シーズンⅡ 第六話 命の重さ
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
前回は、坑道の中でレオンパーティが初めてフルメンバーで本格的な戦闘を行い、レオンが火球を上げたところまで書きました。
今回はその続きからです。
本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。
主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。
この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
俺が火魔法で作り出した火球をぶち上げると、坑道の人たちの視線は一斉にこちらに集まった。
——今だ。
「よく聞け!ここにいる奴らの仲間は全員拘束した!人質も解放済みだ!ここはもう長くはもたない!全員外に向かって逃げろ!これ以上、理不尽な暴力にお前らの居場所を好きにさせるな!」
奴隷たち——いや、鉱夫たちに向けたメッセージだ。
「うおぉぉぉぉぉ!」
鉱夫たちが一斉に走り出した。
俺は先ほど膝をついていた男のところに駆け寄った。
「ありがとうございます.......。本当に助かりました。」
膝をついていた男は俺に言った。
田中——いや、名前はわからないが、この男はこれからもこの世界に居場所を持つべき人間だ。
俺は近くの鉱夫に声をかけた。
「この人を連れて脱出してくれ。外に出たら騎士団がいる。彼らに保護してもらって絶対に生き延びろ。」
「わかった。行くぞ!」
鉱夫の男は膝をついていた男に肩を貸すと、他の奴隷たちと一緒に外の世界に向かって走り出していった。
俺が周囲を見回してみると、数人の鉱夫が集まっている場所があった。
早く逃げないといけないのに、何をやっているんだ?
俺はその鉱夫たちの方に向かった。
——鉱夫たちの背中に隠れて見えなかったが、クロエが鉱夫たちの前で両手を広げて、震えながら立ちふさがっていた。
その背後には、先ほどまで鞭をふるっていた監視役の男の一人がぼろぼろの体で横たわっていた。
俺は察した。これはリンチだ。
人質が解放されて、監視役の男たちの形勢が不利になったのを見ると、集団脱走ついでに、自分を痛めつけた監視役の男にやり返しておこうという話だろう。
クロエはその前に立ちふさがって、それを止めようとしているのだ。
「お前ら!何やっているんだ!」
俺は叫んだ。
「ここはもう持たないと言っただろう!仕返しなんか考えている暇があったら、とっとと出ていけ!お前らが目を向けるべき相手は憎い奴より、解放された守りたい人たちのはずだ!」
そう叫ぶと、集まっていた鉱夫たちはしばらく顔を見合わせていたが、やがてそれまで纏っていた怨念を脱ぎ捨てて、他の鉱夫とともに出口に向かって歩いて行った。
鉱夫たちが立ち去ると、クロエはぺたんと座り込んだ。
俺はその横に立つと、クロエに声を掛けた。
「よくやった。がんばったな。クロエ。」
クロエは俺を見上げて、キラキラとしたまなざしを向けてきた。
本当に犬っぽい——。
その頭に手をのせると、一気に元気を取り戻したようにクロエは立ち上がった。
◇
鉱山の奴隷たちがいなくなり、後には動けなくなった監視役の男たちが残されていた。
この人たちも、ここに留まればいずれ崩落に巻き込まれて、死ぬ。
俺はクロエの方を振り返った。
クロエは監視役の男の命も守った。
ここで彼らを見捨てるのは俺の判断からしても正しくはなかった。
だが、今こいつらを野放しにすれば途中で鉱夫たちと遭遇する可能性がある。
彼らが接触すればどんなトラブルに発展するか分からない。
「エレナ。こいつら、鉱夫たちと引き離しながら外に出す方法ってないか?」
俺は言った。
監視役の男たちは、『助かる』と、希望の色が目に宿った。
「そうですねぇ........。」
エレナは歩きながら監視役の男たちを微笑んで、睨む。その威圧感は、効果抜群だ。
「では、全員片足を切り落として、お互い肩車をして歩いてもらうってのはどうでしょうか?」
エレナはこっちを向いて言う。
監視役の男たちが「ひぇぇ!」という風にのけぞる。
こっちまで背筋が凍りそうだった。もちろんエレナの演技なのはわかっていたが。
「それならこの魔道具がいいですわ。」
アリアが腕輪のようなものを出した。
「この魔道具はどれか一つでも距離が離れたら、炸裂します。足を失いたくなかったらみんなで仲良くゆっくりと出るようにしてくださいね。」
アリアが監視役の男たちの足首に魔道具を取り付けながら言う。
——俺は監視役の男たちのトラウマが少し心配になった。
◇
監視役の男たちが足並みをそろえて、ゆっくりと出口に向かって出て行ったところで、
「アリア。あんな魔道具、いつ用意したんだ?」
俺は聞いてみた。
案の定、アリアは口元に人差し指を立てて、いたずらっぽく微笑んでいた。
都合がよすぎる設定。やはりアリアの即興の方便か。
拘束具が必要になる状況を想定して用意していたものを応用したのだろう。
さて、残るは俺たちだけだが...............。
「レオン!こっち!まだこの坑道、奥があるよ!」
クロエが俺に言ってきた。
アリアたちが俺の方を見る。
「行こう。ここまで来たら、この坑道の全部を知り尽くす!」俺は歩き出した。
クロエたちも異論はなく、俺たちは坑道の最奥部に向かって行った。
第六話もお読みいただきありがとうございました。
主人公の言葉で”奴隷”が”鉱夫”となって、外に出ていったわけですが、やはり「監視役に一発やり返しておこう」と思う人もいるだろうなと思い、リンチに発展しかねない状況の描写を入れました。
また、監視役の男たちの救命について、ヒロイン三人に個別の役割を配置してみましたが......いかがでしたでしょうか?
作者の妄想では、この後トラウマを通り越した監視役の男たちの間でヒロインたちの人気投票が始まるという展開も考えましたが、さすがにふざけすぎているのでやめました。(笑)
さて、鉱山の最奥部に主人公たちが向かうのですが、そこには何が待っているのでしょうか。
第七話は2026年9月23日21時10分公開予定です。
※ 今回は夕方の投稿はお休みさせていただきます。(間隔調整です。ネタ切れではありません。)
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