「やっぱり.........。」
ペンダントを壁に近づけて、アリアは言った。
「レオン様、微弱ですが、ここの坑道は壁から天井にかけて魔力が込められています。壁一か所の魔力としては微弱ですが、この坑道全体を覆うほどのものとなるとかなり強力な魔力が注がれていると思われますわ。これが崩落を押しとどめているのかもしれません。」
「坑道全体を覆う魔力...........?」
俺は考えた。俺の防御魔法でも、これだけの坑道を長時間にわたって維持することはまず不可能だ。
いったいどれだけの魔力の持ち主がいるっていうんだ?
「レオン!大きな部屋があるよ!」
先行していたクロエが俺たちに向けて報告してきた。
クロエのいう通り、そこには大きな部屋——空間というべきか、があった。
だがこの部屋は魔石の採掘を目的としたものではなさそうだった。
目立つのは部屋の一番奥、祭壇のようなものがあることだ。
労働者の安全を願っての神棚のようなものか?
俺はそう考えて、祭壇の方に向かった。
他の仲間たちも俺に続いて祭壇に近づいて——息を呑んだ。
祭壇の上には俺の身長よりも高い、巨大な結晶が三つ飾られていた。
その結晶の中には一人の女性と二人の男性が閉じ込められていた。
結晶は坑道の天井に向けて、何かを送り届けていくように発光している。
——人柱。
先刻の魔力の話と合わせて、俺はそう直感していた。
◇
「これは...........。」
結晶化された三人をみたエレナもアリアも結論は同じだった。
クロエは直視できないといった様子でうつむいている。
「おいおいおい、こりゃひでえなあ。」
ジークフリートは言った。
「どうやったら、こんな発想ができるんだ...........。」
カイルは呻いていた。
その横で俺は、またしても両手の拳を握りしめていた。
生きた人間を閉じ込めて魔力を吸い上げるおぞましさに戦慄しただけではない。
——この中の三人の顔も俺をかつて罠にはめた奴らの顔だった。
◇
~レオンの回想~
「ねえ、羽沢君。ちょっとお願いがあるんだけど。体育倉庫に手が届かない荷物があって。とるの手伝ってくれないかな。」
小柄なクラスの女子、宮本は俺に声をかけてきた。
後ろからついてきた男子二人も、
「頼むよ。俺らじゃ身長足りなくて。」と言ってきた。
まあ、そういうことならと俺は体育倉庫に向かった。
体育倉庫に入ると、問題の荷物は棚の一番上に置いてあった。確かに宮本達では届かない高さだ。
だが、俺なら踏み台さえあれば届きそうだ。
「これなら大丈夫——。」
俺は振り返って三人に踏み台はないか聞こうとした。
その瞬間だった。
夕日が差し込んでいた体育倉庫の鉄扉が、ゆっくりと閉じられる。
狭まっていく光の向こう、俺をここに呼び出した三人の姿の向こうに、高坂優衣奈の姿が見えた。
鉄扉が完全に閉じられる。続いて鎖を巻く音と南京錠をかける音がする。
——おい。ちょっと待ってくれ。何をしたんだ。
「羽沢マジでひっかかってやんの。」
「俺らが、お前なんか頼るかっつーの。」
先ほど奴らの笑い声が聞こえてくる。
頼む。ここから出してくれ——。
「じゃあね、羽沢君。また明日。」
彼らの笑い声に交じって聞こえてきたのは高坂の凛とした冷たい声だった。
◇
~坑道最奥部~
俺は震えていた。あの時、俺を暗闇に閉じ込めた奴ら。
それと同じ顔をした人間が今、ここに閉じ込められている。
——だが、この人たちも「あいつら」ではない。
「この人たちを必ず助け出す。みんな知恵を貸してくれ。」
俺はそう言っていた。
◇
現実問題として、この坑道は今、三人の人柱によって支えられている。
もし、結晶化を解除できても最悪の場合、彼らを結晶から出した途端に、坑道の崩落が始まるかもしれない。俺の防御魔法で天井を抑えるとしても、果たしてどこまで持つか。
次に、結晶化の解除方法だ。物理的に破壊することもできるだろうが、中の肉体まで傷つけずに結晶だけを破壊できるかどうか。
「レオン。これ見て。」
祭壇の周囲を調べていたエレナが俺に声をかけてきた。
祭壇の下の方のくぼみに、鎖のようなものと、それをつなぎとめる南京錠のような魔道具が置かれていた。
アリアもそれを調べて、おそらくこれが結晶化の根源だと結論付けた。
つまり、この魔道具を破壊すれば、三人は救い出せる。
だが、それと同時にこの坑道は崩落を始めるかもしれない、というわけだ。
俺は、意を決して言った。
「作戦がある。協力してくれるか。」
クロエも、アリアも、エレナも、カイルも、ジークフリートも、俺の方を振り返った。
第七話も読んでいただきありがとうございました。
またしてもレオンのトラウマを呼び起こす顔を持った人間が三人も現れるわけですが、当初と違いレオンも卒倒することなく、自分の気持ちを整理して目の前の状況と向き合えるようになったわけで、やはり異世界に来てからの出会いと経験が彼を成長させているということでしょう。
さて、鉱山での冒険も終盤に入ったわけですが、レオンの作戦とはどのようなものなのでしょうか。
第八話は2026年9月24日7時10分に公開予定です。
高評価・感想をいただければ、作者も成長できる(気がする)ので、よろしくお願いします。




